1708話 日和見組織ハンダビラ

ジノガミの事務所に到着。ちなみに城門に昨日の腐れ騎士はいなかった。


「マダラはいるかー?」


「あんだぁ? えれぇ早ぇな……昼に来るんじゃなかったんかよ?」


「面倒なことはさっさと終わらせておこうと思ってな。もうスラムは統一したのか?」


「まだだよ! おめぇ今日の昼までにっつったろーが! まだハンダビラが残ってんだよ!」


あー、日和見組織のハンダビラね。つーか日和見組織ってどんな組織なんだよ……


「ならもう楽勝だな?」


「まあな。まあでもあいつら情報力だきゃあるからよぉ。今頃もう逃げてるかもなぁ?」


「なんだ、エチゴヤに情報で上回るような組織なのか?」


それって結構すごくない?


「おお。ハンダビラのボスにはエチゴヤも一目置いてるって聞いてるぜ。」


「ふーん。ちなみにお前らジノガミが今まで生き残れた理由は何かあるのか?」


「ちっ、ただの餌だよ。騎士団が民衆へ仕事してますってのを示すためだけに捕まえる要員だ。だから俺らぁ定期的にスラムのガキに餌ぁやって手懐けたりしてんだよ……やれやれだぜ……」


なんとまあ……そんな子どもを闇ギルド員ってことで突き出すわけか。

分かってはいたけどやっぱエチゴヤって完全に天王と癒着してんだな。あ、でもアラカワ領主も蔓喰と癒着してるし同類か。


まあ何にしてもハンダビラに興味が湧いたな。私も行こう。


「行くぜ。案内しろよ。」


「はぁ? 魔王も来るってのかぁ?」


「ああ。そしたらお前らは楽できるぜ? 案内するだけでいいんだからさ。」


「それもそうか。そんじゃゲオウ、案内してやれや。遠慮なく楽させてもらうぜ?」


「構わんさ。その分ローランド人を集めておけよ。」


「けっ……どうせ逆らえねぇんだからよ!」




こいつは確か昨日エチゴヤまで案内させた奴だったな。案内係か?


「な、なあ……あのエチゴヤのズレナを一体どうやって手懐けたんだ?」


こいつ昨日もあれこれ質問してこなかったっけ?


「普通に白い薬使って快楽責めしただけだぞ。」


「なっ!? 魔王ってあっちの方もすげえんかよ……」


「まあ、そんなところだ。」


誤解してるけど別に解く必要ないしね。


「昨夜はマダラさんが相手してたみたいだけどよぉ……手に負えなかったってよ……」


そんな情報はいらん。


「一人でだめなら大勢でがんばれ。」


「それもそうだな……」




「ここだ。ハンダビラの住処ヤサで分かってんのはここしかないってだけだがな……」


ここしかないならさっさと昨夜のうちに潰しておけってんだ。それとも後回しにした理由でもあるのか?


「分かった。もう帰っていいぞ。」


「おお……見ての通り狭ぇとこだけどよぉ……罠とか仕掛けてあるらしいぜ……まあ、せいぜい気をつけな……」


罠ねぇ。ジノガミの半分もないじゃん。どうしよっかなぁ。建物シェイクでいこうかと思ったが、罠なんてもんがあるなら気になるじゃないか。


普通に入ろう。


「おはよー。」


まだ午前だからな。


誰もいない。やっぱマダラの言う通り全員逃げたってのか? しかもここ平屋だし。どうせロクなもん残ってないんだろうなぁ。地下とかないのか? あった。テーブルをずらしてカーペットをめくっただけで床の切れ目を発見。これもう明らかに見つけてくれって言ってんだよな? 行ってやるよ。


少し重いか。錆びてはいないようだが。


『浮身』


よし開いた。


分厚い蓋の下にはハシゴが下に降りていた。

隠す気なさそうなくせにやけに立派な蓋だよな。怪しい……

まあ、行くけどさ。


あらら。地下室でもあるのかと思えば、まさかの地下通路とは。下水道はないくせに地下通路はあるんだなぁ。この際だ。行けるところまで行ってみるかな。


『光源』


うーん、狭いくせにやたら長いな。そして曲がりくねってる。羅針盤もないことだし、とっくに方向感覚狂っちゃったよ。どこに向かってんだろうなー。


おっ、分かれ道か。とりあえずまっすぐ行こう。

直角に曲がってやがる。左に行くしかないか。

ん? また直角だ。左に。

んん? また直角だと? 左に行くしかないじゃん。


今度は丁字路か。それならまた左に……ってこれさっき通った道だろ! ふざけんな! どうなってんだこれ?

地下通路と見せかけて、実際はぐるぐる回らせるだけとでも言うのか? ここを発見して喜び勇んで探索する奴をおちょくるために作ったとでも?

地下の工事って相当大変なはずだが、そんなつまらんことのためにわざわざ作るか?


つまり、道中のどこかに仕掛けか何かあるんじゃないか? 抜け道があったり、壁が開いたりさ。つまり、私に知恵比べを挑んでるってわけだな。上等だ。受けて立つぜ。


まずは定番。壁を叩きながら歩く。奥が空洞なら音が違うはずだからな。

というかコーちゃん助けてよ。コーちゃんならどこかにわずかな隙間があるとか分かるよね?


「ピュイピュイ」


あらら。今のところ全然なかったのね。しかも最近誰かが歩いた気配もないの。やっぱここっておちょくるためか?


それならそれで仕方ない。来た道を戻るとしようか。


おっと、ここだな。ハシゴを登ってと。

ん? 蓋が開かない。鍵らしきものは付いてなかったはずだが……


『浮身』


それでも開かない。

ふーん……蓋のくせに生意気な……

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