2.迷子の迷子の・・・

スティファニーです。

先日、分かったのですが私はエルフのお姫様だったらしいです。


里長のお爺ちゃんが偉いって事ぐらいは分かっていたつもりだけど、せいぜい村長の孫娘レベルの立ち位置だと思ってました。

お屋敷はすごく豪華だったし、私に対して周りの大人達が異常なまでに腰が低いなーとは思っていたのだけれど・・・

お姫様ねえ・・・実感がないよ


里長=王様だったのね。代替わりしてあの人が、就任したんだろう。

追放した張本人のお爺ちゃんが私の捜索をするわけがないからね。


あの後、ギルド長が妙にヘコヘコとした態度で接してきたけど気持ち悪いから、いつも通りでお願いしますと言っておいた。




6月も下旬になり、いつものように喧騒に満ちた早朝の冒険者ギルドに珍客が来た。


『すみません!俺の言葉分かりませんか?誰でもいいんです!言葉の分かる人を!』

「ごめん、何言ってるか全然分かんない。」


エミリー先輩が、全然申し訳なくなさそうな表情で受付に現れた少年に言った。



『くそ!誰も俺の言葉が分かる人は、いないのか!?せっかく異世界に来たっていうのに!ここでも勉強しなくちゃいけないのか!!』

「よく分からないけど、うるさいからあっち行って。」


淡々と答えてゼスチャーで待合い席の方を指して少年を追っ払う。

相変わらずマイペースだなーエミリー先輩は、だがそれがいい。



私はというと、少年の言葉が分かっている・・・っていうか日本語なんだよね。

黒髪・黒目、どこにでも居そうな日本人の少年でおそらく中学生だろう。


どうしよう、ものすごくフラグというか罠の臭いがする。

・・・ごめん、ウソ。単に絡むのが面倒くさいだけ。



ちょっとした後ろめたさに視線を向けたら少年と目がバッチリ合ってしまった。


パァっと笑顔を向けて私の方に駆け寄ってくる。

間の悪いことに、窓口に並んでいる人が誰もいない。


『綺麗なお姉さん!俺の言葉が分かりますか?』

「・・・。(フルフル)」

とりあえず、ニホンゴ、ワカリマセーンって感じで肩をすくめて首を横に振っておく。


『ちぇッ、ダメか。アホ毛があるし、天然っぽいから頭悪そうだし、全部オッパイに栄養が行ってんだろな。』


ガッ!


『・・・おい糞ガキ、今なんて言ったのかしら?』

ガッシリ捕まえた少年の頭にアイアンクローをかける。


ミシミシミシミシ・・・


『い゛だだだだ!言葉、分かってるじゃないか!』

「・・・あっ、やっちゃった。」




◆◇◆◇




『お姉さんは、日本語が分かるってことは転生した系?』

『会ったばかりの人には、言えません。黙秘します。』「二重魔法ダブルマジック〈永久・翻訳〉エターナルトランスレート


「な、何を?」

「大サービスで翻訳の魔法を使ったから、言葉が通じるようになったはずよ。」

いちいちかけ直すのが面倒なので『永久』をつけといた。


「本当だ!周りの人の言ってることが分かる!ありがとな!」

「・・・いつまでも居座られたら迷惑だしね。」


「ここ、冒険者ギルドだろ?俺、冒険者になりたいんだ!登録してくれよ!」


普通のYシャツにズボン、現代人らしいひょろっとした体に日焼けしていない肌、魔力も感じない・・・ダメダメだね。


「ハッキリ言って、おすすめできないわ。」

「何でさ!」


「意地悪で言ってるんじゃないの、周りを見て」

「・・・見たけど?」


「見ても分かってないでしょ?武器がない、防具がない、知識も経験もない、そもそも体が出来上がってない。」

「そ、そんなのチートを使えばどうにだって・・・」


「あるの?チートなずるい力が?」

「これから目覚める予定だし!」


「それじゃ話にならないわね。」

「いいから登録してくれよ!登録はできるんだろ?」


「できるわ。仕方ないから登録するけど、くれぐれも無茶はしないようにね?」

「へっ!すぐに強くなってお姉さんを惚れさせてやるぜ!」

「そういうのが駄目だって言ってるのに・・・」



「俺は、日本から来た知麻夜 杉流ちまよい すぎるだ、スギルって呼んでくれ。お姉さんの名前は?」


やだ、フラグビンビンの名前じゃないですか。


「名乗られたからには返すけど、エルフのスティファニーよ。」

「スティファニーか…いい名前だ!それにしても、エルフなのに耳が短かいな…尖がってるけど。」


「因みに私は、人間では10歳相当で未成年だから手を出しちゃダメよ。」

「スティファニーの方から付き合っ欲しいって言わせてやるよ!」


無い無い…私は、成人する47年後まで絶対に誰ともお付き合いする気はない。


「忠告は、したからね。」



「あ、そうだ!ステータスオープン!」

何・・・ですって!?


