第1229話 船の外
壊れたドア前に立ちはだかるスケルトン。私達をここから出さないと言いたいのか? バカが! せっかく私が気を利かせてここから出ようとしているのに。
そりゃあスケルトン風情に空気を読めと言うのは無理な話だけどさ。
『風壁』
先ほどまでと同様に閉じ込める。
「行くぞ。外に出たらナマラとこいつを弔ってやるからな。」
「あ、ああ……だが、クロマ様からは何か強い意志を感じるのだが……」
「所詮はスケルトンだろ? 放っておけよ。こんな臭い所にいつまでもいられるかよ。出るぞ。」
心配しなくてもこいつが言いたいことは私が受け取った。ヒイズルとローランドで言語がほとんど変わらなくて助かった。
「あ、ああ……」
私達が外に出て見れば……
「アレク!」
「カ、カース……やったわ……私、カースが出てくるまで……ここを守り抜いたわ……」
「ガウガウ」
船の周りは死屍累々……カムイですら白い毛の一部が赤く染まっている……
「アレク……よくやってくれたね。ありがとう。もう大丈夫だよ。休んでおいて。」
「カース……」
そう言ってアレクはカムイにもたれかかり気を失った。周囲を囲むの三十人にも及ぶヒイズルの騎士と……十人に満たない紫の鎧だった。
これだけもの軍勢を相手に……アレクは……
カムイ、お前がいてどうしたことだ?
「ガウ……」
あー……紫の鎧な……さすがのお前でもあの鎧は簡単には斬り裂けなかったのな……仕方ないか……アレクとは相性最悪だしな。それなのによく持ち堪えてくれたもんだ。
「一応聞いておくぞ? この船は俺が引き上げた。つまり俺の物だ。それに文句があるからここに来てんだよな? それほどヤバい物がこの中に眠ってんだよなぁ! だがなぁ! おい、話してやれ。」
「あ、ああ……名簿はなかった……当たり前だよな……何年も海底に沈んでたんだ……何もかも朽ち果ててたんだ……」
この手の奴らが聞く耳を持つとは思えんがね。
「何をもみ消したかったかは知らんが残念だったな、いやちょうどよかったのか? だが、もう遅いぜ。せっかくここに集まってくれたんだ。俺とも遊んでくれよ。愛しのアレクと遊んでくれたようにな。」
『榴弾』
総勢何人いるのかは知らんがオワダの騎士には災難だったな。可哀想だが全員死ね。今さら言い訳なんか聞かん。
ほとんどの奴が悲鳴をあげる間もなく肉片と化した。そして平然と生き残っているのが……
「お前らが
あれ? 動かないぞ? まさかビビったわけでもあるまいに。
来ないならいいや。皆殺しにしてやる。
『紫弾』
それも衝撃貫通をたっぷり乗せたやつだぜ?
「なっ!?」
「ゴナンっ!?」
「うっ、そだろ!?」
なんだ。普通に貫通したじゃないか。なら連発だ。
『紫弾』
弾数に限りはあるが、この場の人間を殺すぐらいなら問題はない。
ここ一年間の経験……イグドラシルに登ったり、死汚危神を解毒したり。それらの経験は私にとってかなりの試練となったようで……
ムラサキメタリックの鎧を容易くブチ抜けるほどになっていた……
まあ、同じ金属を使ってるから当たり前と言えば当たり前なのだが。
まあ実は……全然容易くない。一発撃つのにどれだけ魔力を消費してんだよ! 二十発も撃てば魔力が切れてしまうんじゃないか?
「諦めろ。もう終わりだ。」
一人だけ無傷で生かしておいた。私だっていつまでも同じミスはしないさ。こいつからきっちり情報をゲットしてやるぜ。
『金操』
さすがに兜を真っ二つにはできないが、無理矢理脱がすことぐらいはできる。ふーん。普通の顔してんな。モブ顔だ。兜は没収、魔力庫に収納……できた! 魔力はめちゃくちゃ消耗したけど……
「なっ!? なんなんだよお前は! お、俺らぁ無敵の
やっぱそうか。それなのに騎士と一緒にいたよな。やっぱここの騎士は腐ってんのな。
「安モンの鎧で調子に乗ってんなよ? それよりせっかく生かしてやったんだ。あれこれ吐いてもらうぜ?」
魔力庫に収納できたと言うことは、古いタイプのムラサキメタリックなのだろう。それでも敵なしだったんだろうな。今までは。
「ふっ、ふざけ『金操』うぎゃあああっ」
「右肘が折れたぐらいでうるせえよ。どうせ素直に話す気ないんだろ? 関節を一つずつ折るからよ、話したくなったら言え。」
「な、なめん『金操』ながぁぁーー!」
さすがにムラサキメタリックを引きちぎることなんかできないからな。それでも関節部分を無理矢理曲げることぐらいはできる。できるが……ちょっと魔力が危なくなってきた。そろそろ吐いてくれないかな……
「あーあー、めちゃくちゃやってるよー」
「うっわひっでー」
「おおー、あれがシーカンバーの船なー」
「げーあいつらエチゴヤじゃね?」
腐れ騎士四人組までやって来た……
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