1336話 護衛団のジャバル
もちろん迷宮で手に入れたってのは嘘だが、そんなことはどうでもいい。これだけのお宝を目の前にしたこの手の奴らがどう行動するか……しっかり見せてもらおうか。
「き、君、今これをどこから……」
「魔力庫に決まってんだろ?」
「カゲキョー洞窟からこれほどの鉄塊が出たなどと聞いたことがない……一体地下何階層で……」
「四十六階だな。魔法が通じないヤバい階層だったぞ?」
四十六階は魔法が通じない危険な階層ってのは本当だ。私には関係のない話だが。
「そ、そんな……ならば新記録ではないですか……」
「しっかり見たな? じゃあもう行っていいぞ。俺はただ、お宝を自慢したかっただけだからな。」
「え、ええ……」
驚いてないで値段つけて行けよな。そんなことじゃあ商人失格だな。
「なんと……地下四十六階までも!? 新記録……!」
「バカ! 本気にすんなよ! あんなガキがこれほどのお宝を手にできるかよ!」
「そりゃそうだ! ハッタリはやめとけってあれほど言ってやったのによぉ!」
「ひゃっはははぁー!」
「だが、あれが魔力庫に入っていたことは疑いようのない事実だぜ?」
「ジャバル!」
「ジャバさん!」
「ジャーさん!」
「ちいーっす!」
また新たな登場人物が……こいつら人数だけは多いもんなぁ……
「ジャバルさん、あなたはどう見ますか?」
雰囲気的にこいつが護衛のリーダーか。
「あんた……もしかして……魔王か?」
マジで?
「なぜ分かった?」
「俺らはオワダから来たからな。カツラハ村だってもちろん寄ったさ。魔王と呼ばれるローランドファッションの男がエチゴヤをぶっ潰したことだってちゃんと知ってる。危うく皆殺しにされるところだったぜ……この通りだ。勘弁してくれ……」
こうやって素直に頭を下げられると弱いんだよなぁ……せっかくいい流れだったのに。
「ジャバルさん……この方が……あの!?」
「なんと……あの歳でそれほどの二つ名を!?」
「バカ、本気にすんなよ! ですよね? 冗談ですよねジャバさん?」
「そりゃそうだ! こいつがあのローランドから来た魔王だなんて……こいつのハッタリですよねジャーさん?」
「ひゃは……は……」
「このボケが! あんだけオワダでビビってたのをもう忘れたってのか! この服装にこのメンバー! どう見ても魔王の一行じゃねーか!」
そりゃそうだ。ヒイズルに私と同じ服装の奴なんていないもんな。アレクほどの美人もいなければカムイやコーちゃんを連れた四人組なんて他にいるはずがない。
「なんと……やはりローランドの魔王……」
「バカな……マジかよ……」
「ハッタリじゃなかったのか……」
「ひゃは……は……」
「すまねえ魔王さん。この通りだ。どうか勘弁してほしい。おらぁ! お前らも頭ぁ下げろや!」
「いや、いい。お前が下げた頭で充分だ。」
カスが何人頭を下げても価値などないからな。
「知らぬこととはいえ、大変失礼をいたしました。どうかご勘弁くださいませ……」
「いや、分かってくれたらそれでいい。じゃあ今度こそ行くからな。アンデッドには気をつけてな。」
「ありがとうございます! 魔王様もお気をつけられてくださいませ!」
やれやれ。袖擦り合うも多生の縁とは言うが、面倒なのは面倒だよな。まあこれも旅の醍醐味ってとこだな。見知らぬ土地に来てるんだからさ。だからって演技以外で下手に出る気もないからこうして揉めるんだけどね。
頭を下げたまま動かないリーダーと商人。やはり集団の上に立つ者ってのはそうでないとね。
「ねえカース。ちょっと気になったんだけど、さっきのあいつらって何しにカゲキョーに行くのかしら?」
「何しにって、そりゃあ商人なんだから……」
あれ? 言われてみれば変だな。
「カゲキョーの状況をある程度知ってたら商売にならないことぐらい分かるはずだよね。」
「でも別に私達が心配することでもないし、どうでもいいわよね。」
「まったくだね。案外迷宮に潜りに行くのかも知れないしね。確かにどうでもいいよね。」
「迷宮……言われてみればあの商人、あの中で一番魔力が高かったわね。カースと比べれば誤差でしかないけど。」
うーん、言われてみればそんな気もするな。確かに今ってチャンスだよな。迷宮は稼ぎ時だよな。
まあ、何にしても色んな奴らがいるものだ。
そうやってアレクと他愛ない話をしていたら野営地に到着した。うん、来る時もここで泊まった覚えがある。どことなく懐かしい気がするなぁ。よし、まずは肉だな。ガンガン焼いてやるぞ。
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