第61話:ポルトガル離島巡り3
次は、ラボ・デ・ペイシェ村にある農業協同組合のレストランへ、ここは、
サン・ミゲル島内のみならず、ポルトガル全国的にその名声を博している。
ステーキは色々な種類のソースがあり、それぞれ大きさと部位が3種類ずつ
ある。私は最もシンプルかつアソーレスらしいレジオナル・ステーキ小を
テンダーロインのミディアムで注文した。地元ステーキとはピメントの塩漬け
とニンニクがのっているもので、ソースもピメントのペーストと白ワインが
使われる。
肉の旨さもさることながら、ソースの浸みたフライドポテトが激ウマで、
芋の種類が違うのか中がとろけるようにクリーミィで、完食した。デザートは
お茶のプリン。日本の抹茶プリンを彷彿とさせるこのデザート、リスボンでは
アソーレスレストランにもあるかどうか微妙なので、ヨーロッパ唯一の茶畑
のあるサン・ミゲル島に来たらダイエットを中断しても是非味わいたい。
3日目と4日目に泊まった貸別荘は、この山の手地区にある。昔はオレンジ
が名産だったが、病気で全滅し、新たな商品作物としてパイナップルが作られる
ようになった。私が借りた家は蜜柑荘・キンタ・ダス・タンジェリーナスといい
、生垣に囲まれた小さな果樹園の中に造られた築6年の一戸建てである。車が
やっと通れる細い道の奥にあり、付近にはスーパーも飲食店も何もないので、
外食するにも買い出しするにも漁師町の方に降りて行かなくてはならない。
幹線道路を西に向かって数分歩くと、テラス席のあるカフェが現れる。
ヨーロッパ最貧の村で生まれたチョコレート専門店「ショコラティーニョ 」
である。ベルギーで修行した若者が、アソーレス産の材料を使ったユニークな
チョコを製造販売し、チョコの他にケーキやサンドイッチなどの軽食も出す。
ちょっとコーヒーを飲むために立ち寄ったのだが、チョコラティーニョの
チョコレートは、アソーレス産のミルクがフルーツやカカオの刺激をまろやかに
中和する。はっきり言ってヘーゼルナッツのプラリネばかり使ったゴディバよりも
、ポルトのアルカディアよりもずっと美味しい。
運転手さんが12時にロビーに迎えに来て、村のレストランで私を下ろし、
食事が終わる頃に再びやって来て宿まで送ってくれた。
「ボテキン・アソレアーノ」は魚がメインの、おそらく村の誰もが推奨する店だ。
まず島に来たら自分のお約束のカサガイを注文する。残念ながらアソーレス産
ではなく、マデイラ産だが若干安いという事だ。アソーレスのカサガイは採る
時期が決まっていて、冬は流通しないそうだ。魚はペイシャン・大魚という
名前の小さめの鯛のような魚であっさりした淡白な味だ。デザートはクルミの
タルト。私はクルミが大好きなのだが、ポルトガルのクルミ系菓子には失望する
ことが多かった。しかしこの店のはザクザクとクルミが使われていて食感と
香ばしさが素晴らしい。カサガイや魚よりもクルミタルトの方が印象に残った。
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