296 優秀な力
何処か分からない場所に閉じ込められた?
いや、部屋が広いだけで別に閉じ込められたワケじゃあないだろう。それに床とか壁の作りから、神域であることは分かっているし……。
うーん、玉座の間とよく似ている感じだけど、ホント、何処だ?
端が見えないほど広いって異常だよな。あの機人の女王が居た、偽物の自然があった部屋と同じようにかなり広いようだが、あっちは自然が消えてワイヤーフレームのような感じに変わっているはずだからなぁ。違う場所だろう。
こんな……っと。
お?
最初から見えていた壁沿いにしばらく歩くと普通に壁が見えてきた。ここが部屋の隅ってことか。端が見えないって異常だーって思ったけどさ、そこまで異常な広さではなさそうだ。部屋の一辺が数キロ……十キロメートルはないくらいじゃあないだろうか。まぁ、それでも充分過ぎるくらいに広いんだけどさ。
よし、このままぐるーっと一周してみるか。
そして、さらにしばらく歩き続けると、普通に階段があった。壁がくり抜かれ、上への階段が作られている。思ったよりも楽勝だった。
さてさて、この階段は何処に繋がっているのやら。
階段を上がる。
食料や水を持っていなかったからな。危機的状況になる前に変化があって良かった。
階段を上った先――そこには見覚えのあるものがあった。
玉座。
へ?
見覚えしかない。
えーっと、玉座の間にあった、玉座だよな。
その玉座の先には俺がリターンの魔法で開けた輪っかも見えている。
あれー?
あれれー?
玉座の裏に、あんなだだっ広い部屋に通じているような階段なんて無かったよな? 隠し通路だったのか? 階段は動かせそうにないから、玉座が動いたのか?
よく見れば、玉座がある辺りに何かが動いたかのような線の跡が残っている。
なるほどなー。
って、何故、いつ!?
俺がエルリターンを覚えたから、玉座が動いたのか?
時魔法は玉座の上にあった魔石を吸収したことで覚えた魔法だ。何か関係があるのかもしれない。
って、リターンの輪っか!
よく考えたらリターンの魔法を使えば一瞬で玉座に戻れたよな? 赤髪のアダーラと天人族さんを待たせているんだから、探索は後回しにしてリターンで戻った方が良かったんじゃないか!
神域でもリターンは使えるんだから、それが正解だったよな。
……。
ま、まぁ過ぎたことを考えても仕方ない。
とりあえず二人と一匹のところに戻ろう。いやぁ、向こうでリターンの魔法を使っていて良かったな。不幸中の幸いというか……。
俺はリターンの輪っかをくぐり、湖の前に戻る。
「姉さま! 何処に行かれていたのです」
「まーう」
赤髪のアダーラと天人族さん、それとオマケの羽猫が俺を待ってくれていたようだ。
「あ、えーっと、少し必要なことがありまして……っと、とりあえず、今から神域へのゲートを開くので、ボアの死骸などを突っ込んでください」
「はい?」
「まう?」
赤髪のアダーラと羽猫が首を傾げている。
――[エルリターン]――
ボアの死骸が入るほど大きく輪っかを広げる。
「姉さま! これですね!」
赤髪のアダーラがボアや蛸の死骸を輪っかの中に突っ込んでいく。
「はい。えーっと、その後は皆も入ってください」
獲物を突っ込み終えた赤髪のアダーラが頷き、羽猫とともに輪っかに消える。天人族さんも輪っかをくぐる。
うーん、輪っかは消えないな。
だが、輪っかを維持するための魔力が消費されている感じがしないから、これ、開き続けることは出来ないんだろうな。時間経過で消えそう。
獲物と皆が輪っかを通ったことを確認し、俺も輪っかに入る。抜けた先は先ほどと同じ玉座の間の地下室だ。
俺がくぐり抜けた瞬間、輪っかが消える。なるほどな。時間経過か、俺の通過で輪っかは消える、と。
「ここで待っていてください」
さて、と。
――[リターン]――
リターンの魔法を使い、玉座の間までの直通の通路を作る。で、その輪っかを抜け、玉座の間に。そこから、さらに拠点行きの輪っかに入る。
一瞬で拠点に帰還だな。
さあて、後は簡単だ。
――[エルリターン]――
こちらから輪っかを作る。
さあ、これでどうだ。
……。
……。
……。
何も起こらないな。
って、もしかして、向こうで律儀に待っているのか。
俺は頭を突っ込む。この程度では輪っかは消えないようだ。
「あ、えーっと、獲物を最初に突っ込んで、それからくぐり抜けてください」
向こう側に指示を出し、輪っかから顔を引っこ抜く。これさ、半分入っている状態とかで輪っかが消えたらどうなるんだろうなぁ。ちょっと洒落にならないことが起こりそうな……。
そんなことを考えている間にも輪っかからボアの死骸が飛んでくる。アダーラが勢いよく投げ込んでいるのだろう。
よし、こんな利用方法も中継させれば可能だな。
リターンにエルリターンか。運用方法は違うけど、これ、上手く使えばかなり便利なことが出来そうだな。
時魔法は優秀だなぁ。
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