第300話
そしてデメテの日、早朝。
私とスパラッシュさんはノワールフォレストの森に向けて出発した。
直線距離でおよそ八百から九百キロル。最近の私なら二時間と少しで到着できる。
そして未知の領域で怖いので高度も高めで行く。ちなみに魔切は着いてから使う予定だ。
「普通トレントを討伐する場合は枝や魔法に警戒しとくんでさぁ。しかし坊ちゃんの場合は近寄らずに一気にズバッとやれそうですぜ。」
「そうだね。そうしようと思って準備したんだよね。上手くいくといいけど。」
ヘルデザ砂漠上空を通過。
おおっ、スティクス湖がまだ残ってる!
帰りに水を補給してあげよう。
それからまたしばらく北上する。
「坊ちゃん、そろそろノワールフォレストの森ですぜ。この高さなら大丈夫たぁ思いやすが一応警戒しといてくだせぇ。」
「オッケー。隠形を強めにしとくよ。」
下はジャングルだ。トビクラーを狩るのに灰にした森とは比べ物にならない密度、歩いたら容易く迷いそうだ。
そして木々の高低差が激しい。時々中ボスとでも言わんばかりに太く高い木がそびえ立っている。
「このまま行ってくだせぇ。目標は森の北東部でさぁ。」
下がやはり怖いのでさらに高度を上げる。こんな森に落ちたらきっと生き残れない。フェルナンド先生はこんな所を一人で歩いていたのか……
何回か空を飛ぶ魔物が下に見えた。やたら大きい……鳥なのか?
「スパラッシュさん、さっき飛んでた鳥の魔物は何?」
「ありゃあルフロックでさぁ……卵ですら二十メイルあるとか……トロルやオーガを雛の餌にするらしいですぜ……」
何だそれ!? 怖すぎる。さっきの鳥は軽く百メイルはあった。上も地獄、下も地獄かよ!
「そろそろですぜ。準備はどうしやす?」
「一旦降りよう。標的を確認してからにするよ。」
周りを警戒しながら高度を下げる。樹木の密度が高いので、枝をバキバキ折りながらの着陸だ。枝を丸焼きにしてもよかったのだが、他の魔物が来たら怖いので使えないのだ。
「あれですぜ。情報通りでさぁ。ここら一帯マギトレントの縄張りらしいですぜ。」
虫がブンブン飛ぶジャングルだが、地表付近は植物が少ない。きっとマギトレントに栄養を取られまくってんだろうな。動きやすくて助かる。
パッと見た範囲にざっと四、五体のマギトレントが見える。でかい!
直径五メイルぐらいか。高さはよく分からない。枝葉が激しく繁っているので、見えないのだ。近付きさえしなければ危険はないのだろう。いけそうだな。
一度上空へ戻る。
「だいたい分かったよ。上手くできると思う。じゃあ準備するね。」
「へい! 気張ってくだせぇ!」
それから三十分かけて『魔切』をミスリルギロチンに纏わせる。
隠形と浮身を使いながらなので大変だ。
「よし! いくよ!」
「へい!」
さっと地表へ降りて『金操』
多分時速四百キロル以上の速度で直線上の二体をまとめて斬る。返すギロチンで受け口を入れる。三回目で受け口の反対側を斬りマギトレント二体が倒れ……
倒れない!?
あまりにも木々の密度が高いため他のトレントの枝に引っかかって倒れられないようだ。
地表からだととてもそうは見えないのに。
くそ、面倒だが枝を刎ねるしかないか……
いや、見える限り上方の幹をぶった切ってしまおう。そこより上は枝が多くきっと時間がかかるはずだ。
地上からざっと二十メイル地点の幹を切断する。受け口を作らないので中々切れない。色んな方向からギロチンをぶつけてようやく切れた。
同じことをもう一回、そして収納。
急いで上昇する。
ここまで二十分以上かかってしまった。
「ふう、参ったね。全然倒れてくれないんだね。やっぱり計算通りにはいかないもんだね。休憩しようか。」
コーちゃんもお腹空いたんじゃないかな。
この子は本当に良くできた子だ。学校には付いて来るが一度たりとも声を出さない。可愛くて仕方ないぜ。
「やっぱりコーちゃんは可愛いでさぁね。弁当にしやすかい?」
「うん。食べながら少し様子を見ようか。いきなり根元を斬ろうとしたのは甘かったみたいだし。」
こうして三人で同じ弁当を食べていた。するといきなりコーちゃんが、ギャワワギャワワと鳴き出した。何事だ!?
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