218 いにしえ
白骨死体。
魔力で創られた人工の世界にあった初めての人工物以外のもの。
でもさ、それが人骨かよ。
で、この白骨死体さんは、何故、ここで死んでしまったのか。何故、この丸太小屋の下にある空間を指差しているのか。いや、指差しているのは――それはまぁ、偶然なのかもしれないけどさ。
とにかく謎ばかりだ。
とりあえずは、この丸太小屋の下にある空間が気になるな。
で、だ。
どうするか、なんだよなぁ。
この床板を剥がして調べる? 剥がせないんだよなぁ。どうやっても動かすことが出来ない。多分、だけど、この丸太小屋も、外にある木々と同じようにある程度のダメージを与えるとパッと消えそうなんだよなぁ。
……。
いっそ、攻撃をして壊すか。その方が手っ取り早いかもしれない。
多分さ、これ、この下にある空間を隠すように、この丸太小屋を置いた感じだろうしなぁ。
よし、そうしよう。
この丸太小屋の中には白骨死体の他には何もめぼしいものが無いしな。空っぽというか、なんというか、プリセットの建物をポンと置いた感じなんだよなぁ。最初からこういう形のものを、ポンとな。だから、壊しても惜しくない。
鍛冶士のミルファクは魔法みたいな力でポンと完成品の武具を作っていた。それと同じ感じで魔力を使い作ったのかもしれない。それがどれくらい昔に使ったものなのかは分からないけど、今も残っているのは凄いな。もしかすると、この白骨死体さんが結構、最近まで頑張って維持していたのだろうか。
この世界なら長寿命な種族とか居るかもしれないしな。
さて、と。
丸太小屋の外に出る。
さあて。
俺は右腕に巻き付いた茨を槍の形態に戻す。
潰すか。
蕾の茨槍に魔力を乗せ、丸太小屋を突く。弾かれる。
……。
硬いのか?
とりあえず弾かれようともお構いなしで突く。
弾かれる。突く。弾かれる。突く。
かったいなぁ。
何度も突く。
俺の突きが効いているのかどうかも分からないが、とにかく突く。何度も弾かれ、それでも突く。魔力によって作られた建物だからか、丸太の壁が削れることもない。
……傷一つ無い、か。
変化がないから心が折れそうになるなぁ。
効果があるのか無いのか、無駄だと思ってしまいそうになるなぁ。
それでも突く。
どれだけ突きを放ち続けただろうか。とにかく突く。
……。
にしても、この今の自分の体は凄いな。途切れることなく、何度も何度も突きを放ち続けているのに、息が切れることも、疲れることもない。そりゃあ、疲労感が全くないワケじゃあないけど、この程度なら一日中でも続けられそうだ。普通だったらあり得ないことだよ。いくら、槍が草で出来ていて軽いからって、突きを放つ動作は軽いものじゃあない。この小さな少女の体だ。普通なら一撃放っただけでへなへなになってもおかしくないのにさ。元の自分の体でも数回でへろへろだっただろうな。
これも常に体を魔力が循環している影響なのだろうか。この世界のハーフは凄いな。魔法が使えなくても充分過ぎるよなぁ。まぁ、俺は魔法も使えるんだけどさ。
そんなことを考えながら突きを放ち続ける。
黙々と突きを放つ。
どれくらいそうしていただろうか。
目の前の丸太小屋が光の粒のような粒子に変わり、魔力となって霧散する。
消えた。
終わった?
最後は無心で突きを放っていたなぁ。なんというか自分の型というか突きが効率化されていくのが楽しくてずぅっと続けていられたな。
と、さてと。
これで丸太小屋は消えた。
中にあった白骨死体だけが残り、それも丸太小屋が消えた瞬間に空中へと投げ出され、散らばって粉々になった。長い年月の間に限界が来ていたのだろう。お疲れ様、と。
そして、この丸太小屋が隠していた空間が明らかになる。
それは階段だった。
ここに来るまでにあった神域の通路と同じ、近未来的な壁と階段。この先は元々あった神域部分なのだろう。その上に魔法で木々や草など創っていた、と。
さて、何があるのかな?
階段を降りる。
すると、階段の壁に赤い線が入り、それが輝く。どうやら、これが明かりの変わりのようだ。
しばらく階段を降り続けると開けた場所に出た。
大きな広間だ。
天井が高い。階段を降りた分がそのままこの大広間の高さになっているようだ。
そして、その大広間の中心には燃えさかる太陽のような球体が浮かんでいた。
なんだ、これ?
デカい。数十メートルクラスの球体?
燃える球体に吸い寄せられるように近寄る。
熱くは……無いな。
本当に良く分からないな。
って、ん?
その浮かんでいる球体の下に誰かが倒れている。
球体にばかり目が行って気付かなかったが人だと?
倒れている少女に駆け寄る。そう、倒れているのは少女だ。何も身につけていない全裸の少女が燃える球体の下に倒れていた。
いや、違う。
普通の人じゃあない。
少女の体をよく見れば、関節や体の一部に線が入っている。何も身につけていなかったからこそ、気付けた違いだ。
まるで機械のようだ。
って、機械?
アンドロイドなのか?
機械の少女?
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