第236話
「いらっしゃーい。」
相変わらずやる気のなさそうな声だ。
「こんにちは。相談と注文に来ました。」
「あらー貴族のお坊ちゃんじゃないですかー。お金持ちは大歓迎ですよー。」
「サウザンドミヅチの幼生の魔石を手に入れたんですが、それなら温度調節機能を付けるのにバッチリでしょうか?」
無視して話を進めてみた。
「できるよー。でもせっかくサウザンドミヅチなんだから温度調節なんかに使うのは勿体なくないー?」
「では何か有効な使い道があるんですか?」
「あるよー。自動修復機能が付けられるよー。魔石と金貨二十枚いただくけどねー。」
「それってどれか一着だけですか?」
「そうよー。すっごく贅沢なのねー。」
自動修復機能か……
かなり気になる!
となるとコートに付けるべきか……いや!
「以前、素材の段階だったら丸ごと付けられるって話がありましたが、自動修復機能もそうなんですか?」
「そうよー。だから服を作る前に魔石があるとかなりお得なのねー。」
「では、サウザンドミヅチの皮がたっぷり手に入りますので、それにお願いします。魔石があれば同時にサイズ調節機能や温度調節機能も付けられますか?」
「できるよー。十も二十も機能を付けるのは無理だけどー、三つ四つなら大丈夫なのねー。」
「ではまた来週末ぐらいに来ますね。ご意見ありがとうございます。」
「お待ちしてますねー。」
自動修復か……
そもそも破れることなどなさそうだが、防御が固まるな。楽しみだ。
「ところで牙ってやっぱり武器屋とかで加工してもらうの?」
「武器屋というか鍛冶屋さんね。武器屋も経営してたりはするけど。私も来週末が楽しみだわ。カース、本当にいつもありがとう。私、貰ってばかりで……」
「そう? じゃあ今度空でバイオリン弾いてよ。領都へ行く道中とかさ。最高に贅沢だよ。」
「ふふ、そうね。一生懸命弾くわ。明日は気をつけてね。ちゃんと帰って来るのよ?」
「うん、気をつけるよ。じゃあまた学校でね。ヴァルの日とアグニの日は休むかも知れないけど。」
「無事ならそれでいいわよ。じゃあね。」
アレクサンドル家まで送ってきたのだが、珍しく夕食を食べて行くよう誘われなかった。食べて行く気はなかったが、誘われないとそれはそれで寂しいな。
さて、明日に備えて食べて寝よう。
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