第157話

ここはクタナツとグリードグラス草原の中間辺りに作られつつある街、バランタウン。


魔境攻略の最前線。

街と言うよりは出城、砦だ。


すでにクタナツからここまでは石畳の道が敷かれている。そしてこの街にも石畳が敷かれ簡単な城壁も築かれている。

宿泊所、食事処、武器屋、防具屋、薬屋……

今こそ商機と見た商人も多数いる。

簡易ギルド出張所もあり、騎士団詰所もある。

そして代官もここ数週間ずっとこの地で指揮を執り続けている。


そしてようやくグリードグラス草原に拠点を建築する目処が立ち、例の無草エリアへの石畳敷設が始まったのだ。

幅二十メイルの道をグリードグラス草原に開通させる目論見である。

それさえ終われば草原中央にクタナツ並みの城壁を作り、その後街を作ることができる。大事業である。


ここには騎士団、冒険者、魔法使い、職人、商人。

あらゆる種類の人間が集結している。


騎士団は近寄る魔物の討伐。

冒険者は資材運搬やその警護。

魔法使いは魔力庫による資材運搬や建築補助。

職人は建築や敷設。

商人は資材や食糧などの手配。

大まかにはこのように役割が分担されておりスムーズに回っていた。


それでも問題がないわけではない。

冒険者は報酬を求め、商人は利益を求める。




そして盗賊は全てを奪う。




「おい聞いたかよ。『イクストリーム』の奴らが全滅したってよ!」

「マジかよ! ヤバいな!」

「おお、聞いたぜ。護衛していた商人の荷を全部奪われた上に皆殺しらしいな」

「リーダーのライダルは五等星で他のメンバーも六等星、それを皆殺しかよ」

「この辺りに盗賊なんてまず出んもんな。油断したんだろうよ」

「それを差し引いてもヤバいぜ。注意しとこうぜ」

「盗賊とは限らんぜ。同業者ってこともあるんだからよ。油断するんじゃねーぞ」

「マジかよ! ヤバいな!」

「まあ何にしても運搬は共同で行うべきだな」


しかし被害は止まらない。

他を出し抜こうとする商人が、クタナツに戻る冒険者が、バランタウンに向かう職人が、無差別に標的にされた。

それどころか他の街からクタナツに移動する商人すら標的にされ、物流が著しく滞りつつあった。


なお、正確には皆殺しではない。

死体は放置されているが、女性の死体は発見されていない場合もあった。

相手が盗賊であることを考えれば当然と言えるだろう。


彼らは怒っていた。

被害の大きさには勿論だが、盗賊風情に舐められていることにだ。

クタナツの冒険者達は一丸となり、盗賊討伐の決意を新たにしていた。

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