「ま、まさか貴方、ステータスが・・・見れるの?」


スギルは、口角を上げて不敵な笑みで私を見つめ返してきた。


「ふっ、何も起きなかった・・・。使えないのは、言葉の問題じゃなかったな。」


何もないんかーい!自信満々声高らかに言うからもしかしてって思っちゃったじゃない!


「なーにが〈ステータスオープン〉よ、本当に使えると思ってビックリしたじゃな…!?」

「どうした?」

「気にしないで、何でもないから。」


ステータスみれたぁ!


===================

〈名前〉スティファニー・オルティス

〈種族〉パイエルフ(女):103歳

  Lv :Error

  HP :∞

  MP :∞

  攻撃力:∞

  防御力:∞

  魔力 :∞

===================


ファミリーネームが『オルティス』だって初めて知ったし、ちょっとカッコいい

種族が『ハイエルフ』になってるし他の数値もおかしいし


・・・あれ?

ゴミでもついてるのかな? 『ハイエルフ』に『 ゜』が付いて『パイエルフ』なってる。

よっこい『ハ。イエルフ』・・・ぐぐっと『 ゜』を指でつまんで引っ張る・・・硬い、あ!


びょーんって『パイエルフ』に戻っちゃった・・・何なの?『パイエルフ』って!?

ダジャレなの?ダジャレだよね?


仕事中だし後で考えよう・・・




◆◇◆◇




スギルに申込用紙を記入させる。

魔法が使えないから魔力測定はパスだと伝えたのだけれど

ゴネたので仕方なく測定したら、私以来の測定不能(但し、ゼロ)をたたき出した。


戦闘力測定も万年Fランク【最弱】のザッコスさんに軽くあしらわれる弱さを見せる。



そんな有様でも登録が終わると意気揚々とスギルは、採取の依頼を受けて出て行った。

私以上に酷いラノベ脳のようだから何かしでかさないか心配だわ。


すごく面倒だけど孤児院でお昼ご飯を食べた後に様子でも見に行ってあげよう。





駆け出し冒険者が薬草などを採取する森から少し奥に行った場所でスギルを発見した。

単体のゴブリン(単体行動は珍しい)に襲われていたので〈ダイヤモンドピック〉で殲滅する。


「女の子に助けられるって・・・普通は、逆じゃない?」

「うる…さい…、これは強くなるための負けイベなんだ・・・!」


呆れた。かなりの重傷なのに全く懲りていない。

左腕は噛み千切られてるし、右目は潰れて失明してるし何カ所も骨折してるのにどこからそんな自信が出てくるのやら。


本当に仕方がないので魔法で回復してあげよう。



「すげぇ!腕が生えたし目も見える!どこも痛くないぜ!」

「言っておくけど救助と治療が間に合わなければ死んでたし、欠損を魔法で治せるのは私だけよ。」


ケイレブさんの時には、完全にスルーされていたけど周辺国含めて魔法で欠損を回復させた例はない。

去年、王都から来たとかいう何かエラーイ治療師だか大司教的な人が言ってたよ。

よく分からないけど鼻水垂らして悔しがってた。



「この世界は、エリクサーとか無いのか?」

「あるけど希少すぎて高いし、一般に出回らないから実質無いのと一緒よ。」


「だから・・・」

ガッ!とスギルの頭に拳骨を落とし、足を払って強制的に正座をさせる。


「いてぇ!何すんだ!」

立って抗議しようとする生意気な小僧の膝を踏みつけて押さえこむ。



「お説教の時間だよ・・・」


無謀な行動について懇々こんこんと説教をしたのだけれど中二ボーイの心には響かなかった。

私の顔に迫力が無いのがいけないのかな?



「なあスティファニー魔法教えてくれよ、俺も使いたいんだ!」

「魔力測定の結果をもう忘れたのかな?」


「最初が0なら最強になれるはずだ、ゼロから始める異世界 (ゴニョゴニョ)」

「そんなご都合主義めったにないわよ?」


「魔力を感じることさえできれば覚醒するはずだ!」

「やって欲しいってこと?・・・やれやれ、だわ。」


大大サービスでスギルの体に魔力を流し込む、循環させる元がないから私の魔力で代用した。


「かなり魔力を流したけど、どう?何か感じた?」

「・・・・・・。」


駄目だったみたい。当然だけど。



「…しに・・・」

「え?」


「弟子にして下さい!」

「・・・普通に嫌だけど?面倒くさいし。」


「何でですか!?」

「だって伸びしろが無いじゃない。石ころにいくら水をあげても芽が出ないのと一緒だし。」


「お願いします。何でもしますから!!」

「嫌だってば、それに男から言われると全く嬉しくないセリフだね。」


女の子から言われたいセリフNo1(自分調べ)なのにね。


「そ、そんな!」

「じゃ、私は街に帰るね。」

同郷のよしみとは言えこれ以上は、つき合ってられない。


私は、スギルを放置してその場を去った。

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