第228話

アレクサンドル家に着いた頃には豪華な昼食が用意されていた。


「二人ともおかえりなさい。お昼ができているわよ。」


「お邪魔します。ご馳走になります。」


「母上! カースったらすごいのよ! トビクラーの皮で私にコートを作ってくれるの!」


「まあまあそんな凄い物を貰ってしまってどうしましょう。式はいつがいいのかしら。」


話が飛び過ぎだ。どこから式が出てきた!?

アレクは顔を真っ赤にして黙り込んでいる。私達はまだ十代ですらないのに。


それより昼ご飯だ。

料理名は分からないがいい匂いが堪らない。どれもこれも美味しそうだ。


「おいしい! これは何ですか!?」


「それはシーオークのステーキよ。美味しい所を厳選したらしいわ。」


アレクママが答えてくれた。


しかもこの間の魚醤とラディッシュを上手く使っている。さすがだ。これがプロの技か。


そしてツナマグロだが、表面は軽く炙ってあるが中は生、これはレアと言うよりタタキだろうか?


「このツナマグロも美味しいですね。タタキですか? 初めて食べました。」


「そうなの? タタキ? 私も初めてだわ。焼いてあるのと生なのと、味や食感の変化が楽しいわね。美味しいわ。」


アレクも初めてなのか。


「私だって初めてよ。タタキって言うのね。初耳だわ。とても美味しいわね。マトレシアも凄いけどツナマグロの鮮度がいいからだと思うわ。さすがカース君ね。」


「いえいえ、漁師さんにすぐ解体して貰ったからですよ。」


「カースの魔力庫は凄いんだから。」


やはりアレクがドヤ顔だ。

ちなみに弟君は黙々と食べている。


それからこの皿は……トビクラーの砂肝かな?


「いやー、どれもこれも美味しいよね。昼から何て贅沢をしてるんだろう。」


「カースのおかげよ。いつもありがとう。マトレシアも凄いけど。」


そうしてお腹いっぱいになった私はアレクサンドル家を辞した。

アレクからは「お昼寝して行きなさいよ」と誘われたが、寝たら起きなさそうだったのでやめておいた。

帰って錬魔循環をみっちりやりたいのだ。


そして、夕方。

ふふ、キアラの喜ぶ顔が楽しみだ。

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