第198話
お、落ち着け。
今は昼だしゴーレムが近付いて来ればすぐ分かる。ゴーレムは鈍足だ。見てから逃げても間に合うはずだ。
それよりは魔力の回復だ。
幸いぴったりゼロになりはしたがマイナスになった感じはない。いつかの時のように意識が飛びそうな感じはないのだ。
私は山頂に座り込み深呼吸をする。
眠り込んでしまうわけにはいかないが、なるべくリラックスして回復を図らねば。
目を閉じて瞑想をしようと思ったのだが……ゴブリンが来やがった!
あれだけ火球を使っても来なかったくせに!
しかも三匹! どこかで見た光景だ……
しかし今日は負けん!
木刀だってある! この前みたいに落とす危険はあるが、基本的に木刀は収納していない。
さあかかって来やがれ!
来ない……
ゴブリンはギャーギャー騒ぐだけだ。
何しに来たんだよ。
ならば、こちらから……
やはりゴブリンは弱かった。
二匹は首に横薙ぎ、残る一匹は喉に突きで終わった。魔石を取り出すのも面倒なので放っておいて瞑想の続きをする。
それから一時間、なぜかゴブリンとコボルトだけがやって来る。その度に木刀で相手をした。
結局倒したゴブリン二十三匹、コボルト十六匹。一度に来なくて助かった。
それにしても疲れた。雑魚ばかりで助かりはしたが……やはり実戦は違うな。
確か冒険者のマナーとしては魔石を取り出してから燃やす、もしくは埋めるべきらしい。
仕方ないので腹を開いて魔石を取り出す。
安物だけど刃物を持っていてよかった。
面倒くさいし血もくさい。
そんな時、何人か冒険者が遠くに見えてきた。
念のため魔力ポーションを取り出し飲んでおく。これぐらいは回復したのだ。
「あれ? マーティンの坊ちゃんじゃないですかい?」
「スパラッシュさん? お疲れ様です。」
「珍しい所でお会いしやしたね。こりゃ坊ちゃんの仕業ってわけですかい。さすがでさぁ。」
周囲にはゴブリンとコボルトの死体が多数、ゴーレムが一匹だ。
「いやーうっかり魔力が空になってしまってさ。仕方ないからゴブリン相手に時間を潰してたの。もう少しでゴーレムを収納できるぐらい回復するよ。」
本当はもう収納できるけど。
「坊ちゃん……こりゃあ何ゴーレムですかい?」
「え? スパラッシュさんが分からないなら僕にも分からないよ。銀にしては黒いよね。」
「黒い……銀…… もしかして『
「え? 何それ?」
「グアッハッハ! 汚銀かよ! ツイてねーなぁ!」
「ギャハハ! 俺ぁ知ってるぜ! 骨折り損のくたびれ損って言うんだぜ!」
「新人だろー? 倒せただけマシってもんさ。褒めてやろうさ。」
「テメーら! 坊ちゃんに向かって何て口を!」
「まあまあスパラッシュさん。僕はもう帰りたいので、後始末をお願いできませんか? こいつらの魔石は差し上げますので。」
そう言いつつゴーレムとその魔石だけは収納した。
「へいっ! お任せください!」
「待ってくれよースパラッシュさーん。俺はヤだぜー」
「おおー、俺もだわ! 何で俺らがこんなガキの後始末をよー」
「新人のガキだろ? 疲れたんだろ? 帰らせてやろうさ。」
あら、それなら仕方ない。まあ当然かな。
「新人の分際で失礼しました。では自分でやりますね。」
「ぼ、坊ちゃん……申し訳ありません……あっしは今日も護衛なもんで……」
もしかしてスパラッシュさんって引っ張りだこ? 凄腕って話だしな。
「いえいえ、お気になさらずに。お気をつけてお帰りください。」
「新人のくせにスパラッシュさんに何言ってんだよ」
「何か勘違いしてやがんだろーぜ」
「お前らさー、新人だぜ? 優しくしてやれさー」
スパラッシュさん達四人は山を下りていった。そう言えば何しに登ってきたんだ?
あー面倒い。
あの四人に見られたもんだから放置して帰るわけにもいかないな。
まあ半分ぐらい回復したし、全部燃やしてしまおう。
燃え尽きたのを確認して、念のため『高波』で消火。
きっちり火を始末して帰ろう。
もう寄り道はしない!
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