第69話 カースの昼休み

やっとお昼ご飯だ。

なんだか一日がすごく長い気がする。

いつもよりお腹も減っているように思う。


「ねえサンドラちゃん? やっぱり今日のカースはおかしいわよね?」


「うん、カース君どうしたの?

いつもと違うよね? やたら会話に『青春』が出てくるよね。」


「いやー僕もよく分からないんだ。なぜか青春って言葉がやたら響いてしまったんだよね。青春っていい言葉だよねー。

今日もお弁当がおいしいよ。」


「そもそもカース君って元から変だし別に問題ないんじゃないかな?」


「えー? セルジュ君!?

僕って元から変なの!? 一体いつから!?」


「え? 自覚してなかったの? ずっとだよ。

杖の代わりに木刀を使ってるし、アレックスちゃんに遠慮なく話しかけるし、パスカル君やエルネスト君にも普通に話しかけるし。

普通僕達みたいな下級貴族だと声もかけられないよ?

そもそも今では当たり前になってしまったけど、名前で呼ぶなんてあり得ないよ?」


「セ、セルジュ君がまともなことを言ってる……。

確かにそうだよね。領都や王都、他の貴族領だとまずいよね。

でもここはクタナツだからさ、ここでは生き残った者だけが強者であり仲間だよ?

だから貴族だ平民だを考えても意味がないらしいよ?」


「あら、急にまともになったわね。

それでこそいつものカースだわ。

セルジュ君の言い分は正しいわ。

でもクタナツに限ってはカースが正しいと思うわよ。

私はみんなと友達になれてよかったわ。

余計なことを考えずに勉学に励むことができるんですもの。」


「うんうん、いいことだよね。

友との会話で自らの欠点を見つけ日々切磋琢磨し、より高みを目指していく。

これも青春だよね。今日の放課後はみんなで夕日に向かって走ろうか。」


「やっぱりおかしいわ!

やっぱり『青春』なのね?

青春って一体何なの?」


「いやいやサンドラちゃん。

今僕達が会話をしている、これこそが青春なんだよ。自分は変なのか変じゃないのか、どうでもいいことで悩み苦しみ、一喜一憂するわけさ。

そんな出来事の一つ一つが僕らを成長させてくれる青春なのさ。」


「だめだわアレックスちゃん、私も分からない。だからスルーしましょう。

幸いカース君の頭が狂ったわけではないようだから。」


「そうよね! 気にせずお弁当を食べるわよ!

さあカース、この辺が魔境産の素材だからね! 存分に食べていいんだからね!」


うーむ、みんなどうしたんだろう?

私は元からおかしかったのか?

確かに魔法で誰もやらないことをやるし、わざわざ冬に外で風呂に入るし、肛門から魔法を出せるし。

あ、変だわ。

変態かも知れない。

くそぅ。

まあいい、自分が人と変わっていることに気付き、さらなる成長に繋げることも青春に違いない。

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