第1287話 地下十階のボス
いやーいよいよ地下十階のボスか。十の倍数階は手強いって話だったよな。
「アレク、頑張ってね!」
「ええ、任せておいて。」
ここまでの数日、私はずっと横になっていた。正確には鉄ボードの上でストレッチをしながら。おかげでだいぶ良くなったんだよな。次の階からは私が矢面に立とうかな。
この階の雑魚は緑の芋虫クロウラーだったからな。ボスも大きいクロウラーってとこか。キモいなぁ。
さあ、扉を開けて突入だ。
巨大クロウラーの姿が現れてきた! うわぁ……十メイル超えかよ。きっも……
『吹雪ける氷嵐』
おお! いきなり上級魔法か! カムイ、こっちにおいで。そっちは寒いぞ。
「ガウガウ」
これで決まりかな。やはりアレクは微塵も油断していない。
「ガウガウ」
なに? 効いてないって?
うげ……ボスの足元から大量のクロウラーがわらわらと湧き出てきた!? つーかアレクの上級魔法を食らって何で無傷なんだよ? 芋虫なら寒さには弱そうなのにさ。
『燎原の火』
おっ、今度は部屋中を火で覆い尽くした! 密室で火の魔法って危険なことを……風壁を広めに張っておこう。
ほほう、今度はボス以外たちまち全滅か。おまけにボスの口辺りから縦横無尽に伸ばされる糸らしきものまでアレクに到達することもなく焼き尽くされている。あんな糸に巻き取られるなんて嫌だよなー。
ん? なにぃ!?
ふぅー危なかった……巨大な芋虫のくせに、猛スピードで突進してきやがった。なんという瞬発力だ。なぜか私達の方に。お前と戦ってるのはアレクだっつーの。そのせいで大きな隙を晒してしまっている、バカめ。
『
おおー! なんて危険な上級魔法! 刃と化した氷が円を描き、クロウラーを切り刻んでいくではないか! まるで巨大なミキサーだ! これはエゲツない!
おっ、終わったね。バカな芋虫め。私達なんか放っておいてアレクに集中してれば、もっといい戦いになっただろうに。
アレクの魔法が消えると芋虫も消えていた。そこに残されたのは、魔石……ではなく肉の塊だった。だいたい二メイル四方の立方体ってとこか。大量だな。あの芋虫の肉ってことか……? 旨いんだろうか……? どうもいまいち信用できないな。毒があったら笑うぞ。
「お見事だったね。最初の魔法が効かなかったのには驚いたけど。」
「私もよ。よく見てみると、まるで魔法が透けてるかのようだったわ。もしかしてこの階、もしくは十の倍数階のボスには先制攻撃ができないようになっているのかも……」
「あーなるほど。あり得るね。つまり、ボスが現れてきっちり体勢を整えるまで待たないといけないってことね。」
だからゲームじゃねーっての! 何なんだよここの神は! 私達で遊んでいるのか!? 素材という賞品を出すから魔物と戦う様を見せてくれとでも言うのか!?
この後、下に降りようとしたらカムイが戦ってみたいと言うので一時間ほど休憩した。一時間休めるとなればやはり風呂だ。アレクだって疲れてるだろうしね。ふぅーいい湯だね。
風呂から上がり、ポカポカの体でまったりしていると再びボスクロウラーが現れた。私も試しに魔法を撃ってみたが、やはり透過してしまった。これはもう、そういうものだと考えるしかないな。そして先ほどと同じく部屋中に小さなクロウラーがわらわらと湧いて出てくる。やはりキモい……
『氷弾』
なるほど。この状態になると当たるのか。じゃあカムイ、頑張れよ。
「ガウガウ」
うーん、やっぱりカムイの戦い方は華があるね。かなり鮮やかだわ。特に、ここのような広い部屋だとやりやすいんだろうな。見事なもんだわ。
床を埋め尽くす芋虫どもの頭を的確に踏みつけて一撃で仕留めている。小さいとは言ってもカムイよりは大きいってのに。しかも、ボスから発射される邪魔な糸を全て避けた上で。やっぱすごいわカムイ。
そしてわずか五分後、部屋中を埋め尽くしているのは芋虫の死体。どうやらボスを倒すまで消えないらしい。どこまでもキモい奴らだ。
「ピュイピュイ」
あららコーちゃん、小型クロウラーの肉は不味いのね。ならばボスが落とした肉に期待だね。不味かったら捨てるけど。
それよりもカムイのやつ、この巨大なボスクロウラーを相手にどうするつもりだ? と思ったら終わってた……芋虫の首らしき箇所が大きく切り開かれ、頭部がべろんと前に傾く。さすがに切断とまではいかずとも致命傷だな。考えてみれば十メイル級なんて巨鳥ルフロックに比べたら一割にも満たないサイズだもんな。
「ガウガウ」
風呂だって? 浄化で我慢してくれよ。もう出発したいんだからさ。まあ体中がクロウラーの汁に塗れてるもんね。風呂は今夜のお楽しみってことで。実は今がもうすでに夜かも知れないけどさ。
よーし、今度こそ地下十一階だ。張り切って行こう!
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