298 緊急事態

 さて、と。


 これでBPは全て使い切ったワケだ。また魔獣を狩るなどして稼がないと駄目かぁ。まぁ、それも当初の予定通りか。


 と、そこで視界が揺れていることに気付く。


 ん?


 あれ?


 もしかして蛸の毒がまわってきた?


 いや、違う……これは、一気に能力を覚醒させたことが……原因か。俺もある程度は……慣れてきたと思ったのに……まだ、まだ……だな。


 そのまま倒れ込む。


 そして、俺は気を失った。


 ……。


 ……。

 ……。


 目覚めると、そこは自室のベッドの上だった。硬いベッドで眠っていたからか体が痛い。多分、誰かが運んでくれたのだろうけど、もう少し気を使って欲しいなぁ。


 たくっ、にしても、だ。この無理矢理体を作り替えたことによる弊害だけは困ったものだな。魔獣との戦いの最中に行っていたら洒落にならなかったな。まぁ、タブレットを使って、無理矢理スキルや魔法を覚えているから、仕方ないのかもなぁ。本来はどうやって魔法やスキルを覚えているんだろう?


 と、とりあえずタブレットを見てステータスを確認するか。



 レベル59

 称号:笑顔の伝道師・農家・神帝・エレメント火・ボアキラー・ノービス・ごっこ勇者

 クラス:猫耳

 サブクラス:神帝

 BP0

 スキル:共通語3

     共通語書読1

     魔人語3

     辺境語0

     獣人語0

     音感0

     察知1

     料理1

     農耕1

     剣技0

     槍技2

     ・二段突き2

     ・旋風槍0

     斧技0

     盾技0

     火耐性3

     水流操作3

     水中呼吸3

     魔力操作5

     魔力変換5

 魔法:草4

    ・サモンヴァイン4

     ・エルサモンヴァイン1

    ・グロウ4

     ・エルグロウ1

    ・シード4

     ・エルグロウシード1

    ・ロゼット2

    時☆

    ・タイム☆

    ・ストップ1

    ・ヴィジョン2

    ・リターン4

     ・エルリターン3

    火燐1

    ・スパーク1

    水流3

    ・ウォーターバレット3

    ・ウォーターウォール2

    ・ウォータークォリティ2


 時魔法なぁ。

 5で打ち止めだとは思わなかったからなぁ。どうせさ、最初にカンストさせるなら草属性にしたかったよな。俺が初めて覚えた魔法だしさ、一番活用している魔法だからなぁ。

 草属性が5というか星マークか、それになった時に何を覚えるかも気になるしさ。


 って、ん?


 魔法は5で星マークになって打ち止めなんだよな?


 スキルの方は普通に数字の5が表示されているな。魔力操作と魔力変換は5だもんな。これ、ちょっと前にはなっていたよな? いやまぁ、だから、魔法も5以上に上がると勘違いしたワケだし……。


 スキルの方は5以上に上がる。魔法は5で打ち止め、という感じかな。まぁ、わざわざスキルと魔法に別れているくらいだから上限も違うのだろう。


 スキルの方の上限がどうなっているかも気になるから、これも適当なのを上げて行きたいな。


 となると、やはり魔獣狩りか。ホント、強くなるために魔獣を狩り続けないと駄目だというのだから、歪んだ世界だよな。


 しかも、だ。俺は魔獣を狩って魔素を得ている。だけどさ、これ、人を殺しても得ることが出来るだろう? んで、多分、魔獣を狩るよりも人を殺した方が効率が良いよな? こんな世界だとさ、至る所で戦争が起きてそうだけど、俺がはじまりの町に居た時は、結構、平和そうだったよな?


 ……。


 あー、でも、オークに襲撃されるなんてこともあったか。


 ……。


 あ、そうなのか。


 四種族と敵対しているから、戦争どころじゃあないのか。倒すなら、魔素を得るなら魔獣や四種族を殺して、となるのか。大陸の種族同士で殺し合うのは揉め事や謀殺、暗殺とか、そういう時くらいなのかもしれないなぁ。


 四種族が抑止力になっているとか。


 皮肉というか何というか。


 まぁ、魔素は世界に満ちた元素だから、木を切るだけでも、草を摘むだけでも、食事するだけでも、水を飲むだけでも、それこそ、呼吸をするだけでも得られるワケだけどさ。効率が馬鹿みたいに悪いだけでさ。


 本当は殺し合う必要なんてないんだろうな。


 ……。


 まぁ、とにかく狩りに行こう。


 俺は城内に作られた自分の部屋を出る。


「ひひひ、帝よ、お待ちしていましたよ」

 そこでは蟲人のウェイが俺を待っていた。

「あー、えーっと、ご迷惑をおかけしました。ちなみに自分はどれくらい気を失っていましたか?」

「ひっひひひ、帝が眠っていたのは二日ほどだよ」

 意外と眠っていたなぁ。


 それで、だ。


 ウェイが俺が起きるのを待っていたのは、それだけの理由があるはずだ。


「えーっと、自分が眠っている間に何かありましたか?」

「ひひひ、空断が戻ってこないのさ。それを聞いて赤毛が先走ったのよ」

 ん?


 戻ってこない?


 空断って魔人族のプロキオンのことだよな?


 えーっと、俺がゴーレムの魔石を壊したと思って、新しい魔石を探しに行ったんだよな? それが戻ってこない?


 んで、赤髪のアダーラが向かった?


 何処に?


 何が起こっているんだ?

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