297 時を超え

 さて、次はどうするか、だよな。


 次の行動予定について、たこ焼きを食べながら考える。


 そう、たこ焼きだッ!


 たこ焼きだぞ。


 猫人の料理人さんに作れるか試しに聞いてみたら本当に作ってくれた、そんなたこ焼きだぞ! いや、この料理人さん、本当に万能だよな。


 だって、たこ焼きだぞ!


 ……。


 ……にしても猫人の料理人さんの世界にもたこ焼きがあったとか、もしかして俺が居た世界と似たような世界なのかなぁ。


 蛸のような魔獣、小麦粉、醤油の代わりとしての魚醤、と頑張れば作れそうな材料は揃っていた。でもさ、卵とか天かすとか削り節とか青のりとか、色々と欲しいもの、足りないものがあった中でさ、その色々と足りない中でたこ焼きだと分かる再現度で作ってくれた料理人さんは凄いと思うぜ。凄いとしか言えないな。


「この魔獣の肉には毒があるようですから、毒に弱い人は注意してください」

 特注の鉄板でたこ焼きを作っていた猫人の料理人さんが突然、そんなことを口にする。


 って、毒!? 思わず食べていたたこ焼きを吐き出すところだったぞ。


 いや、でも、まぁ、毒に弱い人は注意って言うくらいだから、そこまで強い毒ではないのだろう。


 ……。


 ……毒に強いとか弱いとかって話が出ること自体がさ、そこが、まず異世界だよなぁ。


「母様、あの丸穴付きの鉄板を作ったのはわらわなのじゃ」

 機人の女王が俺の横で自己主張するようにぴょんぴょんと飛び跳ねている。あー、これ、褒めて欲しいのかな。

「凄いぞ! 偉いぞ! おかげで、美味しいたこ焼きが食べられるよ」

 俺は機人の女王の頭をよしよしっと撫でる。機人の女王の表情は変わらないが、なんとなく嬉しそうだ。


 たこ焼きか。


 まぁ、でもさ、たこ焼きは自分で作りたかったなぁ。


 ……。


 んで、だ。


 話を戻そう。


 次に何をやるか。


 だよなぁ。


 魔力の総量を増やす。まぁ、いわゆるレベル上げだな。それと魔石を取り込んで力を得る。ただ、これはやり過ぎると副作用が出そうな気がして怖いから、ゆっくりと体を慣らしながら、だな。後はBPでスキルや魔法の獲得だろうか。補助輪の役割のBPを使わずに力を手にすることが出来るようになれば、それが一番なんだろうけど、今はまだ、出来ないワケだし、その力の恩恵を受けられるだけ受けよう。


 後は魔力を何処かに貯めておけるように出来ないか、だな。


 自分の魔力総量を増やせば、それで良いような気もするけどさ、ただ、それだと不味いことが起きそうな気がするんだよな。

 その不安を引き起こしている理由というのが時属性の魔法[タイム]で過去に戻った時にレベルが下がったことだな。レベルが下がる。つまり、魔力の総量が減ったということだ。ゲーム風に言えばMPやHPの最大値が減ったようなものか。


 これ、どういう法則で減っているのか分からないから、保険のために魔力を保存しておきたいんだよな。一応、秒で一桁レベル、時間で十レベル程度の減少って感じのようだけど、毎回毎回、必ずしもそうだとは限らないし、この世界のレベルってゲームと同じように高くなれば高くなるだけ、上がるのが難しくなるんだよな。それなのに、一律十レベル消費されるって感じだと損するばかりじゃあないか。


 ということで、魔力貯金が出来ると良いんだけどなぁ。総量の一割を常に貯金するとかして、緊急時に備えるとかさ。


 んで、その魔力を貯金したいと思った、もう一つの理由が……いや、それは、これを試してからだな。


 残りのBPは4。


 よし、時属性を上げよう。


 4から5に……って、あれ?


 5ではなく星マークに変わった。


 も、も、もしかして。


 これ以上は上げられないのか?


 時魔法を上げようとしても、星マークを変えることは出来なかった。


 うーむ。5で終わりなのか。


 んで、増えた魔法は、と。


 オーバードライブ、か。


 うーん、なんとなーく、碌なことにならなさそうな魔法だ。


 過去に戻る魔法、時を止める魔法、未来を見る魔法、時空を越える魔法、と来て最後がオーバードライブ。


 これさ、予想だけど、時を加速させる魔法なんじゃあないだろうか。習得して使ってみないと断定は出来ないけどさ、きっとそうなんだろうなぁ。


 まぁ、そっちは後回しだ。


 残りBPは3。


 俺が上げたかったのはタイムの魔法だ。


 ある程度、予想は出来るけどさ、でも、まずはこれを上げたかった。


 タイムの魔法を2から3に上げる。魔法能力の拡張に伴い、体が造り替えられたからか頭がズキリと痛む。


 んでは、使ってみますか。


――[タイム]――


 タブレットに時刻が表示される。


 そして、今まで表示されていた時間の上に0Dという文字が追加されていた。あー、うん、予想通りだな。Dって、きっとDayのことだよなぁ。このタブレットは俺に分かる言葉で表示されるようだから、これも俺の元いた世界を基準として表示されているんだろうな。


 さあ、次だ。


 タイムの魔法を3から4に上げる。ズキズキと頭が痛むが我慢する。


 んでは、使ってみますか。


――[タイム]――


 タブレットに時刻が表示される。


 今度は0Mか。これはMonthだろうなぁ。異世界で月表記って面白いけど、まぁ、そういうことだろう。


 となると、5レベルは間違いなくアレだろうな。5が最高レベルなのも納得だな。


 よし。


 タイムの魔法を4から5に上げる。5というか星マークか。ほとばしる頭痛は歯を食いしばって我慢する。


 んで、だ。


――[タイム]――


 タブレットに時刻が表示される。


 表示されているのは1000Y0M0Dという文字だ。


 Yearか。これさ、一年単位で時を遡れるようになったってことだよな? でもさ、一年前には俺はこの世界に居なかったワケで、これを使ったらどうなるんだ? 俺が消えるのか? 使った瞬間、過去に戻って元の世界に戻る……なんてことはないだろうなぁ。


 それに、この魔法を使うのにどれだけの魔力が必要かも想像出来ないし、ま、まぁ、いずれ使えるようになるだろうって感じか。


 予想通りだったけど、予想通りであって欲しくなかったなぁ。こんなの使いこなせる気がしない。

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