第680話 精霊の祝福

コーちゃんは天空の精霊と話しているようだ。

ピュイピュイ言ってるけど私には伝わらない。少し悲しいぞ。

天空の精霊の返事だけは聴こえる。ふむふむ言ってるな。


「ピュイピュイ」


もういいの? よーし、じゃあ帰ろうか。


『魔力が増えたらまた来るがいい……』


「どーも、お邪魔しました。」


「私まで祝福をいただけるなんて……こんなにあっさり……」


「カース君って精霊と友達なの……?」


「どうだろ? 言ってみるものだよね。よかったね!」


魔力が高くても効く毒がある以上備えは大事だよな。これなら本物の『死汚危神だいおきしん』以外は助かりそうだ。私の『解毒』が炸裂するぜ。


ところで、もうすぐ私達は十五歳。そろそろ魔力の伸びも止まるだろう。この前まで伸びの心配するどころじゃなかったもんな。また来るかどうかなんて気にしなくていいよな。




ゼマティス家の庭に着陸。さて伯母様に一声かけてから騎士団本部に行くか。


「伯母様。やはり教団は偽勇者や魔蠍と繋がってました。今から王国騎士団本部に届けてきます。」


「あら? さっき届けに行ったんじゃなかったの?」


「ええ、証拠もなしに届けるわけにはいかなかったもので。自白させてきました。間違いなく教団は偽勇者達と関わりがありましたよ。」


「また……カース君は……さっきは大した証拠もなしに連行したのね? 全く……馬車で行くといいわよ。」


「ありがとうございます。行ってきます。」


いやー、自白してくれて助かった。もしこいつが完全に潔白だったら大変だったな。よし行こう。




馬車で騎士団本部に到着。おじいちゃんと一緒なら騎士長の所までフリーパスなんだが、そうもいかないから受付で。


「こんにちは。僕はカース・ド・マーティン。騎士長様に面会をお願いできませんか? 偽勇者や魔蠍に関する話です。」


「ま、まお、いやすまないが、いきなり来られても無理だ。どんな話だい?」


「聖白絶神教団と魔蠍、偽勇者が関わっていた証人を捕まえてきました。この場で引き渡してもいいですか?」


「何だと……ちょ、ちょっと待ってくれ!」


受付の騎士さんは慌てて奥に引っ込んでしまった。まあいきなり来て騎士長なんて普通会えないよな。



五分ぐらいして現れたのは、中堅の騎士って感じだった。三十代後半と見た。


「私は王国騎士団第三部隊の隊長フュイーテ・ド・プルーイエ。そいつが情報を持っているんだな? よくやった。後日褒美があるだろう。」


「どうも。カース・ド・マーティンです。大事な証人です。くれぐれも殺されないように気をつけてください。」


以前王城内で使者に化けて私達を狙った奴はあっさり死んだらしいし。


「言われるまでもない。おい、連れて行け!」

「はっ!」


「では騎士長様によろしくお伝えください。」


「ふん、祖父の七光があるからと調子に乗らぬことだ。騎士長もじきに引退だ。せいぜい褒美を楽しみにしておくがいい。」


何だこいつ?

私は功労者じゃないのか?

停滞していた捜査が一気に進むんだぞ?

まあいいや。どうせ明日は王宮に行くんだし。直接言っておいてやろう。


あっ、姉上にも伝えておかないと。いや待てよ? このことを知った姉上が単身教団に殴り込んだりしないよな?

別にいいか。それはそれで姉上の選択だし。よし、教えに行こう。




「と、言うわけで聖白絶神教団と偽勇者、そして魔蠍には関係があるみたいなんだよ。詳しくは騎士団の捜査次第かな。」


「へぇ、アンタよくそこまで調べられたわね。見直したわ。」


「いやー、司教って奴が自白してくれてさ。まさかだよね! ただまあ下っ端みたいだったし捜査が進むかどうかは微妙だよね。」


これがクタナツ騎士団なら、今ごろ教団にガサが入ってる頃だろう。でも、何も知らない一般信者の方が多いんだろうな。そいつらまで相手にしなければならないのは大変そうだ。頑張って欲しいものだ。


「あっ、そうだ。これ、兄上と姉上にプレゼント。結婚祝いってことで。」


ドラゴンゾンビの牙を二本ほど渡しておく。この二人なら有用な使い方をすることだろう。


「アンタねぇ……その価値分かってんの?」


知るわけないだろ。最高の短剣ができるのではないか?


「さあ、どうかな? ほとんど王家に献上するんだから少しぐらい誰かにあげたって構いはしないよ。」


「ホントにアンタは大バカな弟ね。ありがたく貰っておくわ。ありがとう。」


「どういたしまして。じゃあ、兄上にもよろしくね。」


「もう帰るの? ゆっくりして行きなさいよ。」


「それもそうだね。」


結局みんなで遅めの昼食となり、コーちゃんはお酒を飲んでご機嫌だった。この分なら姉上が教団に殴り込むこともないのかな? 平和が一番だよな。


午後は何して遊ぼうか?

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