七日間のラズベリー

作者 矢向 亜紀

65

25人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

 思春期に経験する一定期間の入れ替わりをめぐるお話です。
 主人公のめげない明るさと苦手な人に対しても真摯に向き合う姿がとても素敵で、読み進めていくうちに過去と向き合う彼女を応援していました。

 作品を通して、眩しい朝の光のような柔らかさと温かさが詰まっていて、読後は甘酸っぱさと爽やかさが広がりました。
 入れ替わりを主題としつつ、その中で人物たちの思いと関係性が鮮やかに浮かび上がり、一緒に通学したいなーと思いながら読んでおりました。素敵な作品をありがとうございました!

★★★ Excellent!!!

いいお話でした。
以前、自主企画にて一話だけ拝読してから、ずっと通読するのを楽しみにしていたお話です。

一週間だけ、見知らぬ他人と中身が入れ替わってしまう不思議な現象『ラズベリー』が起こるのが当たり前な、どこかの世界線であり得たかもしれない現代での7日間。
主人公の少女は御曹司の美青年と『ラズベリー』します。進行は少女の一人称視点固定で進むので、青年の肉体で生活をしていても展開が散らかる事はありません。中盤まで、住み込みで青年の世話をする、青年と同年代の使用人(なにやら訳ありのこちらも美青年!)や、クラスメイト、青年が所属している弓道部の女生徒から聞く、御曹司の普段の振る舞いや印象を断片的に組み合わせ、『青年の肉体を借りた少女が、その青年の人物像を構築していく』のを読者も追体験できて非常に楽しかった。
中身は少女なのに、実父と会う折には足が重く感じられたりと、青年の肉体の記憶とも言うべき介入があったのも印象的です。

後半で明かされる使用人の過去には仰天しましたが、だからこそ、ラストシーンで訪れた『ラズベリー』に胸が温かくなりました。
作中に繰り返し出てくる月のイメージを始めとして、紅葉の様子、繊細な人物の表情の描写など、全体のお話の淀みない流れもさることながら、一文ずつ取り出して見ても整った作品です。
大事に楽しみにとっておいて、味わいながら読めた喜びに浸っています。ありがとうございました。