第1242話 カースのお遊び

エチゴヤ側で生き残っているのは三人目のカンキって奴と無傷の四人目だ。毒が効き始めてくると少しずつ苦しむのか、それとも一気にぽっくり逝くのか。しっかり確認させてもらうぜ。

それに、生き残っているのは二人だが私が持っている解毒剤は一本。あの二人がこのまま大人しく死を選ぶとは思えんな。それに番頭のようなクソ上司にそこまでの忠誠を誓っているはずがない。まあ、契約魔法でガチガチにされてるってパターンはありそうだが。


まあ、いずれにしても私は高みの見物、いや下から見物だな。


「おい! いつまで寝てるつもりか! さっさと第三戦を始めるぞ!」


会長がうるさいな。


「まあ焦るなよ。あいつらの死に様を見てからでも遅くないだろ? 凶津時侵まがつときしんなんて初めて聞く毒だからよ、どんな死に方をするのかじっくり見たっていいだろ? なあ番頭さんよ。いいよな?」


「先ほどもいいと言ったでしょう。やはり趣味の悪い方ですね。見たいなら見ればいいでしょう。別に時間稼ぎをしているだなんて思ってもいませんよ?」


ふん、先は長そうだからな。少しぐらい休んでもいいだろ。こっちは四人しかいないんだからな。


「お前らもついてないよな。エチゴヤなんかにゲソつけてなければこんな無駄な死に方をすることもなかったのによ? あ、分かってると思うが先に頭を下げた方だけ助けてやるぞ?」


だって解毒剤は一本しかないんだから。こんな奴らのために大金をはたいた私って本当にお人好しだなあ。


「べ、別に死ぬことなど怖くない!」

「お、俺もだ! こんな稼業なんだ! いつ死のうが悔いなどない!」


「好きにしろよ。俺はただお前らがどんな風に死ぬのか見たいだけだからよ。でも、組織の役にも立てずに無駄死にか。情けない奴らだよな。」


「くっ……言い訳はせん!」

「戦って負けたのだ……悔いなどない!」


ふーん。ご立派だね。さて、残り十分を切ったぐらいか。


「なー会長、この解毒剤って死ぬ間際に飲んでも効き目はあるのか?」


「さあな、飲むのが遅くなればなるほど効き目は落ちるのが道理。飲むなら一刻でも早い方がよかろうな。」


私もそう思う。だが、知ったことではない。少し寝よう……アレクのふとももが気持ちいいから……『消音』






「カース ……カース、起きて。」


「おはよ……まだ眠い……よ……」


体中が痛いしまだ眠い……さすがに校長の真似はやりすぎだったか……


「そろそろよ? カースが見たいんじゃないかと思って。」


「ああ……ありがと……」


正直もう少し寝ていたかったけど、あいつらが死んだらどうせ起きないといけなかったんだしな。それにしても意外だな。私が寝ている間に自棄になって襲ってくると思ったが。


「ふあぁ……どうだお前ら? このまま無駄死にする気分は?」


「うぐ、うる、さい……」

「はぁ……お、おぼっ……」


顔色は分からないが、地面に膝をついてやがる。


「おおそうだ。偶然だけど俺って解毒剤を持ってるんだよな。どうしよっかなー?」


「ぐくっ……」

「くっ……」


「でも使い道ないしなー。せっかく買ったんだけどなー。もったいないなー。でもお前らいらないんだよな? それなら捨てるしかないなー。」


奴らの目の前で解毒剤の蓋を開け、ゆっくりと傾けていく。


ポタッポタと地面に吸い込まれていく液体。


「ほーら、いいのか? なくなっちまうぜ?」


「あ……ぐぅ……くっ……」

「た、たす……」


「何だって? はっきり言わねーと聞こえねーよ。ほらほら、早くしねーと全部なくなるぜ?」


「…………」

「…………」


あら? 何も言わなくなったな。しかしまだ生きてる。地面に倒れこんで無言でバタバタともがいている。あーあ、無駄遣いしちゃったかな。


「なあ会長、この状態はもう解毒剤飲んでも手遅れか?」


「そうだな。ほぼ手遅れだろう。残念だったな。」


こいつらが死のうが気にはならないが、無駄遣いしたことは悔やまれる。せっかく操り人形にしてやろうと思ったのに。


結局解毒剤は全て地面に吸い込まれていった。あーあ。


「待たせたな。三回戦いこうか。」


「それでは凶毒四連殺の第三戦を始める! 双方四名を選出するがいい!」


さてと……遊びはここで終わりにするかな……


こんなクソ不味い毒を何回も飲みたくないしな。




「それでは凶毒四連殺第三戦、第一殺を始める! 双方名乗れぃ!」


「カース ・マーティン。」


「深紫、『血柱』のタンベだ……」


「双方構え! 始めぇ!」


『徹甲五十連弾』


『狙撃』


ついでに番頭も狙ってみた。

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