第36話 マリーのご指導

マリーによる魔法の授業が始まった。


「さあカース坊ちゃん。今日は風の初級魔法を覚えますよ。『微風ほのかぜ』ですね。

私の後に続いて唱えてくださいね。」


『ナーモーフ・カーシーギ・イーコール

風よ、その姿を表せ 微風』


マリーの手の平から生温い風が吹いてくる。

やってみよう。


『ナーモーフ・カーシーギ・イーコール

風よ、その姿を表せ 微風』


吹いた!

吹いたけど……

そよ風ですらない……

手の平で扇いだ方がマシな風だ。


「さすが坊ちゃん。初めてでも容易く発動させましたね。ではもう教えることはありません。

地道に頑張ってください。

風の強い日のような勢いで発動できたら次にいきましょう。」


「押忍!」


あっさりできてしまった。

やはり最初はこれでいいのか……

風の魔法を組み合わせたら水圧の強い魔法も使えるかな?





我ながら無茶なことを言ってしまった。

微風の魔法で風の強い日並みって……

奥様からは無茶なぐらいで丁度いいとお聞きしているが……

魔力量は多いので修行の能率はよさそうだ。

全く、恐ろしい子。







一ヶ月経った。

微風だが、扇風機の強ぐらいの風は出せるようになった。

勢いを考えなければ、大量の風を送ることもできる。

水の魔法もそうだがいまいち勢いに欠けるんだよな。


そこで、はたと気付いた。

循環阻害の首輪をしてるせいか?

これがある為に鋭さ、勢いに欠けていたのか?

早速外して確かめてみる。


よし、指先から『水滴』を……



おおっ! すごい!

水鉄砲だったのが高圧ホース洗浄のようだ!



では『微風』をこれまた指先から…



おおっ!

これまたコンプレッサーから吹き出す圧縮空気のようだ!



やっぱりパワーリスト的な効果があったのか。

ちなみに四歳の誕生日では何も貰っていない。

父上から新しい知恵の輪を貰ったのみである。

何でも五歳の誕生日にちょっと良い物をくれるらしい。


よし、循環阻害の首輪をつけて先程の勢いで魔法を使えるよう特訓だ!

でも月に一回ぐらいは外して成長を確認しよう。


あぁー個人魔法も試したい!

だからって今度遊ぶ約束とかに使いたくないし、人間以外で実験できないものか。








ちょっと魔法が使えるようになったら調子に乗るカス野郎。

個人魔法はバレても迫害まではされない、にしても侮られることは間違いない。

それが原因でイジメに発展することもあるかも知れない。

折角の良好な人間関係をわざわざ崩すことはないだろう、カースはそこに気付くのだろうか。

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