1331話 出会い

「ピュイピュイ」


ん? あぁコーちゃん、魔物だね。知らせてくれてありがとね。


『轟く雷鳴』


こんな密室で使う魔法じゃないけどさ、ちょっとムカついてるからな。後先なんて考えないぞ。とりあえず全滅しやがれ。面倒だからもう魔石は拾わない。


はぁ、一時間ぐらい経ったかな。意外と錬魔循環に集中してしまったからよく分からないんだよな。ある程度の時間が経てば落とし穴は再び作動するはずなんだよな。真ん中あたりからパカっと割れてさ。一応その時にぶつからない位置で待ってるんだけど、まだかなまだかなー。腹具合的にも魔力的にもまだまだ問題はないけど。





「ピュイピュイ」


おっと、また魔物だね。結局こいつらは蛇なのか鰻なのか……


『轟く雷鳴』


全滅しろよ。


いやー、つい錬魔循環に集中してしまっていたな。コーちゃんも見張りありがとね。うーん、二時間ぐらい経ったのだろうか。そろそろ開いてもいい頃なんだけどなぁ。






「ピュイピュイ」


おっと、また魔物だね。


『轟く雷鳴』


全滅しろよな。それにしてもこいつらは何の魔物なんだ?


いやー、ついつい錬魔循環に集中してしまうな。ここってもしかして修行するのに最適な空間なのか? それにしても開かないな……


今の私だと『浮身』の魔法ぐらいだといくら使っても魔力を消費したうちに入らないほど微々たるものだ。だから水上にいくら浮いていようとも魔力的な問題は起こらない。魔力庫にどっさり食料もあるしね。まあ腹なんかへってないけど。だが、いつまでもアレクを待たせるわけにはいかない。きっと平気なふりして心配してくれているはずなのだから。


よし、とりあえず天井をぶち壊してみようかね。


『身体強化』


それも魔力特盛だ。また筋肉痛に悩まされるのか……


『螺旋貫通峰』


円を描くように何度も突き、天井に穴を空ける。カムイを助けた時のように、私が通れるように。


コーちゃんはこの天井を抜けてもどこか別の所に行くと言った。だが、カムイを助ける時にあちら側から穴を開けた時にはきっちり下に繋がった。

つまり、無理矢理ぶち抜けば繋がる可能性が高い。後のことなんか知るか! 力尽くでブチ抜いてやるよ! いい加減ムカついてきたし!


おし、ラストぉ!

最後の一撃を入れたら、突っ込んだ不動を抜かずにそのままテコの要領で穴をこじ開ける。おし! 空いたぁ!


空いたけど……明るくない。元の場所ではないのか……やっぱ駄目か。くっ、待つしかないってわけか……


『この……愚か者が!』


うおっ!? びっくりした! これ、この脳内にいきなり響く感じは……もしかして神か?


『そうだ。この迷宮ダンジョンを司る亜なる者どもが神カゲキョーである!』


あなる者? 意味が分からん。でも神なんだよな?


『そうだ神だ。ここでしか力を発揮できぬ卑小な存在だがな。それでも、貴様のような我が迷宮を傷つける愚か者は許せぬ!』


いやいやいや! 許せぬって言われても! それじゃあ大人しく死ねって言うんですか!? カムイだって助けなかったら死んでたでしょうが! なんだかなぁ……なぜ私はことごとく神に愚か者って言われるんだ? 一生懸命やってるのに。


『五体を削られる我が身にもなってみよ! 生意気に神木などを使いおって! 貴様の奥歯にも大穴を空けてやろうか!』


いやいや、そう言われましても……勘弁してくださいよ……神様って試練を与えてそれを乗り越えた者に祝福を与えるんでしょう? 私は立派に乗り越えてるじゃないですか。今回だって上がろうとしたら閉まってるし。ちょっと酷くないですか?


『さっさと閉めぬと先に進めぬであろうが! それこそ神の温情である! それを貴様ときたら! 水の眷属をことごとく全滅させおって! 少しは加減をせぬか!』


じゃあここから出してくださいよ。もう迷宮の壁に傷つけたりしませんから。誰かが落ちない限りは……


『ふん……出してやるとも! だから二度とここへ来るなよ?』


いやいや、そう言われても! せめて最深部にまで潜ってからにしてくださいよ! 最後のボスとかいるんでしょ? 何階なんですか? それが終わったらお望み通り帰りますよ!


『五十階だ! 貴様でもフェンリル狼でも楽に勝てる相手だろうよ! だからもうさっさと出ていけ!』


待て待て待ってくださいよ! 神様がいるってことはやっぱりここって神域なんでしょ!? 帰らせるんなら祝福か何かくださいよ! いくらヒイズルの民じゃないからって酷いですよ!


『では誓いをたてよ。貴様らに祝福をくれてやる。だから二度とこのカゲキョー迷宮に入らぬと』


いいでしょう。私達四人は二度とここに入らないことを誓います。ただし祝福次第です。この誓いが効力を発揮するのはそれからです。いいですね?


『この……愚か者め! 欲をかきおって! まずは上に戻してやるわ!』


おおっ!? 一瞬クラッときて……「カース!」


「アレク!? ごめん、待たせたね。」


「べ、別に待ってないしカースの心配なんかしてないんだからね! もうっバカ!」


そう言って抱きついてきたアレク。久々に見たツンデレ風味のアレク。かわいいんだからもう。


『望みを言え……』


「えっ!? い、今の声ってもしかして!?」


「この迷宮の神様だって。祝福をやるから出て行け。そして二度と来るなってさ。」


まったく、神のくせに了見が狭いんだから……

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