第18話 補助魔法使い、パーティー名を考える

 話は一段落しました。

 そうすると、お風呂に入り、夕食を済ませ、おばあさんとお話をした。当然、時間は過ぎるもので、現在、僕は襲い来る眠気と戦っています。

 忘れているかもしれませんが、採取、オークの討伐、ギルドでのいざこざなど、とても濃い一日でしたから、疲れも溜まっていたのでしょう。


 「ユアン様が眠そうにしてらっしゃりますし、年寄りはこの辺で失礼しますか」

 「いえ、そんな事は……」

 「良いのです、黒天狐様をもう一度見られ、話が出来たのです。それに、足まで治していただきまして、感謝しますぞ」

 「祖母の足の件、本当にありがとうございます。お礼にはなりませんが、明日の食事でサービスさせて頂きます。お礼の代金を受け取って貰えないのなら、せめてそれくらいはさせて頂きます」


 足を治し、おばあさんはお礼を支払うと言ってきましたが、僕は断りました。

 これが依頼だったら受け取ったかもしれませんが、依頼ではありませんからね。話の流れでやっただけです。

 僕たちを気遣って、二人は部屋を出ていきました。ちなみに、用意してくれた果実は美味しく頂きました!

 シャキシャキとした、甘みのある果実で、食後でお腹いっぱいなのに食べてしまいました。

 デザートは別腹ってことですね!


 「何か疲れました」

 「お疲れ様」


 今、部屋には僕ら二人しかいません。

 なので、ようやくゆっくりできそうです。

 ローブを脱ぎ、楽な恰好、ボロボロだけど、孤児院で貰った服に着替えます。

 着替えているところをシアさんに見られますが、裸も見られていますし、今更気になりません。

 すると、シアさんが提案をしてきました。


 「明日、買い物したい」

 「買い物ですか?」

 「うん、色々と買わなきゃいけないものものが出来た」


 僕の全身を見て言っているのが気になりますが、シアさんが必要なら断る理由はありませんね。


 「そうですね、お金も沢山手に入りましたし、必要なものは買った方がいいですね」

 「うん。それと、これ渡しておく」


 シアさんは僕に袋を差し出します。


 「え、これって」

 「今日の報酬と、私の財産」


 それが袋一杯に詰まった硬貨だとわかり、僕は固まりました。それも、一瞬、僕は我に返ります。


 「ダメですよ! シアさんのお金ですから!」

 「いい、私の物はユアンの物。必要な時は、お願いする」

 「でもー……」


 こんな大金持つのは困ります。収納魔法にしまっておくとしても心配です。


 「私が持っているよりは安全。ユアン無駄遣いしないし、ちゃんと貯まる」

 「少しは持っていて下さいね? 僕が居ない時に必要になるかもしれませんから」

 「大丈夫、最低限は持ってる」


 結局、僕が管理することになりました。ちなみに、僕の財産……少ないですけど、それと合わせてパーティーとして、今後使う資金となる予定です。

 同時に僕の家を建てる資金にしてもいいそうですが、流石にそれは断りましたが、シアさんもその時はお世話になると言ってくるので、断りきれません。

 もしかして、同居ってやつでしょうか?

 賑やかなのは嬉しいですけどね。でも、まだまだ先の話なので、その時はその時で考えましょう。

 

 「それで、良かったのですか?」

 「お金? ユアンの為になるなら問題ない」

 「いえ、そっちではなくて、僕が希望して同じ部屋にしてしまったので。お金は勿論嬉しいですけどね!」

 「問題ない」


 シアさんはそう言ってくれますが、心配なものは心配です。本当は一人でゆっくりしたかったかもしれないので。


 「不満があったらその度に言ってくださいね? 不満が溜まって、シアさんに見限られるのは嫌ですから」

 「そんな事しない。むしろ、同じ部屋の方が安心できる」

 「えへへ、僕もです」


 一人旅は淋しかったですし、孤児院での生活でも共同だったので、僕は人が近くに居る方が落ち着くようです。

 ですが、ベッドは別々ですよ?


 「月、綺麗ですね」


 他愛のない話をし、そろそろ眠ろうかと思い、窓際のベッドに移動すると、窓から見上げた月が目に入りました。

 

 「うん、弓月」

 「弓月?」

 「私達はそう呼ぶ。月の形は変わる。今の形が、弓のような形してるから」

 「弓月ですかー」

 

 世界は12か月で1年となっています。何を持って1か月としているかは、月の形で決まっているようです。

 月は徐々に丸くなっていき、徐々に欠けていきます。その周期が大体30日くらいなので目安となっているようですね。

 今の形だと、月初めという事になるようです。どうりで温かくなってきた訳ですね。

 月を見ていると、ふと思いつくことがありました。

 

 「シアさん、シアさん」

 「なに?」

 「パーティー名、思いつきました!」


 先ほどまでパーティー名についても話し合っていました。同じ依頼を受けるのに、パーティーで受ける際にパーティー名があると楽みたいですからね。


 「弓月きゅうげつこく……なんてどうでしょうか? 月初めを指す弓月と初めて組むパーティーを重ねてみました! 何より、シアさんと出会えた事を忘れずにきざんでおきたいという思いです……どうでしょう?」

 「嬉しい。ユアンと会った日を忘れない。私も良いと思う」

 「決まりですね! 明日、買い物が終わったらギルドに登録しにいきましょうね!」

 「うん、何なら先にギルドに行ってもいい。むしろ、今からでも」

 「流石に明日ですよ。僕はもう眠いですし」


 実は先ほどから欠伸がとまりません。


 「わかった。おやすみ、ユアン」

 「はい、おやすみなさい。シアさん」

 「淋しかったらこっちに来てもいい」

 「そこまで子供じゃありませんよ」


 僕は布団に潜り込みます。

 あぁ……布団が気持ちいいです。

 疲れもあってか、僕の意識は直ぐに落ちていきます。天狐様達の事で少しモヤモヤはあったけど、それを上回る気持ちよさに僕はすぐに意識は落ちていきました。

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