第1238話 第二殺 カムイ
「勝負あり! 勝者コーネリアス!」
やっとかよ。あいつはとっくに場外に出てただろうに。
ちなみに狂ったあいつは仲間に数人がかりで取り押さえられ、口から剣を差し込まれ絶命していた。無敵のムラサキメタリックだって覆われてなければそれまでだもんな。くっくっく。
「第二殺を始める! 双方前へ!」
カムイ、がんばれよ。
「ガウガウ」
相手は見た感じさっきと同じだ。そりゃそうだ。全員同じムラサキメタリックのフルプレート鎧なんだからさ。
「双方名乗れ!」
「
「ガウガウ」
「あー、例によって代わりに言うな。この狼ちゃんはフェンリル狼のカムイ。神代文字だと神威だな。ローランド王国は北の大森林、ノワールフォレストの森の覇者みたいなもんだ。」
ふふ、プレッシャーかけてやるぜ。
「双方構え! 始め!」
おっ、今度はどっちも動かないな。相手は剣、いや刀を抜いてもいない。それにしてもフルプレートの鎧に刀って似合わないよなぁ。あれだけの鎧を着ておいてよくスムーズに動けるもんだわ。あれこれ魔法効果を付けてるんだとは思うが、ムラサキメタリックを相手によくそこまで加工できたもんだ。
先に動いたのは、カムイ。相手を翻弄するように動いているが、カムイにとっては狭すぎるのだろう。いつもの速度が出ていない。私でもどうにか見えるぐらいなのだから。
「ふっ、笑止……」
居合っぽく刀を抜く相手。が、カムイにはかすりもしていない。
「ガウガウ」
え? 刀が臭い? あー、毒でも塗ってんのかね。舐めたらだめだぞ?
「毒が卑怯とは言うまいな……」
言うわけないだろ。
的確な動きでカムイを追い詰めようとする紫。さてはこのルールでの戦いに慣れてやがるな。余裕こいて抜いた刀を地面にぶらぶらしてやがる。刃が欠けるぞ? それはないか。
『カオオオオオオーーーーーーン』
「ふっ、笑止……負け犬の遠吠えか……」
カムイの魔声に相手は一瞬たじろいだ。だがそれだけか……やっぱ魔法防御は完璧か……
しかしカムイにはその一瞬さえあれば充分だ。白い閃光が走り、紫の奴は場外へ吹っ飛んだ。カムイは、頭から少しばかり血を流している。
なんとまあ……超高速の頭突きかよ……痛いだろうに、待ってろ。ポーションを飲ませてやるからな。
「勝負あり! 勝者レイム!」
あ?
なんだと?
「おい! どこがあいつの勝利なんだよ! 寝ぼけてんのか!?」
「ガウガウ」
カムイだって納得してない。ふざけんなよ?
「そこの足跡をよく見るがいい。」
あぁ? 足跡だらけで分かるかよ!
「ここだ。最後の体当たりの時、その狼はこの位置から走り出した。ここをよく見てみるがいい。
「あ? どれよ……なにっ!?」
マジかよ……線が内側に書き換えられている……
はっ!? あの時か! あいつが刀をぶらぶらしてた時! まともにやっても勝ち目はないと見て……こんな低い確率に賭けたってことか……
カムイが自分に勝つには体当たりしかなく、助走をめいいっぱい取るだろうと推測をして……
「分かったな? 線から出たら負けと言ったはずだ。その狼はレイムとやらの知恵に負けたのだ。」
「ガウ……」
「いいだろう。今回は負けておいてやる。ただし、この手は二度と許さんぞ?」
『氷壁』
土俵の綱と同じように周囲を囲った。動かせるものなら動かしてみやがれ。
「よかろう。では第三殺へと移る! 双方前へ!」
ちっ、まさか線の書き換えとはな……もっと毒とか人質とか、そっち系で来るかと思えば……あなどれない相手だな。
よし、切り替えていこう。
「双方名乗れい!」
「カース・マーティン。」
「深紫、『
へぇ、こいつ両手に盾を持ってやがる。いや、盾にしては小さいか。直径三十センチの円型だな。あれで防ぎつつヘリで殴るわけだな。同じことを考える奴もいるもんだな。私がダークエルフの職人クライフトさんに作ってもらったオリハルコンの盾と同じ発想じゃないか。あいにくこっちはまだ一度も使ってないけど。ヒイズルにいる間はオリハルコンはなるべく使わない方針だからな。
「双方構え! 始め!」
『徹甲連弾』
「し、勝負あり……し、勝者カース……」
後ろに控える他の紫の奴らまで派手に巻き込んでやった。ダメージはほぼないだろうが内臓や脳味噌はさぞかしシェイクされたことだろうさ。本当は紫弾一発で殺してやろうかと思ったのだが、あの盾だ。もし防がれたら魔力の浪費がとんでもないことになるからな。よってここはひとまず勝ちを優先させてもらった。
しかし……困ったぞ……
アレクにまで出番が回ってしまった……
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