第1151話 フェアウェル村にて
フェアウェル村に到着。そろそろ夕食時だな。腹が減ったぞ。
「村長! ギーゼル村長! やったよ! ニンちゃんが、ニンちゃんがヨランダ村長を!」
「なんと! まことか! カース殿、一体どうやって!?」
「まあまあ。それは後で。まずはここの村長にお土産があるからね。」
やっぱ新村長も心配だったよな。二度手間になるからここの村長も居る場で説明しないとな。
そして夕食時。
「カース殿、聞いたぞ。見事ヨランダ殿の魂を救ったそうだな。」
「ええ。どうにか上手くいきました。これは村長へのお土産です。」
「ぬっ? ふうむ……奇妙な魔力を感じる……禍々しいと言ってもよい……これは?」
「毒と腐敗の神 サマニエルの置き土産です。行き場のない絶望に身を包まれた時に使えとのことです。村長、こんなの好きでしょ?」
「ふっ、嫌いではないの。明らかにカース殿に下賜されたものであろうに。だが、ありがたくいただいておこう。」
おっ、やっぱりか。さすがハイエルフ、イグドラシルに登るだけあって未知の物に興味が抑えきれないんだろ。
それから全てを説明した。婆ちゃんが残した魔石も見せた。
「どうです村長、これどう思います?」
「ふむ……心当たりはある。どうやらヨランダ殿はハイエルフになりかけていたようだな。」
「ハイエルフに、ですか?」
「どうやら彼女はイグドラシルをかなりの所まで登っていたのだろう。それだけでなく自力でエルフの殻を破るところまで来ていたようだ。惜しい者を亡くしたの。」
「つまり、ハイエルフは体内に魔石を持つってことですか?」
「そうだ。儂とて先代の村長がハイエルフでなければ知り得なかったことだがな。」
はぁー、つまりハイエルフは半分魔物の領域に足を突っ込んでるってことか。進化ってどうなってんだ? 意味が分からん。婆ちゃんの魔石か……とても使う気がしないな。やはり墓に納めよう。
「それからギーゼル村長、ここにいるダークエルフはみんな大丈夫だった?」
「ああ、問題なかった。後は他の村に行った使者次第だ。」
またマウントイーターが生まれたら最悪だもんな。やはりクロコの体内に寄生していた説が濃厚かな。まあここからは私が心配することではない。あ、でも一応聞いておこうかな。
「村長、フェアウェル村の村長。ちょっと確認なんですが……」
「うん? なんじゃ?」
「村長ならマウントイーターをどうやって撃退します?」
「ううむ……嫌なことを聞いてくるの。まあ禁術はいくつかあるが、なるべくなら使いたくはないの。無難にいつぞや見せた『
ははーん。さてはこの村長まだ切り札持ってんな? いや、むしろ私の質問が悪かった。これは聞いてはいけない事だな。切り札だもんな。
ともあれ、やっと婆ちゃんのことが解決したことだし今夜は楽しく飲もう。婆ちゃんに献杯。
「ところでさー。この中で誰かヒイズルのこと知ってる?」
「誰も知らぬよ。普通のエルフは村から出ることを嫌うからの。儂の知る限り村を出奔して生きておるのはマルガレータぐらいのものよ。」
「あーそういえばそうでしたね。じゃあ行ってみてからのお楽しみですかね。」
「そなたも落ち着かん男だ。せいぜい無事に帰ってくることだの。」
とりあえず明日はクタナツに帰って、魔力庫内の金を全てギルドの口座に入れて……あ、先に楽園に寄ろう。リリスが元気にしてるか気になるもんな。王都には……寄らなくてもいいか。キアラは王都でピカピカの一年生か……きっと元気にしてるだろうな。寄りたい気持ちはあるが切りがないからな。
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