第444話

トールの日。今日は東側の石畳を敷設しよう。道はそれで終わりだ。


昼までに終了。上空から見てみると、東西南北に十字を描く石畳の道ができていた。道の両端がギザギザしていることなど、上からだと少しも気にならないな。我ながらいい出来だと思う。


さあ、いよいよ難問だ。排水をどうしよう。家から出てくる排水はおそらく心配いらないが、雨後の排水問題を解決しないと留守中に家が水没しかねない。


解決策は……

一、そもそも家が城壁より高ければ水没しない。

二、城壁の下部に何ヶ所も水抜き穴を開ける。

三、完璧な排水システムを構築する。


よし、一と二を併用してみよう。

当初の予定通り、道沿いに排水溝を作るのは変更なし。その先に穴を開けて堀に排水しよう。それ以外にも数ヶ所ほど穴を開けて排水できるようにしておけば水没する可能性は減る。

その上で基礎の高さを十五メイルまで上げればまさに天守閣のごとき豪邸! 水没は防げる。あとはルフロックのような巨大な魔物に目をつけられませんように……祈るのみだ。


ちなみに城壁もまだまだ高くする! 今度は自家製コンクリートを使わずに本当の石垣を組んでもう十メイルぐらい上げれば完成としよう。『返し』についてはどうしよう。なくてもいいかな。




では、排水溝を掘っていこう。まずは南から。幅五十センチ、長さは一キロル。これを南の街道の東側に掘り進むわけだが……

一キロル先で一メイル下がるような角度で掘りたい、どうしたらいいんだ!


関数電卓があればすぐなんだが……

面倒だが手で計算してみる、と……百分の六度!

できるかー! 一度ですら計れないってのに!


あ、目分量で分度器を作ってみようか。円は作れるし、半円も作れる。

三十度や四十五度、九十度だって計るのは難しくない。それらを大きく作って二等分、三等分すれば五度、十度も計れるだろう。それを繰り返して百分の六度を求めれば……


やってやれっかー!!

やめやめ!

外注しよ。今だって草原の街を作ってんだから専門家ぐらいいるだろう。


今日のところは溝を掘るだけにしよう。深さなど気にせずに幅だけ五十センチをキープで。


『水斬』


二本並列で水斬を放つ。

放ってから気付いた。深さを気にせずやったものだから、本当に深く削ってしまっていた。これはさすがに無駄すぎる。そして今頃思いついてしまった。深さを一定に保つには、電動ノコギリのように刃を回転させればよいということに!

つまり、水斬を円盤状に回転させればよかったのだ。魔法を回転させるのは泥沼の魔法で慣れている。早速やってみよう。




すごい……

スイスイ切れる。切れた所にブルドーザーのバケットのように風壁を滑らせてやると、たちまち見事な排水溝の出来上がりだ。やはり魔法の使い方はアイデア次第なのか。それにしても恐ろしい魔法を開発してしまった。硬い魔物もスパッと切れるのではないだろうか。『水鋸みずのこ』と名付けよう。これをミスリルの円盤で再現したら何でも切れたりしないだろうか。それこそエルダーエボニーエントすらも。


まあいいや。排水溝が城壁まで到達したので、次は穴を開けよう。溝の深さは一メイルなので、その深さには岩もコンクリもない。固く押し潰された土があるのみだ。ここからは斜め下に向かって水のドリル魔法、仮に『水錐みなきり』と名付けておこう。直径二十センチぐらいの穴が堀まで開通した。


このような配管や排水溝は途中で大きさが変わったり、曲がったりすると詰まりやすい。ここはどうなるのだろう。落ち葉なんかないから土砂ぐらいしか流れないはずだが……


一応堀と同じように素焼きにしておこう。少しは違うのではないだろうか。


『燎原の火』


今日は念入りに、低温で十分焼き、高温で三十分焼いてみた。表面はザラザラしているが堀よりはまだマシだろう。どうやったらツルツルに焼き上げることができるのだろうか。


夕暮れまでまだ時間はある。排水溝に蓋をしておこう。石畳用に切った岩はまだいくらでもある。こいつを無造作に上に被せればいいだろう。道幅が広がったようにも見えるかな。水が流れ込まなくなると困るから間隔を空けて置いていこう。グレーチングがあればいいのに。




そしてみんなで夕食。働いて食べる飯は美味しいぜ。その後は昨夜同様に心眼の稽古、そして露天風呂。コーちゃんと違ってカムイはお湯が好きなようだ。キレイに洗ってやるぞー。白い毛並みが絹のようだ。そしてコーちゃんの鱗は濡れた宝石のようだ。私は本当に恵まれてるなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る