第4話
「おい、そっちだそっち!」
「そっちってどっちだよ!」
本邸の方は、分家の人たちと聡さんたちが呼んだ警察でごった返していた。
「みんなは一旦ここから離れた方が良い。それに、話したい事もたくさんあるだろうしね」
「ああ、後の事はこちらに任せろ。そもそもコレにお前たちは関係なかったのだから」
しかし、関係してしまった以上何かしなければ……という気持ちになり、どうしようか迷っている俺に、実苑さんは笑って。
「久しぶりに会ったお母さんでしょ。ちゃんと親子水入らず話して来なよ」
そう言ってくれた。だから、俺は兄さんと母さんと共にその場を離れた。
■ ■ ■ ■ ■
少し歩くと、池があった。
「……あの人と出会ったのもここだった」
母さんは、何気なくそう呟いた。
「あの人は……自分から命を絶ったのよね」
「えっ、それは……」
確か、兄さんから聞いた話では違ったはずだ。
「厳密に言えば、違う。でも、父さんは分かっていたはずだ。あのタイミングの時、爺さんが自分に何をしでかそうとしているのか」
「じゃっ、じゃあ父さんは……」
「いや、仕掛けられたのにワザとのった。しかも、コレはあくまで推測だ。それに、のっかったのにはちゃんとした理由もある」
「理由ってなんですか?」
「自分が生きていれば、俺だけじゃなく瞬たちにも何かしらの危害が及ぶのではないか……と、考えたのではないか。僕はそう思っている。父さんが持っていた情報をあの爺さんたち、外に漏れるのを極端に嫌がっていたから」
「もし生きていたら、瞬に何かしらの方法で教える可能性があると思っていたのね」
「はい。それにしても、ただでさえ上手くいくか分からない方法に集まりきっていない状態で強硬手段をとるとは」
「……あの人たちも焦っていたのは確かね」
母さん曰く、あの人たちは元々老い先短かったらしい。
それでも、こんな方法にすがりつきたかったのは……自分たちが衰退させてしまった……という現実から目を背けたかった結果なのだろうとの事だった。
「いや、ものっすごく迷惑ですよ。その話」
「自業自得この上ないね」
「ははは。でも、こんな方法でも使わないと、もう取り戻せないところまで来ていたのでしょうね。正攻法なんてしようものなら、今までの事全てが表に出てしまう可能性があったから」
その結果が、コレである。
「母さんは……どれくらいいられるの?」
兄さんは、いつもの調子で尋ねた。
「……そうね。あまり長くはいられない。それに、このまま時間経過で戻ることも出来るけど、そうするとどういった事が起きるか分からない」
「そっ、それってどういう事ですか?」
「母さんを引っ張ってきた方法がちゃんとしたやり方じゃなかったからだね。そもそも枚数が足りていなかったから」
兄さんに言われて俺もようやく納得した。
「さっき話していた二人の男性からこの『カード』を手渡されたから」
そういえば、聡さんと実苑さんが何やら母さんと話し込んでいるとは思っていた。
てっきり、久しぶりに会って世間話だとばかり思っていたが、まさか『カード』を渡していたとは……さすが、抜け目ない。
「あなたが持っているカードを合わせれば全て揃うわ。後は……あそこにいけば方法が分かるはずよ」
そう言っている母さんの視線は、刹那たちがいる方向だ。しかし、俺と兄さんはどこを言っているのか分からず、お互い首をかしげていた。
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