第641話 サンドラと三次方程式
フランティア領都への帰りを考えたら王都に滞在できるのはもう二、三日ぐらいだろうか。特にもう用はないよな。
あ、忘れてた。
サンドラちゃんに手紙を届けないと。
魔法学院を出た私達。今度は中等学校だ。サンドラちゃんはいるかな。
例によってアレクが部屋まで行ってくれる。まあ手紙を持ってるのもアレクなんだけど。
「いなかったわ。例の教授の所らしいわ。」
「じゃあ行ってみようか。」
マジかよ。新年早々、しかもまだ昼にもなってない時間から研究でもしてんのか?
教授の名前は……確か……
あ、あそこか。そう、クリュヴェイエ教授だ。
「失礼しまーす。」
「失礼します。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
入室の挨拶ができる精霊に狼。いい子達だ。
「だーかーらー! 二乗して-1になる数なんてないんですから! 便宜上iを使えばいいじゃないですか!」
「無いものに便宜上もクソもないだろう!? だって存在しないんだから!?」
「存在しないってことを証明するのがどれだけ大変だと思ってんですか! だったら一旦iと置いて先に進めばいいでしょうが!」
まだ昼前だってのに。いつも暑苦しい二人だなあ。
『落雷』
「ぎょわぁー!」
「きゃう」
アレクの雷が落ちた。押しかけておいて攻撃するなんて強盗か。
「カース君、アレックスちゃん。」
「やあサンドラちゃん。戻ってきたよ。」
「カースが心配かけたわね。」
「おかえり、って言うのも変だけどおかえり。エリザベスお姉さんのことは聞いたわ。無事どころか優勝したわね。」
「おかげさまで。一命をとりとめるどころか強くなっちゃったよ。」
まあ優勝できたのは二女がヌルい戦いをしたせいでもあるかな。二女の奴が本気で兄上に勝とうと装備やら準備を整えていたら勝ち目はあったものを。
それを普段着などとナメた服装で挑みやがるから。あ、普段着で戦うのは私もか。
「ちょうどだからお昼にしない? セルジュ君達から手紙も預かってるわよ。」
「あら、それはありがとう。じゃあ何か作るわ。待っててくれる?」
「ありがと。ご馳走になるよ。」
「手伝うわ。材料も出すわね。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
教授を寝かせたまま二人は料理を始めた。ワイワイキャッキャとお喋りクッキングだ。私はその間、サンドラちゃんと教授が議論していた白板を見てみる。
iの考えは私が教えておいたが、そこから先は無理だった。簡単な三次方程式ぐらいしか教えられなかった。どうもサンドラちゃんは三次方程式の解の公式を作ろうとしているようだ。天才かよ。ヒントなんか出せないが、頑張って欲しいものだ。
二人の料理は美味しかった。具が多い焼き飯と言うべきだろうか。コーちゃんもカムイも喜んで食べていた。
昼食後のティータイム。サンドラちゃんから気になる話が出てきた。
教授の講演会を邪魔した『
そりゃ頭から布を被っていれば中身なんか分からんよな。あれ系の宗教組織ってのはロクなことをしないってのが定番だが、どうなることやら。
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