第214話
「と言う訳でこいつは殺し屋みたいなんだよね。」
「カースもついに殺し屋に狙われるようになったのね。偉いわ。」
「あら、そう? こいつどうしようか? 一応隠し事ができない状態にしてあるけど、自殺とかされたら困るから母上が頼りなんだよね。」
そして私は奴を地上に下ろし風壁を解く。
生きてるよな?
「誰に頼まれた?」
「上司ぃ」
「そいつの名前は?」
「上司よぉ」
やっぱりだめだな。面倒になってきた。
後は騎士団に引き渡しだな。
「騎士団に引き渡すから何でも正直に話せよ。そして逃げるなよ。約束できるか?」
「できないわぁカース様にしか言いたくないのぉ。」
そして奴を騎士団に引き渡す。
いくら拒絶しても騎士団の尋問魔法はスルーできまい。
それにしてもイジメの一環かと思ったらいきなり殺し屋とは……さすがに予想だにしなかったな。
近付かないでよかった。
しかしあんな奴に殺しなんてできるのか?
あれだけ喋ってる暇があるなら動けって感じだが。
母上と共にジェーンを連れて騎士団詰所に来た。そして事情を話し引き渡した。
「現在は僕に隠し事をしない契約魔法をかけてあります。解いた方がいいですか?」
「いや、このままでいいよ。やはり大した情報は持ってないよね。組織的な殺し屋ってみんなこうなんだよね。ご協力感謝します」
引き渡しはあっさりと済み、再び自宅。
「さっきの騎士さんが言ってたのはどういうこと?」
「それはね、殺し屋にもいくつか種類があるの。一番多いのがさっきみたいな組織に飼われてるタイプ。普通殺し屋は使い捨てだから仕事前にターゲット以外の記憶を消されるの。それって成功率も下がるんだけど捨て値で買われた奴隷や誘拐された人間だから気にせずバンバン成功するまで送り込まれるのね。
次に多いのが副業で殺し屋をやるタイプ。闇ギルドの人間と付き合いのある冒険者がやりがちね。冒険者であることを活かしてターゲットが魔境にいる時なんかを狙うわね。
最後はプロ。
自分の腕だけで生きている厄介な連中よ。
殺し屋組織、暗殺ギルドの強さの目安は何人のプロと連絡をとれるか、プロを動かせるかによるらしいわ。
プロだけあってかなりお金がかかるらしいわね。カース相手にプロが動くこともないとは思うけど、油断しないようにね。」
「だからさっきの奴は手掛かりになりそうにないんだね。」
蟻に暗殺ギルド、根絶すべき奴らがまた増えてしまった。
「そういうこと。騎士団も大変よね。今から身元を調べたりするのよ。身元が判明しても再び奴隷落ちするのは確定だけど。たぶん草原の開拓に従事するんじゃないかしら。」
「誘拐されたかも知れないのにそうなるの?」
「そうなの。一度でも闇ギルドや暗殺ギルドと関わった者は二度と戻れないの。どんな契約魔法をかけられてるか分かったものじゃないからよ。だからほぼ例外なくさらに契約魔法でガチガチに縛って奴隷落ちってわけ。」
それにしても今日の母上はよく喋るな。少し機嫌も悪そうだ。
「もしかして母上、機嫌悪い?」
「悪いわよ。かわいい子供が殺し屋に狙われたんだから。しかもその殺し屋が使い捨ての最低ランク。カースをどれだけ舐めてるのかしら。腹立たしいわよ。」
なるほど、我が子が狙われたんだ。そりゃそうだ。しかし私にできることなど何もない。
これからも殺し屋が送り込まれるのはムカつくし、母上の機嫌を損ねたのも許せんな。
どうしてくれよう。
そうだ……
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