いとしい色の中に

うなぎ

第1話

 ~登場人物~

 ラムネ(あだ名)

 るんこ(あだ名)



るんこ:この部屋に風がふいたら、どっか連れてって。


 パソコンの向こうにいる友達が、寂しくなったのか、またそんなメッセージをチャットで送ってきた。

 …どっか連れてって、か。……誰に向かって話しかけてるんだか。

 正直、困った。

 しばらくすると、病室の窓についているカーテンが、そよ風で揺れた。…俺は全身が動かないながらも、それを目のすみで感じた。

 ……この部屋に風がふいたら、どっか連れてって。

 俺は、るんこからのメッセージを、そっくりそのまま心の中で復唱した。

 それから、天井に取りつけてあるパソコンモニターを、スッと見すえた。すると、そこに映っているカーソルが、俺の目の動きに反応して動いた。…『キーボードを表示する』をクリック。

 動かない手の代わりに、慣れた風に文字を打ちこんでいく…。


ラムネ:どこがいい?俺は白いハトに乗って、世界中を飛び回りたい。


るんこ:ありがとう。でも世界中とか、そんなにいっぱいじゃなくていい。


ラムネ:そう?


るんこ:急に変なわがまま言ったりして、ごめん。


ラムネ:俺に言ってたの?


るんこ:他にいないってば。


 疑わしい。…わがままか。わがままね。


ラムネ:一緒にハトのうえに乗りたいな。俺もわがまま言った。おあいこ。


 わかってる、つもりだ。

 彼女は…るんこは、るんこの次元でしか、あまり物事を考えられない。だから、それですこし失敗したと感じると、まるで彼女自身のように俺が傷ついたんじゃないかって心配する。…この流れは俺の中でも、お決まりのパターンだった。


るんこ:そうそう。またラムネさんに会いに行くから。


ラムネ:聞いたよ。3月1日だってね。


るんこ:うん。バンザーイ!

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