第295話

待つこと二週間、ミスリルのナイフと塊を手に入れた。金貨にして三百三十枚!

これをボードとギロチンに加工するのだ。加工もお願いしてもよかったのだが、それをすると金貨五百枚以上かかるそうなので、自分を信じて自力でやってみることにしたのだが……


何てこった……

鉄をも溶かす私の炎が全く通じない……

せいぜい鉄の二倍ぐらいの熱でいけるかと思っていたら、全然そんなことはなかった……

まさか六倍丈夫だから融点も六倍だとでも言うのか? ならば九千度?

まさか!? そんなはずがない!

しかし、このままでは二つに分けることすらできない。


困った時は母上だ。


よく知らないそうだが、ヒントは貰った。

ミスリルを加工する職人は数人が数日がかりで魔力を何かに溜めてから作業に入るらしい。外部から魔法使いを呼ぶこともあるらしい。つまり魔力を大量に使用する?


汚銀に魔力を込める要領でミスリルに魔力を込めてみる。もちろん首輪は外している。

魔力は通っているが、溜まっていく様子はない。つまり魔力の通りがいいってことが分かる。


しかしこのままだと垂れ流しと変わりない。この状態で加工するのか?

やってみよう。


すでに『魔切』はミスリルナイフにかけてある。それでも先ほどは引っ掻き傷ぐらいしかつけられなかった。同じミスリルなのに……


しかし、魔力をガンガンに通した今の状態なら少しは刃が通る! ならばここで温度も上げてみる!

使った魔力の感じだと四千度は超えているはずだ。なのに溶ける気配が全くない。いくら魔力の向きを制御してると言っても熱くなってきた。また母上の助けが必要だろうか……


いや、それは今ではない。もう少しやってみてからだ。さらに魔力を込めて温度を上げる。助けを求めるのはせめて半分に分けてからだ。


『金操』も併用しつつ温度も上げる。

四千五百度ぐらい行ったのだろうか……


ナイフがするりと通る。来た、バター状態だ。溶け出すことはないが常温のバター程度には柔らかくなった。このまま半分に切り分ける……


できた!

シャツの袖口が焦げてしまっている。よく手が無事だったな……


この調子で半分は放置してもう半分をボードに加工する。


それから金操と圧縮魔法を併用して薄く延ばす。

残りの魔力がやばい。ミスリルは金操に使う魔力が鉄よりだいぶ少なくて済むのに使いまくってしまったからな。


厚さ二センチまで圧縮できた。後は形成、長方形に加工する……


できた……

だいたい畳サイズだ。ハニカム構造なんかにする余裕はない。ただのミスリルの板だ。

これは盾にも使えそうだな。銀ボードや鉄ボードより薄くそして丈夫で軽い。七キロムってとこかな、素晴らしい! これでスイスイ動けるな。


魔力はほとんど空になってしまった。久々にギリギリだ。

でもこれで感じは掴んだ。

近いうちにミスリルのギロチンも作れそうだ。


ちなみに手が無事だと思ったのは大きな勘違いだった。集中力してて気付かなかったのだが、大火傷をしていた。手の皮が両面とも溶けていたのだ。ミスリルナイフを手から剥がすのに苦労した。なぜ痛くなかったのやら。すぐに高級ポーションを飲んだので問題はなかったが。次からはトビクラーのコートを着てやるべきだな。


ならばいずれ耐火手袋が必要になるのだろうか?

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