第102話 アイテムボックス3
そして魔力庫設定の日。
生徒だけでなく、保護者も同席している。
大金と高価な魔石を持っているし、今後の人生を左右する一大イベントだしな。
「さあ皆さん、今日は魔力庫を設定しましょうね。ご協力いただくのは新進気鋭の魔力庫職人ボクシー・ロキシーム先生です。」
「よーしボウズ供、立派な魔力庫を作ってやるからな。魔力をしっかり燃やすんだぜ。」
「では順番通り始めますよ。アレクサンドルさんからですね。
長くなりますので、終わった方から帰っていいですよ。」
「さあお嬢ちゃん。魔力をしっかり燃やすんだ! 立派な魔力庫を作るって気持ちを込めるんだぜ。」
「はい!」
アレックスちゃんは何やら集中しているようだ。
「いいぞ! もっと魔力を燃やすんだ! その調子だ!」
ロキシーム先生の声が響く。
「よし! 完成だ。よく頑張ったぜ。」
「はい! ありがとうございます!」
思ったより疲れているように見える。
「お疲れだったねアレックスちゃん。どうだった? いい感じの魔力庫はできた?」
「ええ、予想を上回る出来栄えね。やはり凄腕なのね。」
「おおーよかったね。ちなみに何の魔石を使ったの?」
「なんとヘルデザ砂漠のグランサンドワームよ! 父上がこの日のために用意していてくれたのよ。カースも私に相談してくれてたらこれぐらいの魔石を用意できたかも知れなかったのに!」
「うお、すごいね! 名前からしてすごそうな魔物だね。うちもすでに魔石は用意してあったんだよね。たぶんいい物だと思うよ。
それより、早速使って見せてよ。」
「いいわよ。じゃあ私の杖を……」
すごいぞ! 目の前の物がいきなり無くなった!
「すごい! じゃあ今度は出してみて!」
「私の手をよく見てなさいよ。」
これまたすごい!
何も持っていなかった手に、いつの間にか杖が握られている。さては取り出す動作が必要ない設定にしているな。さすがアレックスちゃん。
そして最後に私の番が来た。
ほとんどみんな帰ってしまったけど、セルジュ君だけ残っている。
そしてロキシーム先生は魔力ポーションを飲んでいる。
「よーしボウズで最後だな。全く厄介な設定にしやがって。」
「ボクシー! 手を抜くんじゃありませんよ。」
おや、母上の知り合いかな?
「ちっ、魔女の息子に手を抜くわけないだろ。さあボウズ、行くぜ! 魔力を燃やすんだぜ!」
「押忍!」
燃やせと言われてもよく分からないから錬魔循環をしてみる。普段より気合を入れて。
何か奇妙な感覚とともに魔力がどんどん減っていくのが分かる。とてつもない不安感だ。
しかし、それと引き換えに体内で何かが大きく膨れていく。さらに自分の体をも超えて大きく膨らんでいく。
「いいぞ! その調子だ! もっと燃やせ!」
「押忍!」
何かがますます膨れ上がっていく。
「よーし! よく頑張った! どえらい魔力庫ができちまったぜ。こいつは俺の最高傑作だぜ。」
「ありがとうございます!」
すごい。魔力庫があるのがなぜか実感できる。まるで生まれつき持っていたかのような馴染み具合だ。
使い方も理解できる。これはすごい。
「ボクシー、すっかり一人前になりましたね。よほどの修練を積んだのでしょう。私も嬉しく思います。」
「へっ、当然だろ。まあアンタにゃあ感謝してないこともないぜ。それにしてもアンタのとこは恐ろしい子供ばっかりだな。」
「当然です。さあカース、帰りますよ。
シメーヌ様、お待たせしました。行きましょうか。」
「ええイザベル様。さすがカースちゃん。すごい魔力庫ができたみたいね。すごいわ。」
セルジュ君とシメーヌおば様と母上とキアラの五人でお茶してから帰るらしい。だからセルジュ君は待っていてくれたのか。
お店はやはり母上のお気に入り、『タエ・アンティ』だ。
店ではできたばかりの魔力庫の話題でセルジュ君と話が弾んだ。
セルジュ君は大きさ重視にしたらしい。
そのため地面に映る自分の影からしか出し入れができない設定らしい。細かい物の出し入れには不便だが、大きい物を出し入れするには意外と便利だったりする。
色んな設定があるものだ。
ちなみにキアラは私の膝の上にいる。
学校ではきちんと大人しくできるいい子だ。
今は甘いホットミルクを夢中で飲んでいる。
それにしてもすごい魔力庫を手に入れてしまった。どうやって活用するか楽しみでならない。
ロキシーム先生と母上の関係も気になるが、それは帰ってから聞けばいいだろう。
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