第13話
「なっ、なんで兄さんがここに……いらっしゃるのですか」
俺の前の突然止まった車から降りてきたのは、兄の『
「なんで……か。それは俺が言いたいところだけどね」
「…………」
兄さんの言葉に俺は、思わず
そもそも、兄さんは俺に「空の居場所が分かった。でも、まだ会いに行くタイミングではない」と言った。
しかし、俺はその兄さんの言葉を無視して……いや、色々考えた上で会いに行こうと決め、今に至っている。
それは、当然俺の後ろめたい『理由』になる。兄さんの言った言葉を無視した事には変わりないのだから。
「……でもまぁ、実は瞬ならこうするんじゃないかって分かっていたけどね」
「え」
「だって、瞬は最後の僕の言葉をちゃんと刹那君に伝えてくれた。だから、ここにいる。刹那君に僕たちの会話の内容を聞いて、さらにヒントまで与えたら……多分、何かしらの行動をしてくれるだろうと思ってね」
兄さんはそう言って小さく笑った。
「……はぁ、なるほど。なんで兄さんが刹那の名前を出すのかと疑問に思っていましたが、そういう事ですか」
要するに、俺は兄さんの思う壺だったというワケだ。
「ただ、俺が思っている以上に相手はせっかちらしい」
「せっかち……ですか」
「うん。刹那君の護衛として向かわせた宗玄さんから遭遇したっていう連絡が来た」
「!!」
刹那に護衛として向かわせたのが『宗玄さん』というのに驚いたが、それ以上に母さんの実家の人間と遭遇した……という事に驚いた。
「あの、それで……」
「ん? あはは、心配は無用だよ。だって宗玄さんだよ? ちゃんと撃退し……」
「?」
「いや、なんか思いっきり殴って気絶したその人を警察にちゃんと送り届けたらしいよ? 刹那君から何か連絡来ているんじゃない?」
「そっ……ですか」
宗玄さんから来た内容は本当に業務的なモノしか書かれていなかったらしく、刹那からの内容が気になったらしい。
「えと……」
だから、兄さんに早く俺にスマートフォンを見るように促し、俺はスマートフォンに電源を入れた。見ると確かに、刹那から連絡が来ていた。
「なっ……長いね」
画面をのぞき込んだ兄さんは、思わずそう呟いた。
「……まぁ、長々と書かれています。ですが、コレはただただ単純に気持ちが落ち着いていないだけです。ただ一言だけ言えるのは……」
宗玄さんが、刹那に声をかけようとした人を出会い頭に殴った……という事も書かれていた。
しかし、それは刹那に声をかけようとした人の『力』が『話をかけた時点で発生するモノ』だった事もあり、早急に対処した結果だという事も書かれていた。
書かれていた……のだが、コレが例え刹那ではなく誰でもあっても、自分の後ろに立っている人がいきなり殴られたら……驚くのも無理ないと思った。
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