第252話 閑話 補助魔法使いと従者の……
「うー……どれがいいのかわかりません」
イルミナさんが用意してくれた品はどれも良いものばかりで、シアさんに似合いそうなものばかりです。
こっちの色も綺麗ですし、これは形がかっこいいですし、出来る事なら全部買ってシアさんにあげたいくらいです!
ですが、こういうのって沢山つけても見栄えは良くないと思いますし……。
「ユアンちゃん……まだ選んでたの?」
「はい……中々決まらなくて……」
「全く……。貴女たちって似た者同士なのね」
「え? どういう意味ですか?」
「あの子もまだ選んでいるのよ」
「意外ですね」
シアさんが何を買おうとしているのかは知りませんが、いつも欲しいものは欲しい。食べたい物は食べると即決するシアさんが悩んでいるみたいです。
「まぁ、今日も暇だからいいのだけど」
「ご迷惑おかけします」
「いいのよ。ゆっくりしていってね。あの調子だとシアの方も時間かかりそうだからね」
イルミナさんの許可も貰えたので、お礼を伝え、再びアクセサリーと睨めっこになりました。
そして、結局その睨めっこは一時間くらい続き……。
「ユアン、待たせてごめん」
「あ……大丈夫ですよ! 僕もイルミナさんに色々見せて貰ってましたからね」
「何か欲しい
「いえ……欲しいものは買いましたので大丈夫です」
冷や冷やします。
嘘はつきたくないですし、買ったものもバレたくないですからね。
有難い事に何を買ったのかまでは追及されずにすみました。
「イル姉、また来る」
「はいはい、いつでもいらっしゃい。二人でね」
「本当にありがとうございました」
「いいのよ……その代わり、後でちゃんと教えてね?」
「わかりました」
「わかった」
あれ、てっきり僕に聞いたかと思いましたが、シアさんも返事をしましたよ?
まぁ、それはさておき。
シアさんも買い物が終わったみたいですし、デートの続きですね!
「シアさん、次は何処に行きますか?」
「何処でもいい。ユアンと一緒なら」
「えへへっ、僕もですよ。シアさんと一緒なら何処でもいいです!」
目的もなく二人で歩くのも僕は好きです。
シアさんとならしゃべる事は尽きないですし、例えしゃべる事がなくなって無言になっても平気ですからね。
「それにしても、陽が落ちるのが早いですね」
「うん。けど、前よりは伸びた」
「そうですね。この時間ですと、ちょっと前なら日が落ちかけてましたしね」
改めてイルミナさんのお店に長居した事を実感しますね。
気づけば太陽はオレンジ色の夕日へと変わっていました。
もうすぐデートの時間も終わりですね……。
別にデートできるのが今日だけではありませんが、それでも淋しく思えます。
「大丈夫。今日はこの後ずっと一緒に居る」
「約束ですからね?」
「うん。約束」
えへへー。
約束ですよ、約束!
今日はずーっとシアさんと一緒に過ごせる日みたいです!
午前は一緒じゃありませんでしたけど、この後は一緒に居られるので問題ありません!
「人に仕事を押し付けて、言い身分だね」
僕たちが身を寄せ合って歩いていると、路地裏から人が現われました。
「ちゃんと休みとった。問題ない」
「リンシアが勝手に休むって言っただけだけどね」
「それでも休みは休み」
「僕だってたまには休みたいよ」
このやり取りだけでもわかりますね。
路地から出てきたのは人化したラディくんでした。
「休みたければ休めばいい」
「それが出来たら苦労しないよ」
「なら苦労する」
「リンシアがもっと手伝ってくれれば苦労しなくて済むよ」
「やる時はやる。だけど、今日はダメ」
「休息日って聞いてるからいいけどさ」
相変わらずあまり仲が良いとは言えませんが、あるいみ言いたい事を言い合える相手ではあるので良好と言えば良好なのでしょうか?
「それよりも頼みがある」
「仕事はもうしないよ?」
「仕事じゃない。個人的な事」
「内容による」
「キアラに伝言」
「それくらいならいいよ」
「耳貸す」
「引っ張らないでよ?」
「そんな事しない。早くする」
僕に聞こえないように、シアさんがラディくんに耳打ちしています。
うー……。
また僕に聞こえないように内緒話です。
「わかった。それくらいなら構わない」
「頼んだ」
「あ、なら僕もついでにお願いしていいですか?」
「ユアンさんも? 別にいいけど」
シアさんが内緒話するなら、僕も内緒話させてもらいます!
