第1147話 光明
あれ?
あらら?
これって……
もしかして……
あれだけたくさんあった毒が……
わずか一立方メイル程度の固体になっている。
ひょっとして……大成功?
直に触るわけにはいかないが、石や木で叩いてみても、間違いなく固体だ。こうやって毒沼を全部固体にしてしまえば……婆ちゃんは解放されるのではないか?
魔力もそこまで消費していない。これぐらいならもう二回はできそうだ。
できた……
一辺が一メイルの立方体が合計三つ。禍々しく鎮座している。
しかも、かなり毒の水位が下がっている。
立方体一個あたりの元の体積が五百立方体メイルだとして……これを後五回やるだけでいいのか! いける! これなら婆ちゃんをどうにか救える!
やってやる! やってやるぞ!
「カース。上手くいきそうなのね?」
「そうなんだよ! これなら何とかなりそうなんだよ! こんなことならオディ兄にも来てもらえばよかったよ!」
とりあえず今夜はもう休む。しっかり休んで明日からじっくりとやってやるぜ。
翌朝。そこらに放置しておいた立方体に変化なし。溶けたりしてなくてよかった。
さて、やるぜ……
『水操』
『乾燥』
『圧縮』
『水操』
『乾燥』
『圧縮』
たちまち二個の立方体ができた。今日はここまでだ。魔力の消費がすごいもんな。
「すごいわカース! 目に見えて沼の水位が下がってるじゃない!」
「ニンちゃんすごーい! まさかこんな方法があるなんて!」
ぬふふふ。私もびっくりだよ。ちなみに毒の立方体を置いた場所だが、浮かせて確認してみたところどうにもなってなかった。完全に他者と反応しないようだ。これなら触ってもいいかもね。もちろん触る気はないが。
それから私はのんびりと風呂に入り、空を見ていた。世にも危険な山岳地帯。魔物さえ現れなければ美しい山々なんだよなぁ。
風呂か……
毒沼の中身が減った分だけお湯を入れたら薄まったりしないかな。その分だけ解毒が効きやすくなるとか……
やめておこう。せっかく解決できそうな手段が見つかったんだし。予測不可能なことはするまい。
「あー、風呂っていいねー。人間ってこんなこと考えさせたらすごいよねー。」
「ダークエルフにも風呂はあるだろ?」
「あるけどー、こんなに広くないし気持ちよくないよー?」
「カースは凄いんだからね!」
「ガウガウ」
「ピュイピュイ」
おおう、アレクだけでなくカムイやコーちゃんまで同意してる。照れるぜ。
「いつかイグドラシル材で湯船を作りたいもんだね。一体どんな入り心地になるやら。」
「ニンちゃんめちゃくちゃだー。そんなの罰当たりだよー。」
「さすがカースね!」
ちなみに私とアレクは裸、クロミには湯浴み着を着せている。その条件で一緒に入ることを許しているんだから。
なお、アレクとは二週間以上営みをしていない。アレクには我慢をさせて悪いがそれどころではないし、クロミがずっと一緒だもんな。でも、やっと先が見えたんだ。もう少し待って欲しい……ごめんよアレク。という目で見つめながらアレクの肩を抱く。
すると、今は何とか我慢するけど早く構ってくれないと何をするか分からないわよ? という目で見つめ返してきた。可愛いやつめ。
それから数日後。ついに沼の底が見えた。婆ちゃんは変わらず沼の中央で立ったまま苦痛の悲鳴をあげている。試しに婆ちゃんに『浮身』を使ってみたが、やはりビクともしない。つまり、まだ終わったわけではないということか。
『解毒』
土に染み込んだ毒を浄化するかのように魔法をかける。いける! ざっと四平方メイルがきれいになったようだ。だが、さすがに解毒は魔力を食うな……
ここ全体を解毒するにはまだまだかかりそうだ。まあいい。ここまでやったんだ。じっくりと確実に進めていこう。ごめんな、婆ちゃん……もう少しだけ、待っててくれよ。
さらに数日後。
とうとう婆ちゃんの周囲数メイル以外の全てを解毒した。それから三日ほど挟み、魔力が全て回復するのを待った。手元に残ったネクタールはおよそ一口、魔王ポーションはもうない。
いよいよ大詰めだ……
婆ちゃん……もうすぐだからな……
やるぜ!
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