247 矢と羽根
昼食の後、パンが出てきた。ふんわりふかふか、あまあまなパンだ。
……って、なんで甘いんだよ!
ここにはサトウキビなんてないだろ? 小麦だけでふかふかなパンを作ったのもそうだけど、どうやって甘みを出しているんだ? 謎だ、謎すぎる。魔法みたいな力を使っているのだろうか。
……ま、まぁ、料理が美味しいのは良いことだな。原理が分からないから、それで良しとしよう。
次は槍の訓練か。槍の訓練といっても魔素操作の訓練みたいなものだからなぁ。ああ、そうだ。ゴーレム用の――ゴーレムという名前のパワードスーツ用の矢が必要だから、それを作るのも悪くないな。それも魔力の訓練になるよな。
「さあ、姉さま! 今日こそ、全てを貫きましょう!」
赤髪のアダーラは食事を終えてやる気充分だ。
あー、ゴーレム用の矢を作るなら、大きな矢になるだろうし、あえて全て金属で作ってみるというのも面白いかもしれないなぁ。そうなると銅より上の金属が扱えるようにならないと……そのためには魔力操作の熟練が必要になるし――って、結局、魔力か。
魔力も自分が持っている属性、草や火燐、時なんかは扱いやすいんだけどなぁ。魔素から創り変える時もそれらの属性だと簡単なんだけど、他の属性……それ以外の属性が関わっているものに変換しようとすると一気に難易度が上がるんだよなぁ。魔力もガンガン消費するしさ。これが相性ってヤツなんだろうな。
んで、槍か。
分かっているけど難しいな。
人を形作っている魔素に干渉して必殺の一撃をたたき込む。言っていることは分かるよ。分かるんだよ。
だけどさ、魔力を持っている相手だと、それに反発されて相手の魔素に干渉なんて出来ないんだよなぁ。
まぁ、だから、魔法も、火の玉を飛ばすとか、直接干渉出来ないから、一度変換してからぶつけるとかになるんだろうな。
ん?
でも、俺の草魔法って相手の体に直接発動出来たよな? となると、出来ないワケじゃあないのか。ただ、難しいだけなんだろうな。
要練習だな!
「姉さま! 姉さまなら出来ます!」
あ、はい。アダーラも一生懸命応援してくれていることだし、頑張ろう。
……。
何度か蕾の茨槍を振り回してみるが上手く出来ない。これ、槍が悪いのかなぁ。草ではなく、金属の槍だともう少しやりやすいかもしれない。
うーむ。
「帝よ。そろそろ弓の練習を」
しびれを切らしたかのような形で魔人族のプロキオンがやって来る。
「あ、はい」
「何を! 姉さまはまだ私と槍術を学ぶのだ。お前の出番はない!」
何故かアダーラがプロキオンの前に立ち塞がる。あ、いや、えーっと。
「ほう。私の前に立つとは、ね。そろそろどちらが上か理解させる必要があるようです、ね」
アダーラとプロキオンがバチバチと火花飛び散りそうな勢いでにらみ合っている。なんだろうな、お前ドコ中だよって言い合っている高校生みたいだ。
「あ、えーっと、アダーラ、抑えてください。次は弓の練習ですね」
「姉さま!」
「さすが、帝は分かっていらっしゃる」
何処か勝ち誇ったかのようなプロキオン。いや、これ、単純に時間を守らないアダーラが悪いだけだろ。
と、弓の練習を始めようか。
「えーっと、今日は自分が作って持ってきた矢を使っても良いですか?」
今日は昼に天人族の羽根を使って矢を作ったからな。せっかくだから試してみよう。
「ほう。これを帝が? これはよく飛びそうです、ね」
プロキオンは俺が持っている矢を見て褒めてくれる。あー、でも、そっちは機人の女王が作った矢……なんだよなぁ。
ま、まぁ、俺の作った矢のようなものも活用法はある。試したいことがあったから、その実験にちょうど良いんだよ。
俺が作った矢のようなものを弓に番える。そのまま引き絞っていく。
「ええ、そうです。弓は腕の力で引くのではなく、背中で引くのですよ」
プロキオンの教えの通りに弓を引く。
そのまま魔力を流し込む。よし、弓と矢に魔力は流れた。
このまま狙っている場所まで魔力を伸ばす。狙いまで魔力を伸ばし繋げてしまえば、それがガイドラインとなって必中の矢になる。
そして、ここからが実験だ。
俺が作った真っ直ぐ飛びそうにない矢のようなものでもガイドライン通りに命中するのかどうか、だ。
さあ、的までの道は出来た。
放つぞ。
手を放す。
矢が飛ぶ。
矢が魔力のガイドラインの通りに飛ぼうとし、その途中で風の抵抗に負けたかのようにぐにゃりと軌道を変え、落ちる。
あ、外れた。
ふむ。
魔力で道を作っても外れる時は外れるのか。必中かと思ったのに、少し、意外だな。
次に機人の女王が作った矢を番え、放つ。
……。
普通にガイドラインの通りに飛び、命中する。うん、それどこから魔力の伝わりが非常に良いぞ。さっきの半分以下の時間で魔力を通すことが出来た。
当たった――これ、矢の出来が良いからか?
……。
いや、違うな。羽根か。
天人族の羽根を使っているから魔力の伝わりが良いのか。
うん、これはなかなか良い矢だ。
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