232 属性変質
「えーっと、魔力を流しました」
鍛冶士のミルファクから分けて貰った簡易の炉には草の魔力がしっかりと流れている。これで、いいんだよな?
「そうさね。次はその炉から素材へと魔力を伸ばし繋げるのさね」
炉から素材へと魔力を繋げる、か。やってみよう。
炉からゴーレムの破片に草の魔力を伸ばす。そこで何か衝撃が走り、伸ばした魔力が弾かれる。
あれ?
もう一度簡易炉から魔力を伸ばしてみる。だが、ゴーレムの破片に触れようとした瞬間、バチンと弾かれる。
はぁ?
どういうことだ?
俺のやり方が悪かったのか? それともこれであっているのか?
ミルファクの方を見る。ミルファクは静かに何も喋らず俺を見ている。
……続けろ、ということか。
もう一度、草の魔力を伸ばしてみる。だが、何度繰り返してもゴーレムの破片に触れそうなところで弾かれる。
……。
これ、間違っているよな?
でも、何が間違っている?
ミルファクは何も言わない。多分、自分で考えて試して見ろって感じなんだろうな。
だが、試すも何も魔力を伸ばしたそばから弾かれているから工夫のしようがないんだけどなぁ。
って、ん?
魔力?
そういえば、今、俺が使っているのは草の魔力だ。もしかして、これが悪いのか?
今、俺が扱えるのは……。
純粋な魔力と思われる無色。
黒い魔力。
草属性の緑色の魔力。
火燐属性の緋色の魔力。
くらいか?
ゴーレムの破片と草属性の相性が悪くて弾かれている……のだろうか。あり得るな。
「えーっと、もしかして自分の魔力が弾かれるのは属性があっていないから、ですか?」
気付いたことをミルファクに聞いて確認してみる。
「半分正解さね」
む。
半分正解?
「えーっと、どういうことですか?」
ミルファクが頷く。どうやら教えてくれるようだ。
「全てのものは魔素から作られているのさね。全ての根源である魔素は、属性を持ち変成するのさね」
変成? 鍛冶の基本とやらでも出てきたな。
「えーっと、それが……」
「全ての素材には属性があるってことさね。属性には相性があるから、帝の言っていることは半分は正解なのさね」
相性で魔力が通りやすい通りにくいがあるってことか。つまり、このゴーレムの破片と草属性は相性が悪い。だから、弾かれているのか。
「えーっと、でも半分というのはどういうことですか?」
「その簡易の炉は今はまだ全てに対応出来る万能の属性になっているのさね。それでも魔力が弾かれるというのは炉の火力が弱いのか、帝の魔力の質が悪いのかなのさね」
む、むむむ。
これは暗に俺の魔力がショボいと言われていますか。いや、多分、相性の問題だよな。この簡易炉は万能属性なのかもしれないけどさ、でも流している魔力は緑の草属性だから、俺と言えば草魔法だから、素直に草の属性を使っていたけどさ、それが悪かったんだよ。きっとそうだ。
となれば……。
無色、黒色、緋色。
いや、違うよな。
俺は自分の長く伸びた灰色の髪を触る。
俺の色だ。
これはもう時属性の魔力しかないだろう。今までこの魔力を扱ったことはないけど、出来るはずだ。だってさ、この属性、俺のカラーなワケじゃあないか。
やってやるぜ。
時魔法を使う要領で時の魔力を生み出し、掴む。それを炉へと伸ばす。よ、よし、何とかなりそうだ。うん、出来るよな。とっても簡単だ。だって、俺と一番相性の良い魔力なんだから当然だよな。
炉に灰色の魔力が繋がる。よし、次は、と。
炉から灰色の魔力をゴーレムの破片へと伸ばす。
繋がった……?
出来た?
次の瞬間、ゴーレムの破片が消えた。
へ?
え?
「な、何をしたのさね」
ミルファクが驚いた顔でこちらを見ている。
何をしたって言われても俺も良く分からない。
「えーっと、ミルファクが言っていたように炉に魔力を通して、そこからゴーレムの破片へと伸ばしました。そして、魔力が繋がったと思った瞬間、消えました。自分でも良く分かりません」
「強い魔力で素材に無理矢理魔力を流し込むことで、素材が変質することはあるのさね。だけど、今回みたいなのは私も初めて見たのさね」
強い魔力で無理矢理変質させる、か。
うーん、これ、時属性を使ったのが悪かったのだろうか。そうとしか思えないよなぁ。変質して消えたって感じだろうか。
……つまり、失敗だよな。
「あのゴーレムは真銀製だったのさね。それが悪かったのかもしれないさね」
ミルファクがそう言って金属の塊を持ってくる。
「最初は簡単な銅からやった方が良いさね」
素材の難易度が高かったのか。
うん、きっとそうだな。
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