第20話 カースの平穏な日々

兄上が領都に旅立って早一週間。

姉上がおかしい。

兄上は何してるだの、こんな時兄上ならこう言うだの、会話をする度に口から『兄上』が出てくる。


さすがにイラッとしてきたので

「僕しってるよー 姉上みたいなのを重い女って言うんだよねー」


「重い女? 私が? 私の兄上への愛が重苦しいとでも言うの? カースみたいなガキンチョには分からないわよ。」


「うーんわかんなーい。兄上が王国一なら姉上はどうなんだろー?」


「はっ!? いい質問だわ!?

つまり王国一の男である兄上に相応しいのは王国一の女! つまり私がそうなれば必然的に兄上の横には常に私が! こうしてはいられない! 母上! 母上ぇー!

私、王国一になるわ!」



うわ、チョロい、のか?

まあ鬱陶しくなくなるのならいいや。

私だって人に構っている場合じゃないしね。

後半年で錬魔循環を何とかしなければ。


母上に聞いても「このまま地道に頑張りなさいね。」

としか言われない。

コツも近道も何もなく、ひたすら地道にやるしかないのか。

普通の転生者はこんな時に技術革命などを起こして幼いうちからブイブイ言わせているはずだ。

まあいいや、考えるのは面倒だからやめておこう。

コツコツ行こう。






1ヶ月経ち、オディロン兄は学校に行き始めた。

私は午前中は友達と遊んだり、クロちゃんと狼ごっこをしたり、文字の勉強したりと充実した日々を送っている。


もちろんその間にも錬魔循環をしている。

友達からは「くびどうかしたのー?」

何て言われたりするが、「ここをポリポリかくと気持ちいいんだよー」と答えておいた。

みんな信じたようだ。


やはりその場でじっとした状態でやるより難しい。

それだけにパワーリスト的な意味があると信じてやっている。

1ヶ月前と比べて魔力の流れが確実に早く太くなっている、気がする。


オディロン兄と姉上だが、学校から帰って来たら、母上から経絡魔体循環を受けることが多い。

みんなよく頑張るものだ。

勉強はしてるんだろうか?


ちなみに学校での勉強だが、

国語(ローランド王国語)

算数(五年間で日本の小三ぐらいまで)

社会(王国法はここで学ぶ)

体育(剣術・体術など)

魔法


午前中に三教科、午後に二教科を毎日行うのが通常の授業スケジュールとなっている。


礼儀作法に関する授業はない。

各家庭で教えるのが当然だからだ。

だからこそ貴族、騎士、平民の差が出る。

上級貴族でない限り六歳になる年から学校に通うのは共通なのだ。


ちなみに保育園、幼稚園にあたるものはない。近所に孤児院でもあるなら遊びに行くのは有りだ。

仲良くできるかは別問題だが。




こうしてカースは変わらぬ日々を過ごしていった。

転機は訪れない……

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