第1219話 ダイブ イントゥ ザ ブルー
なんと、ナマラおばちゃん自身が乗り込んできたではないか。腰を抜かさないでくれよ?
鉄ボード上には私とアレク、おばちゃんと護衛っぽい若いのが二人。合計五人で海を目指すことになった。コーちゃんとカムイは先ほどの玄関前で戯れてたから置いてきた。
『こんなのが浮くのか?』と不思議そうな顔をした二人の護衛をよそに、鉄ボードはたちまち海上へ。別に魔道具でも何でもない、ただの鉄の板だけどね。
「あんれま! こらたまげたでな!」
「魔力は大丈夫なのか……」
「もう引き返せないか……」
「気にするな。場所だけ教えてくれたらいいさ。」
沖合二十キロルと言われても目印なんかないからな。案内なしで分かるはずもない。
「あれは六年前のことでなあ……」
おばちゃんが話し始めた。聞いてないのに。まあいいや、聴いてやろう。
「わしらはバンダルゴウからの帰りでなぁ、それはそれは大層な荷ぃ積んでおったでなぁ……」
「あん時ぁ急に
「
「夫は……最後まで諦めん、と言ったまま操舵室から出てこんでなぁ……」
「わしらは甲板で迎撃しておったんじゃが……」
「高波にさらわれてしもうてなぁ……」
「気付いたらオワダの浜辺に打ち上げられておったでなあ……」
ふむふむ。ローランド王国で言うところのランスマグロに襲われたんだな。槍のように強力な突き出た歯を持つマグロだが、オワダとバンダルゴウを行き来するような船に通用するとは思えんな。それこそシーサーペントに襲われても耐え切れるって話だし。
まあ、嵐の海に投げ出されてよく無事だったもんだ。ついてたね。
「そろそろだで……」
よく分かるな……
「なんて早さだ……」
「もう着いたのか……」
護衛は驚いている。ふふふ。
「ここだ! ここだで!」
「分かった。じゃあちょっと行ってくる。まずは見るだけな。おっと、その前に。」
『拘禁束縛』
アレク以外の三人を身動きとれないようにしてやった。護衛達は恨めしそうな目で睨むが信用がないのはお互い様だ。これぐらい我慢してもらおう。
「アレク、浮身を頼むね。ちょっと退屈とは思うけど周囲の警戒をきっちり頼むよ。」
「ええ、待ってるわね。ここまでしなくても私は油断なんかしてないわよ?」
「あはは……ここは狭いからさ。自滅覚悟で手出しをされたらキツいかなーって。じゃ、じゃあ行ってくるね!」
だって今日が初対面の奴らの中にアレクを一人残すのは心配なんだもん。カムイを連れて来ておけばよかったな。さーて、この辺りはどれだけ深いんだろうね。きっと初めての深さだろうな。
ひたすら下を目指して潜る。当然ながらだんだん暗くなり、途中からはもう真っ暗と言っていいぐらいだ。かなり潜ったんだろうな。自動防御に水中気、おまけに水滴と暗視まで使わされてさ。魔力がどんどん減ってしまうな。
明るさと水深にはある程度の因果関係があるはずなんだが、詳しいことなんか知るわけないしな。うーん、すっかり真っ暗だ。これ暗視を使ってなかったら上も下も分からなくなってしまうぞ? 光源なんか使ったら魔物が押し寄せて来そうだし。
うーん、暗視を使っているのに方向が不安になってきた……本当に私は下に進んでいるのか? 不安だから……魔力庫から……
大きめの岩を出してやった。おおー落ちる落ちる。あっちが下なのね。やはり少しズレていたようだ。帰りもちょっと不安だな。
岩の後をついて潜ること二分ちょい。ついに海底が見えた。意外に何もないんだな。まるで砂漠のようだ。砂の中に魔物とか潜んでそうだからあんまり近寄らない方がいいな。さて、どうやって探そう……
とりあえず岩が落ちたポイントを起点として、周囲を捜索してみようかな。一つの方向に進んでは起点まで戻る。そしてまた別の方向を探る、といった感じなら迷うこともないかな?
羅針盤は持っているが、こんな海底で取り出したら壊れてしまいそうだからな。目測で東西南北の四方向へ向かってみる。まずは仮の北からだ。向かった方向を岩に刻んでおこう。まずはこっちを北と見なす。
体感で十分ぐらい進み、何もなかったので戻る。次は東だ。
なし。次は南へと向かう。
進むこと五分と少し……遠くに何か……
あったーー!
これか!
沈んでる沈没船なんて初めて見たな。びっくりするほど原型を留めてやがる。全長は四十メイルぐらいかな? 小さいな。表面にはフジツボっぽいのがびっしり生えてる。フジツボって旨いとは聞くが獲るのが面倒だな。後日引き上げた時の楽しみにしておくかな。
さーて、本来なら減圧症や潜水病なんかを気にしながら浮上するべきだろうが、私には関係ない。
『風球』
大きな気泡を作り出すと勝手に浮上していく。その後ろを追いかければすぐに海面……なのだが……
ちっ、魔力探査に反応あり……深海の魔物か……
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