というよりも、今から準備しないと間に合いそうにありませんからね!
その為に僕はイルミナさんのお店で悩みましたからね!
「えっとですね…………なので…………して貰えるようにお願いしてください」
「………………わかった」
ラディくんが目を丸くして僕たちを見た後に、頷きました。
「どうしたのですか?」
「ううん、何でもないけど……ユアンさん達ってお似合いだねと思っただけ」
「当り前。ユアンと私だから」
「そうだね。それじゃ、伝言は伝えておく」
「頼んだ」
「よろしくお願いします」
ラディくんの姿がスッと消えました。
どうやら、召喚魔法でキアラちゃんの元に戻ったみたいですね。
「ユアン、何の話?」
「シアさんこそ、何の話をしてたのですか?」
「秘密」
「僕も秘密です」
お互いに秘密が出来てしまいました。
ですが、シアさんは笑っていますし、僕もにやけてしまいます。
なので、別に悪い感じではありません。
だって、喜んで貰うための秘密ですからね!
「シアさん、もう少し街の中を歩きましょ?」
「うん。私もそう思ってた」
良かったです。
ここでシアさんが帰ると言ったら僕の計画は台無しでしたが、それは避ける事が出来たみたいです。
ですが、楽しい時間というのはあっという間に過ぎるもので、おしゃべりしながら二人きりで人気のない街を歩いていると、陽が落ちてしまいました。
「そろそろ帰りますか?」
「うん」
ラディくんがちゃんと伝えてくれていれば、キアラちゃん、リコさん、ジーアさんなら気を利かせてくれる筈なので、多分ですが準備はしてくれていると思います。
スノーさんですか?
スノーさんも優しくて気が利く人ですよ。
ですが、スノーさんは料理が苦手で食べる専門の人ですので今回はあまり宛にしていなかったりします。
適材適所ってやつですね。
「ただいまです」
「ただいま」
完全に陽が落ちた頃、僕たちはお家へと戻りました。
「あれ……誰もいないのでしょうか?」
「うん。珍しい」
キアラちゃんが居なくても、いつもならキティさんが僕たちを出迎えてくれますが、今日はそのキティさんすらも居ませんでした。
「お出かけしちゃったのですかね?」
「それはないと思う」
むむむ?
あ、大丈夫そうです!
探知魔法で探ってみるとどうやらみんなは本館のリビングに集まっているみたいですね。
どうやら、僕達の事を……シアさんの事を待っていてくれているみたいです!
ちゃんと伝言を伝わっているみたいで一安心ですね。
やけに数が多い気がしますけど……今はそれどころじゃありません!
「本館の方ですかね?」
「そうかもしれない。行けばわかる」
「そうですね!」
えへへっ、シアさんは気付いていないみたいですね。
きっと驚いた顔が見れそうです!
わくわくしますよね!
ですが、シアさんは鋭いですので、ここで僕が急いでも感づかれてしまう可能性がありますので、落ち着かないといけませんね。
「お腹すきましたね」
「うん。お腹空いた」
「ご飯はもう出来ているみたいですね」
「うん。いい匂いしてる」
別館と本館を繋ぐ通路にも食欲をそそるいい匂いが漂っています。
獣人である僕とシアさんだからわかる事かもしれませんが、その匂いだけでお腹がなっちゃいそうです。
ですが、今日の主役はシアさんです!
落ち着かないと……。
「それじゃ、入りますよ」
「うん。ユアンが先に入る」
「いえ、シアさんが先に」
「今日はユアンが先がいい」
「シアさんが先がいいと思います!」
あ、あれ?
これじゃ、不自然な流れですよ!
このままじゃバレちゃいます!
なら仕方ないですね……。
「一緒に入りますか」
「うん。一緒に入ればいい」
どうやら一緒に入るのはいいみたいです。
「それじゃ、せーので入りましょう」
「うん……」
「「せーの」」
リビングの扉は二つで一つの扉になっていますので、両方開ける事が出来ます。
そのお陰で僕が右のドアノブを、シアさんが左のドアノブを握り、年越しの
シアさんの驚いた顔がもうすぐ見れます!
さぁ、シアさん!
僕からの最初のプレゼントですよ!
シアさんと同時に扉を開きます。
その先には驚きの光景が広がっていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます