第12話
実際のところ、人間は大体『視覚』に頼っているところが多い。
いきなり暗闇に連れて行かれて不安になるのも、『見えないから』というのが、理由にあげられるだろう。
だから、その『見えないモノ』が突然攻撃をしかけてくれば、誰だって驚くだろうし、上手く行動も取れない。
偶然とはいえ、攻撃がかすったり、千鶴さんに会えたりしたのは不幸中の幸いというヤツだろう。
ただ、まさか千鶴さんも『見える』とは思いもしなかったが……。
「……というより、なんでここに千鶴がいるんだ? 話をしたのはこの間で、さすがに家に帰っていると思ったんだが?」
「…………」
俺は尋ねたが、どうやらその『理由』は言いにくいらしい。
「まぁまぁ。それも気になるけど、俺としては君も『見える』っていうのに驚いたんだよね」
一瞬流れた『重い雰囲気』を変えるように、刹那は千鶴さんの顔を覗き込んだ。
「え、あの……」
「近い」
「いったー! そんな頭を鷲掴みにしなくてもいいでしょ?俺、そこまで悪い事はしてないじゃんか」
「刹那の場合のあの距離はアウトだな……」
「えぇ、龍紀まで」
まさか龍紀にまでそんな事を言われると思っていなかったのか、刹那は……しおれた。
「だーってさ、この子のおかげで龍紀は軽い……本当に軽い怪我で済んだからさ、その『理由』を知りたいと思ってもいいじゃんか」
「気持ちは分かるが、あの距離はおかしい」
「さすがにパーソナルスペースくらいは守らないとな。最低限のエチケットだ」
なんて龍紀は諭す様に言ったが、当の刹那は「横文字多過ぎて分かりませーん」と、どこ吹く風だ。
「要するに……だ」
「痛い!」
「人と話しをする時も、必要最低限。常識ある距離感でいろと言うことだ」
さすがに龍紀もイラッとしたのか、固まって動けない千鶴に代わり、強引に刹那を引き離した。
「はいはい、分かったよ」
「はぁ」
「……」
「悪いな。こんな感じでも俺の友達でな」
「いえ、楽しそうでよかったと……思いまして」
「そうか」
千鶴さんは、驚きながらも楽しそうに笑っている。
「で……だ」
「はい。ただ私は、最初から『見えていた』ワケではないんです」
「そうなんだ?」
「じゃあ、どうして君は見えるように?」
「私は……その小さい頃。瞬さんの妹さんから……その『霊の見方』と言いますか、彼女から色々教えてもらったんです」
妹の夢と千鶴さんは仲が良かった……という事は知っていたが、まさかそういった話などをしているとは思わなかった。
でも、それも小さい頃のちょっとした自慢話程度だっただろう。しかし、それによって千鶴さんは見えるようになったらしい。
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