第863話 散財ショッピング

もうデメテの日になってしまった。前世で言えば土曜日。昨日の夜はそれはもう燃えたもんな。最高だった。今日は何をしようかな。アレクの寝顔を見ながらそんなことを考えている。


そうだ! ドレスを買いに行こう! 正確には注文を出すだけだが。アルテミスの首飾りに合わせたドレスを発注するんだ! きっと最高に美しいアレクを見ることができる。そうしよう!


「う……ん、カース……おはよう……」


「おはよ。かわいい寝顔だったよ。」


いつものことだが、昨夜の乱れぶりが嘘のような天使の寝顔だ。


「今日さ、ドレスを買いに行こうよ。この前は結局道場に行っちゃったじゃない?」


「そうね。いつもカースにばかりお金を使わせて悪いけど。でもカースは私がきれいな服を着ると嬉しいのよね?」


「もちろんだよ。あ、下着も買おうね。ケイダスコットンやシルキーブラックモスを使ってさ。」


「もうカースったら。ドレスより遥かに高い下着なんて……贅沢なんだから。」


私の下着や靴下は全てケイダスコットンだからな。南の大陸産高級コットンを惜しげもなく使ってるぜ。


さあ、マーリンの用意してくれた昼食を食べたら出かけよう。





やって来た店はもちろんベイツメント。辺境伯家の御用も担う一流店だ。


「これはマーティン様、アレクサンドル様。ようこそお越しくださいました」


「どーも。今日はあれこれ注文に来ました。まずはアレクにドレスを。」


「はい。かしこまりました。それではまず寸法を頂戴いたします。アレクサンドル様、こちらへどうぞ」


「ええ、お願いね。」


その間にイメージを伝える。私には詳しく伝えるほどの知識はない。だから、ざっくりイメージだけ伝えて後はお任せでいいのだ。

まずはドレスを四着ほど頼んだ。


では次。


今度は普段着だ。キャミソールにチューブトップ。これを三着ずつ、下品に仕上げてくれと頼んだ。ただし、素材はシルキーブラックモスだ。

そしてミニスカート。現在アレクはミニスカートを一着しか持っていない。だから三着追加だ。デザインはお任せだが、長さは指定した。普通のミニスカートでさえ貴族が穿くには下品なのに、そこからさらに短くしてもらった。ふふふ。

ちなみにスカートの素材としてワイバーンを渡しておいた。


そして次。


もちろん下着だ。こちらもデザインはお任せだが、素材とベースの色は指定した。なるべく良質のケイダスコットンに黒、赤、白だ。このようなざっくりした注文からどのような品が生まれるのか、非常に楽しみだ。


「終わったわよ。」


「こっちも注文が終わったところだよ。楽しみにしておいてね。」


最後に自分のやつだ。


普通に靴下、パンツ、Tシャツを三つずつ。いつものやつも全然ヘタレてないけど、これ系の予備はいくらあってもいい。

『防汚』『汗排出』『温度調節』『サイズ調節』

ほぼ全部乗せだ。さすがに『防刃』や『防炎』はいらない。まったく、魔法って便利でいいよな。値段は上がりまくるけど。


「いつもありがとうございます。本日のお勘定が金貨二千五百三十六枚でございます」


「カードで。」


「はい、ありがとうございます。納品は一、二ヶ月程度かかるかと思います。でき次第お屋敷にご連絡いたします」


「それでお願いします。」


「ありがとう。楽しみにしてるわ。」


こうして店員達に見送られベイツメントを後にした私達。いやぁいい買い物をしたものだ。服だけで楽園の豪邸の半分の値段。イカれてるな。


「カース……いつもありがとう……すごい金額を使わせてしまったわ。」


「いやいや、いいんだよ。色んなアレクを見たいからさ。あ、もちろん一番見たいのは裸のアレクだからね。」


「バカ……昼間から……嬉しい……」


照れるアレクは最高にかわいい。今すぐ帰りたいところだが、それは夜のお楽しみだ。デートを続行しよう。


「そういえば前に話したドラゴンの魔石だけどさ。魔法学校で何か噂とかない?」


例の盗まれたやつだ。当然アレクにも話してある。


「ないわ。さすがにドラゴンほどの魔石が話題に出ると盛り上がったのだけれど。」


「あーやっぱりダメかー。もうフランティアから持ち出されてるよね。逃げられたか。」


フランティア中のギルドは連携しているから情報は共有することができる。しかしそれは同じ貴族の領内に限る。フランティアから外に出られたら、手が出せない。一応フランティアから他の貴族領の本店ギルドに通達は出してもらっているが、まあダメだろう。

あちらにしてみれば、自分の所でドラゴンの魔石を手に入れるチャンスだし、そもそも支店ギルドには中心となる本店ギルドから通達がされてないだろうからな。


ちなみに本店ギルド、支店ギルドとは私が勝手に呼んでるだけだ。フランティアで言うところの領都のギルドとクタナツギルドの関係のようなものだ。クタナツギルドは名目上は支店だが、実際にはほとんど独立している。最近はソルサリエにもギルドができたしね。


それはさておきデートだ。どこに行こうかなー。


「よし、賭場に行こうよ。」


「ええ、いいわよ。」


賭場には悪い奴らが多そうというだけの理由だけど。実際には見た目が悪い奴ぐらいしか居そうにないよな。後はダミネイト一家とかかな。

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