これからの戦い 3
マスターRの話はまだ終わらない。
「続けて、現在の邪悪な魂の内情について報告します。資料6。邪悪な魂の
彼女がそこまで言ったところで、マスターFが合いの手を入れる。
「つまり、今なら表に出ても構わないと判断したということか」
「彼の真意は不明ですが、自らの存在をアピールする狙いがあったことは間違いありません。ジノ・ラスカスガベ――彼の暗殺計画も真剣に検討する必要があるでしょう」
裏社会で顔が知られることは致命的である。それでも表に出てくる者は、かなりの自信家か、身の安全の保証があるかのどちらかだ。
若さゆえの暴走かもしれないが、そんなマヌケが生き残れる世界ではない。
マスターRは次の資料を手に取る。
「ジノの下にいる幹部についても説明します。資料7をご覧ください。
A・ファーレンハイトはマスターRの話を聞きながら、資料の写真を見て驚いた。
彼女はジノとロト、ドラム以外の三人とは会ったことがあるのだ。
ダイスは言うまでもなく、ルーレットはB国の邪悪な魂の拠点でマクガフィンとともにいた女性、カルタはJ国のカジノで巨大な犬を連れて現れた女性だ。
ジノの配下は世界各地で彼の手足として暗躍している。邪悪な魂と関連している場所には幹部級の人物の一人や二人派遣されていて当然だから、そこは驚くようなことではない。問題は三人ともNAの技術を一部ではあるが手にしていることだ。
他の幹部も何かしらNAの技術を持っているのではないかと、ファーレンハイトは戦慄した。
マスターRの報告は最後の締めに入る。
「邪悪な魂は血と涙を失った代わりに政治力を得ました。これは最初から計算どおりだったのかもしれません。邪悪な魂は依然として十分な戦力を備えていますが、明らかに総戦力は落ちており、それを補うために……敢えて言いましょう、政治に逃げたのです。私たちは苦しい状況に変わりありませんが、絶望的と言うほどではありません。粘り強く戦っていきましょう。私からは以上です」
彼女は勇ましい言葉で力強く言い切った。
実際にはそこまで前向きになれるような状況ではないのだが、ここでつまらないことを言って勢いに水を差す者はいなかった。
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