第1199話 アレクサンドリーネあるある
「どうですレィディ? 私の名はナルタ・クウコ。ここオワダ随一の
こいつ何言ってんだ? 相手にするには面倒そうなタイプだが、ここは私が。
「悪いな。こいつは俺の最愛の女性だ。他を当たってくんな。」
「ぷっ、君だれ? つりあいってものを考えたらどうだい? その程度の顔でよくもまあ彼女の横に立てるねぇ? 身長だってそんなに高くないし? 着てる服はまあ……センスいいかな。ちょっとここらじゃ見ないファッションだよね? でも冒険者にしちゃあ弱そうだねぇ?」
こいつよく喋るなぁ。
「他当たれって言ってんだ。聴こえなかったのか? その耳は飾りか? ジャラジャラとダセェ飾りつけやがってよ。」
あれはイヤリングなのかピアスなのか、よく分からないが装飾過多だな。男のくせに、とは思わないが悪趣味であることに違いはない。
「やれやれ、このセンスが分からないとは一体どこの田舎者だい? やはり君ごときじゃあ麗しのレィディに相応しくないようだね。今なら見逃してあげるよ? 無傷でここから帰れるし、なんと足代として一万ナラーあげようじゃないか。さあ、明るいうちにお帰り?」
「バカか? 一億でも足りねーよ。その辺にしとけ。それとも何か? 力尽くとでも言う気か?」
「ははっ、君みたいな弱そうな子を相手に力尽くだなんて。この僕がそんな野蛮なことするわけないじゃないか。ただねぇ? ここってウチの関係者が多いからねぇ? 誰かが気を利かせて走るってことぐらいあるかも知れないなぁ? 僕はそんな気全然ないんだよ? さあ、レィディ? 一緒に行きましょう。素晴らしい体験が貴女をお待ちしておりますよ?」
ふん……『走る』ときたか。それで脅してるつもりか?
アレクはちらりと私を見て軽く微笑んだ。そして……
「うふふ、私はね。強い男が好きなの。あなたはどんな強さを持っているのかしら? ぜひ知りたいわ。」
「おお麗しのレィディ。やはり貴女は見る目がおありだ。あのような相応しくない者などより私を選ぶとは。私の力ですか? ふふ、どれから話せばいいか迷ってしまいますね。金、権力は当然ですが、戦ったとしても私は強いですよ? ですがそんな力をひけらかすような野蛮な真似はしませんとも。さあ君、これを持ってお帰り? 彼女はこの僕が幸せにしてあげるから心配いらないさ。」
全然話が通じてない……しかもこいつ上品ぶりやがって直接暴力をふるってこない……困ったな……
木札で一万ナラーか。生意気に床に投げやがった。誰が拾うかよ。
「まあ! そんなにお強いの!? うわぁ見たいわぁ。ねぇよかったら見せてくださらない? 私、強い男が好きなの!」
なるほどね。
「ア、アレク! 僕を捨ててそんな奴に乗り換えると言うのか!? だ、だめだだめだ! 僕は認めないぞ! や、やいお前! し、勝負しろ! アレクが欲しけりゃ僕に勝ってみろ!」
「やれやれ、せっかく無傷でおうちに帰してあげようと思ったのに。この僕の温情も無限ではないんだよ? まあ仕方ないね。ひと勝負すれば君も諦めがつくだろう。所詮彼女につりあう存在ではなかったとね。」
「う、うるさいうるさい! じゃあ一億だ! 僕が勝ったら一億ナラー払え! お前が勝ったらアレクを譲ってやるさ!」
口に出すのも嫌な言葉だな。
「ああっ、そんな! 私に一億ナラーだなんて! だめよ、やめて! いくらあなたでもそんなに払えるわけないわ! 私のために争わないで!」
アレクが絶好調すぎる。
「心配いらないさレィディアレク。一億だろうが十億だろうが私にとっては大した金額じゃない。いや、君のためなら百億ナラーだって惜しくないさ。それに君のためなら僕は強くなれる。見てておくれ。華麗に勝ってみせるからね?」
「じゃ、じゃあ約束だからな! アレクと一億ナラーを賭けて一対一で戦うぞ! ル、ルールを言え!」
「ルール? ふふっ。武器あり魔法ありでいいだろっおおっが……い、今のは……」
「よし分かった。武器あり魔法ありで一対一の勝負だな。ああ、降参は認めよう。金が払えない時は借金でいいよ。じゃあ訓練場へ行こうか。」
「頑張って! 応援してるわ!」
「あ、ああ……任せておくれ。君のために僕は勝ってみせる。ランチはそれからだね。待ってておくれ?」
ふふ、アレクのナイスアシストのおかげでスムーズに話が進んだな。アレクったら私以上に演技派なんだから。ありゃあコロっと騙されても仕方ないかな。思いっきり矛盾した発言してんのに。
さて、一億ナラーか……小判なら千枚、ローランド王国で言えば白金貨一枚だな。もっと吹っかけてもよかったかな。まあいい、一応殺さないようにはしようと思うが、どうなることか。油断せずにいこう。
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