1319話 四十三階
さぁて少しだけ休憩したら次は地下四十三階。ここの魔物は何かなぁー。
「さあ隊長。また安全地帯へ案内頼むわ。そんでまた肉を食おうぜ。食ったら寝る。」
「あ、ああ……この階も分かる。そろそろ第二分隊や第一分隊とも遭遇するかも知れん。特に安全地帯周辺ではな……」
ほぉ、あと二組いるのか。それは楽しみだな。
おっと、魔物だ。なんだ、やっぱウェアタイガーかよ……いや、違うな。ウェアパンサーか? 模様以外に何が違うんだ?
なるほど、跳躍力が違うのか。転がした円柱の上を飛び越えやがった。だが空中では隙だらけだぜ。『狙撃』
なっ!? 避けやがった!? 首を少し捻るだけで……ちっ、いくらホーミングでも命中の直前で躱されては通り過ぎるだけだ……
いい反応速度をしてやがるな。ちなみに通り過ぎたライフル弾は向きを変えて奴の後頭部に命中したが頭を揺るがす程度で済んでしまった。やはりこのクラスの魔物には目玉に当てでもしない限り効かないようだ。
ならば『火球』
ちっ、火球だと速さが足りない。躱しつつ間合いを詰めて来やがる。そうはさせるか。『連弾』
ふう。終わりだ。一気に六発も撃てば避けられまい。それにしても、そこそこの近距離で狙撃を避けるとはやるもんだな。
「さすがにやるな。ウェアパンサーは力はそこまででもないが素早く厄介だ。近寄らせる前に仕留めたのはよい判断だろう。あの爪は危険だからな……」
当然だ。あんなヤバそうな奴を近付けてなるもんかよ。どんだけ魔力のごり押しをしてでも仕留めてやるさ。
「道はこっちでいいのか?」
「ああ、この階ぐらいなら分かる。そのまま進め……」
罠にはかかりたくないが、カムイが落ちたあれ。あの時の鰐がどんな素材を落とすのか気になってるんだよな。
「なあ隊長。落とし穴があるよな。下が水で鰐が待ち構えてるやつ。あれって他の罠と区別はつくのか?」
「……つくわけないだろう……それに、あれに落ちて生きて帰った者はいない……」
クルーエルクロコダイルだっけな? やっぱ相当きついよな。うーん、ますます気になってきた。あの鰐は一体どんな素材を落とすんだ? 四十五階以降であそこに落ちたらあぶなそうだからな。今のうちに試しておきたいとこなんだよな。
「ガウガウ」
ん? 次は負けないって? カムイ、お前水中で戦えるのか?
「ガウ……」
あ、無理? そりゃそうだろ……まずは『水中気』を使えるようにならないとな。
「ガウガウ」
水中気を教えろ? いやいや教えろって言われても私は未だにどうやって教えればいいか分かってないんだよ。よし、じゃあさ。次にあの罠があったら一緒に落ちようぜ。そんで私の魔力の流れを勝手にチェックしろよ。そして覚えろ、な?
「ガウガウ」
まったく。カムイも強情だよな。負けず嫌いなんだから。いくらお前でも水に沈んだら死ぬだろ? 無理するなよ。つーかお前魔法使えるのか? 魔力はたっぷりあるけどさ。
それから落とし穴など普通の罠を越え、魔物を撃退しながら安全地帯に到着した。
「よーし、晩飯にするか。肉食おうぜ肉。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
「もう……驚かん……貴様は本当に魔王なのだろうな……恐るべき魔力量に溜めを必要としない発動速度、そして精密な制御。こんなに楽をさせてもらっては四十三階であることを忘れてしまいそうだ……」
いやー本当のことを言われると照れるなぁ。
「まあ飲めよ。ほれほれ。」
「あ、ああ、いただく……ふぅ、いい酒だな……」
「ピュイピュイ」
分かってるって。コーちゃんもどうぞ。
さて、つまみが欲しいな。早く肉を焼こう。
「ガウガウ」
食べたら風呂だって? 分かってるって。まずは大人しく食えよな。
あー美味しい。でも肉だけでもよくないな。野菜や貝類も焼こうかな。うーん酒が進んでしまうね。よーし焼酎、いやアラキ酒にレモン、ではなくリモンを少し絞って……いいねぇ。
「それはカツラハ村のリモンか? 鮮烈で爽やかな香りがここまで漂ってくるではないか……」
ここのリモンはいいよなー。ますます酔いがまわってしまいそうだ。
「ほれ、やるよ。好きに搾りな。」
「うむ、かたじけない。いただこう……」
あー旨い。これはたまらんな。
「ねぇカースぅ……お風呂入ろぉよぉー……」
おっ、アレクが酔っている。かわいいんだからもう。
「ガウガウ」
先に洗えって? 大丈夫だって。水人形で洗うからさ。筋肉痛が治ってないんだからさ。
「カースぅ早くぅ!」
「よーし入ろうね。」
隊長にはリモンとアラキ酒を追加だ。そこで大人しく飲んでなさい。
「ん? 来た……二番隊か?」
あー足音が聞こえるな。赤兜か? 魔物ならここに来ないしな。まったく……今からいいところだってのに。
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