第84話 カース、空デビュー
サンドラちゃんが領都に出席して二週間、今頃大会の真っ最中だろう。
その間に私は八歳になった。
大会参加者は各部門に四人ずつしかいないため盛り上がりに欠けそうだが、その分厳正に判定されるのだろう。
自分が出ることには興味ないが、対戦を見たくなってきてしまった。テレビもビデオもないのは困るな。
映像魔法を開発するか?
遠くとの通信にも使えそうだが。
だめだな、全くイメージが湧かない。
通信なら伝書鳩の方が無難かつ簡単かも知れない。
その代わり空をガンガン飛べるようになってきた。鉄のボードをギリギリまで薄くして、下面は鏡面仕上げにしてやった。
これで下からは見えまい、ふふふ。
苦労したものだ。地道に金操で磨いたのだ。
魔力を垂れ流せば速度もドンドン上がる。
この先は形状にさらなる工夫が必要だろう。
例えば風防とか屋根とか、空力も考えた形にすれば魔力も節約しつつ速度も上がるだろう。
現在は畳ほどの広さの鉄の板だからな。
まだまだ長距離移動はできないな。
空を飛びながら他の魔法もいつも通り使えるよう修行しなければ、もし空中で何かに襲われたら大変だからな。
後は昼間でも飛べるように迷彩的な工夫が欲しいが、思いつかない。
上空に上がってしまえば見つかることなどないだろうが、そこまでの最中が問題なのだ。
よし! 母上に相談だ。
教えてもらった。
中級魔法『
物理的に見られないわけではなく、気にされにくくなる魔法。
森に隠れるなら木遁、荒野に隠れるなら土遁など他の身を隠す魔法と併用するとさらに効果的。
ちなみに風や金属には元々身を隠せないので、風遁や金遁はない。
火遁はあるが半分自爆技なのであまり使いたくない。
だからついでに、
も覚えておいた。
空の上では、使い道がないが覚えて損はないだろう。
隠形が中級魔法ということは、もっと強力な隠れる魔法もあるのだろう。
透明になったりとか、全く気にされないとか。
結局バレるかどうかは相手の魔力次第なので、油断は禁物、やはり基本に立ち返り魔力をガンガン上げることが大事だということだな。
コツコツ行こう。
ついに空を自由に飛べるようになってしまったカース。
天測を覚え、形状を最適化したならば、どこまでも行けてしまう八歳児。
空は安全なのか?
魔物はいないのか?
雨は? 雷は?
鉄の塊なのだから雷一発でほぼ即死。
この世界にゴム製品はない。
ゴムの木を探す当てもなければ知識もない。
四年生の社会で天測を習う前に気付かなければ死あるのみ。
しかも、もし今死んだら徳があまり貯まってない上に、親より先に死ぬ大罪。
もちろん来世は選べない、ミジンコか大腸菌か、よくても蟻だろう。
さあどうなる?
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