第3話

 とうとう3月1日になった。…るんこが来る日だ。

 顔を見るくらいなら、ライブチャットもあるのに。…なんでわざわざ会おうとするのか、俺はすこし疑問だった。

 病室のドアが開くと、その都度、なんとなく心に緊張が走った。でも専属のお医者さんだったりして、何度か肩透かしをくらったのだった。

 コンコン。…また、ノックの音がした。


「こんにちは。ラムネさん」


 この声は、るんこだ。

 俺は、すかさずモニターに目線を送って、挨拶を返した。


ラムネ:こんにちは。


 ピコン。

 彼女の持っているタブレットから通知音が響いた。…るんこは、俺のその返信を見て、小さく笑ってくれた。

 気づかいからか、彼女はとくに返事を欲しいとは思っていないようで、一方的に沢山の話をしてくれた。

 俺はそんなるんこの話を聞いてるうちに、彼女の存在を、なんとなくだけど、神秘的に感じていった…。

 彼女がここに着くまでに見た、沢山の赤色。それを見る度に、俺のキャップ帽を思い出していた、とか…。

 恥ずかしい。

 俺は、そんな彼女を目で追ってしまいそうで、反射的に目を閉じて、聞きいっているフリをした。……正直、口説かれてるみたいで、かゆかった。

 君も俺も、お互いの事でいっぱいなのが、よくわかった。


ラムネ:話を変えるけど、その抱えてる紙袋、どうしたの?


「そ、それは…。恥ずかしい。チャットにするね」


 恥ずかしい?何を今更。と、俺は思った。…どうやら彼女は自覚がないらしい。


るんこ:ラムネさんの部屋の番号、301でしょ?だから、面会の日を3月1日の今日にしたの。この袋の中身は、ラムネさんへのプレゼント。


ラムネ:そう。誕生日より貴重な日になりそうだ。ありがとう。


 ……301号室が、3月1日か。彼女の性格はわかってはいたけど、やっぱり意表をつかれてばかりだった。

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