第1204話 豪華ディナー

「ねぇカース……」


「ん? なぁに?」


私達は裸のまま畳に横になっている。布団も敷かずアレクにのし掛かられたからな。


「最高だったわ……」


「僕もだよ。」


「大好き……」


「アレクは可愛いね。」


ぬふぅー! アレクが可愛いすぎるぞ! さっきまでの肉食っぷりが嘘のようだ! いや、あれはあれで魅力的なんだけどさ!


「カース……疲れてるのに……私ったら……ごめんなさい……」


「いやいや、全然そんなことないって。アレクと一緒なんだから疲れなんか吹っ飛ぶって。」


「じゃあカース……」


「何だい?」


「もう一回いい?」









〜〜削除しました〜〜









「ガウガウ」

「ピュイピュイ」


うーん、寝てたかな。薄暗くなってる。もう夕方か。


「アレク、起きて。何か食べようよ。」


「ううん……カース?」


コーちゃんもカムイも腹がへったんだよね。待たせてしまったな。ごめんよ。


さてと、食事はこの部屋でもいいし食堂でもいいと聞いている。ならはヒイズル初日だし他国の文化に触れるためにも食堂の喧騒の中で食べてみようではないか。


「アレク、ドレス姿を見せてよ。」


「ええ、分かったわ。じゃあ着替えてくるわね。」


私はどれにしようかな。たまには気分を変えてみようかねえ。




「お待たせ。」


「おおぅ……すごく似合ってるよ。やっぱりアレクには赤が似合うね。」


ワインレッドのドレス。胸元にはアルテミスの首飾りが赤く輝いている。


「ありがとう。カースこそ白いウエストコートにトラウザーズだなんて珍しいわね。シルキーブラックモスの黒いシャツとよく合ってるわ。」


ちなみに靴も白いブーツにしてある。全身エビルパイソンロードの革製であり、防御力は普段の装備と比べると数十段は落ちる。だが、たまにはこんなのもいいよね。




食堂は広々としており、喧騒など全然聞こえない。あ、そりゃそうか。ここの客層がいいからだな。


「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」


さっきの担当さんだ。


「料理は四人前で頼むよ。もちろん追加料金は払うから。」


「伺ってございますのでご用意できております。すぐお待ちいたしますね」


小学校の教室ほどの部屋に数組がすでに食事を始めている。私達の席は部屋の中央あたりだった。コーちゃんは椅子の上にとぐろを巻き、カムイは椅子を避けてお座りしている。


「どんな料理が来るのかしら。楽しみだわ。」


「そうだね。わくわくするよね。」


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


コーちゃんもカムイも楽しみなんだよな。




「お待たせいたしました。前菜、季節の三種盛りとオークスープでございます」


ほほう。魚のすり身のつくね、醤油で焼いた貝、しいたけの塩焼きかな。それぞれ一口サイズで食べやすいな。オークスープとは……? 豚汁だ……! こりゃ旨い! 今の季節にはちょっと暑い気もするがいい! 味噌汁もいいが豚汁か……たまらんね。


たいの活け作りでございます」


「えっ!? 何これ?」


アレクが驚くのも無理はない。尻尾が少し動いてるし。


「これはタイクーンだね。それを生きたまま料理してあるんだよ。早く食べよう。」


「ガウガウ」


あー、食べさせてくれって? さすがにカムイじゃあ切り身を醤油につけたりできないもんな。わさびもあるしね。ヒイズル最高。


「アレクも食べてごらん? 美味しいよ。このワサビはこっちの醤油に溶かしてもいいし、切り身に乗っけて食べても美味しいんだよね。」


「え、ええ……やってみるわ……」


異国で未知の食べ物に触れる。これこそ旅の醍醐味だよな。うっわ、めっちゃ美味しい! こんなの前世でも食べたことないな。鯛の味が濃厚って感じか? 旨味がすごい! しかも歯応えときたらぷりっぷりだ! あぁ……もうなくなってしまった……


「美味しい……これすごく美味しいわ! これがあのタイクーン……生だとこんな味なのね……!」


「だよね! やっぱりいい宿にしてよかったね!」


「ガウガウ」


今度は醤油なしで食わせろって? それなら自分で食べられるだろうが。カムイの甘えん坊め。まあカムイ達にとっては私が込める魔力も味の内だしね。


ちなみに後造りは丸ごと唐揚げにしてもらったのだが、全てカムイに食べられてしまった。おのれカムイめ……


まあいい。次を楽しみにしておこう……



「この無礼者めがぁ!」


ん? なんだなんだ?

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