第223話

慌ただしい四月が終わり、季節は五月。

もうすぐキアラが四歳になる。

ついこの前生まれたと思ったらもう四歳。学校に入るまで後二年。この頃の私は何をしていたのだろうか? 錬魔循環とかだったかな?


今日はデメテの日、私は何かキアラに美味しい物を食べさせてあげたいとタティーシャ村に来ている。


「こんにちはツウォーさん。カースです。またお願いできますか?」


「おお、お前か。よく来たな。いいぞ、行こうか。」


いい時に来たらしい。

早速ツウォーさんを乗せて前回の猟場の近くまで移動する。


そして潜ってもらうこと一時間。


やはり三袋!

ぎっしりだ。

今回はナマコも入っているようだ。サービスだろうか。


「ありがとうございます! これは何てやつですか?」


「ああ、こいつはカイソと言う。見た目は気持ち悪いが美味いぞ。」


前回同様金貨二枚を払いカイソの料理方法を教えてもらう。

捌くのはできそうだが、臭み取りが面倒だな。まあマリーに頼めば何とかなるだろう。


「この辺りの海ではどんな魔物が出ますかね? 美味しい魔物とか知りませんか?」


「うーん魔物かぁ、たまに釣れちまう魔物だとサファギンの小さい奴がいるが食べられないしなぁ。村長に聞いてみるか。」


もしかして海の魔物はまずいのか?

オークやコカトリスは美味しいのに。


「おーい村長いるかー?」


「なんじゃまた来客、おおこの前の。よく来たな。今日はどうした? 魚なら少しあるぞ。」


「こんにちは。魚も欲しいんですが、美味しい魔物について教えて欲しくてきました。」


「うーむ難しい質問じゃのぅ。聞いた話じゃとセイレーンやネイレスなど上半身が人間に近いのは美味いらしいのぉ。それからシーサーペントや大海蛇あたりか。海で会ったら生きて帰れん魔物ばかりじゃからの。そうそう食べられるものでもないわい。」


「なるほど、ちなみにこの辺りにはどんな魔物が出ます?」


「シーサーペントに比べたら小物ばかりじゃよ。たまに海から上陸してくるゴブリンもいるがの。そんな小物でも海中で出会ってしまうと命取りじゃ。人間なぞ一飲みじゃわい。」


ん? 海にゴブリンがいるのか?


「それは美味しいですか?」


「シーオークは美味いぞ。年に二、三回ぐらいは釣れることもある。オークキング並みの旨さだと言う者もいるぐらいじゃ。」


シーオーク? 想像がつかない。海のオークなのか? そして気になるのがオークキング。クイーンオークと何か関係あるのか?


「釣れるってことは時期とか餌とか何かあるんですか?」


「分からんのぉ。春に釣れることもあれば秋にも釣れる。虫を餌にして釣れることもあれば他の魚を餌にしたこともある。まあ運次第じゃろうの。」


「なるほど。ありがとうございます。釣り糸かロープをお借りできませんか? 少し挑戦してみたいと思いまして。」


「ええぞ。切れたら弁償してくれたらええ。銅貨十枚じゃ。」


村長は太めの釣り糸を貸してくれた。長さは三十メイルぐらいだろうか。

釣り針はついてない。これは自前で用意するからだ。


では今生初の釣りに挑戦だ。

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