閑話、モウスグ アイニ ユキマス




スティファニーです。

ある朝、ふと気づくと窓の外からの視線を感じたの・・・。

それは私の視力10.0以上でなければ見逃していた程度のものだった

かなり遠くからうつむいた長い黒髪の女性がこちらをジッと見ているような気がする。

寝ぼけまなこだったので目をこすってもう一度しっかり見ようとしたら、その女性は忽然こつぜんと居なくなっていた。

私も、その時はまだ然程気にしていなかった。




◆◆




その翌日の早朝、昨日の女性が同じ場所からこちらをジッと見ていた。

・・・昨日と同じようにほんの一瞬目をこすったら姿が消えていた。

見間違えたということもないはず・・・

ほんの少しだけ気味が悪いと思った。




◆◆◆




翌日、土砂降りの雨が降っているんだけど気になったので少し雨戸を開けたら…やはり昨日と同じ場所に例の女性が居た。

雨で体がビッショリ濡れているにも拘らずこちらを凝視したまま微動だにしていない。

心なしか昨日より距離が近くなっている気がする。

雨がまぶたに当たったのでビックリして瞬きをしたら女性は消えていた。

体に寒気が走ったのは雨のせいではなかったと思う。




◆◆◆◆




翌日・・・、外を見るのが少し怖い。

だが確認せずにいるのもまた怖い、窓からそっと覗くとやはり女性が居る。昨日よりも少し距離を詰めてきている。

長く黒い髪から僅かに覗く目が死んだ魚のように見えてゾッとした。

あまりの怖さに思わず目を瞑ってしまった。目を開けた時には、女性の姿はない。

窓を開けるのが怖くなってきた。




◆◆◆◆◆




翌日・・・もう恐くて外が見られない。

雨も降っていないのに雨戸を閉めて外を見ないようにした。外からも此方が見えないように。


「ティファ姉ちゃん、雨戸開けないの?…部屋が暗いよ?」

「う、うん何となく暗い感じがいいかなって・・・」

アル君は首を傾げつつもそれ以上何も言わなかった。


コン・・・コン・・・

ドアがノックされてビクンと体が跳ねる。


コンコン・・・

「スティファニー?居ないの?」

何だサーシャさんか・・・ほっと息をついて応対する。

この日は、何とか例の女性を見ずに過ごせた。




◆◆◆◆◆◆




翌日、快晴なのに雨戸は閉めっぱなしだった。開けようとしても体が拒否をする。


「ティファ姉ちゃん、今日も雨戸開けないの?」

「ごめんねアル君、ちょっと外を見たくないの」

アル君が心配そうに私を見ている。


コン・・・コン・・・

ビクッ!


今どっちから聞こえた?ちょっとボーっとしてたので音のした方向が分からなかった。

雨戸の方から聞こえたような気がしたけれど・・・


コンコン・・・

今度は意識していたのでちゃんとドアの方からノックの音が聞こえた。唾を飲み込んでドアを開けるとキャンディスだった。

ちょっとした世間話だった。

この日も、例の女性を見ずに済んだ。




◆◆◆◆◆◆◇




その晩、雨戸からカリッっという何かが引っ掻いたような音がした。

私の耳は、しっかりとその音を捉えていたが神経が過敏になりすぎているだけだ。あんな音は気のせいよ。


カリッ、カリッ


連続で音がした。目が冴えてしまった。雨戸を見たけれど特段変わった様子はない。

ゆっくり呼吸をして落ち着けばまた眠くなるはずだ。そうに決まってるんだもん!


カリッ、カリッ、カリッ


!?・・・やっぱり気のせいなんかじゃない!雨戸の外に何かが居る!でも確かめる勇気なんかない。

布団を頭からかぶって耳を塞ぐ、朝が来れば大丈夫、朝が来れば大丈夫、朝が来れば大丈夫。

余計なことを考えずに頭の中を空にする。


怖い怖い怖い、堪らずアル君のベッドに潜り込んだ。これなら少しは安心できる。


2時間ほど経っただろうか?トイレに行きたくなった。でも駄目だ。部屋のドアを開けるのすら恐い。

朝になるまで我慢するしかない。私は、尿意を必死に耐え続けた。




◆◆◆◆◆◆◆




翌朝、ようやく日が昇り始める時間になったけれど私の我慢は限界を迎えようとしていた。


ガリッ、ガリッ、ガリッ


もう引っ掻くどころか雨戸を削るような音になっていた。


ブチッ!っと堪忍袋がキレた

「ふざけやがって!ぶっ殺してやる!」


バーンと雨戸を殴ってブチ破る

「ご主人様!会い・・・「うるせーー!!!」 ぶがぁーー!」

得体のしれない女をブン殴ったらあっさりと気絶したのでさっさとトイレに行くことにした。


ああ!パンツとパジャマがぐっしょり濡れちゃってる!

…あ、汗だもん!すっごい寝汗だからセーフだもん!

体全体を浄化してから新しいパンツに替えて戦闘用の服に着替えたら迷惑女の所へ向かう。


女は、尻を突き出した体勢で気を失っている

「起きろやコルァ!お前のせいで漏…グッスリ寝れなかっただろが!」


尻を蹴飛ばしたらスカートが捲れて見覚えのあるパンツが・・・


これは!私の作ったスパイダーパン!


よく見たらこの女、アラクネだ。人化しているけど間違いない!


そういえば…数年前のあの時、何でパンツが脱げたの?

ちょっとやそっとじゃ解けない縛りになっていたしスパイダーパンは頑丈だった。

ひょっとしてコイツがパンツの紐に糸をつけていたから解けたの・・・?

ムキー!ますます許せん!


女…アラクネが目を覚ました。

「ご主人様、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」


怖ッ!っていうかご主人様って何?


うーん、ん?そういえばあの時・・・

『鉄拳制裁!調教ぱーんち!』


とかやってたね・・・もしかしてホントに調教しちゃってた?

私から離れたくなくて糸を付けてたのかな?迷惑極まりないけど!


とりあえずテイム状態を解除して西の森へクーリングオフだよ!

仲間キャラとして置いとくのはセリフ考えなくちゃいけないからめんどくさいんだよ!


「はいはいはい、分かったから。解放してあげるから二度とこっちに来ないでね。〈解放リリース〉&〈転送〉トランスファー

ふぅ・・・一週間以上も酷い目に遭ったよ。

さーて部屋に戻ろっと


部屋に戻るとアル君がベッドの前でオロオロしていた。


「アル君、どうしたの?」

「こ、これは違うんだ、ティファ姉ちゃん!パジャマが濡れてないのに布団が濡れてるんだ」

「ね、寝汗よ。多分すっごい寝汗だから変な風に濡れたのよ…はい〈浄化〉ピュリファイケーションこれで問題なしよ!」


何だか釈然としない感じでアル君は、首をひねっている。


「細かい事を気にしてたら人生損よ、ほら朝ご飯食べよ?」

「う、うん・・・」



紐パンが脱げた原因が判明したので再び穿けるようになりました。

外出時は、まだ無理だけどね。

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