第5話


「……で、その依頼してきた相手っていうのはどこにいるの?」


 刹那はそう俺に尋ねてきた。


「はっ? いるだろ、すぐそこに」


 俺はそう言っているのだが、刹那は辺りをキョロキョロと見渡しているのだが、どうやら本当に分かっていない様だ。


『…………』


 しかし、刹那の隣にその霊はいるのだ。それも、刹那が喜びそうなキレイな女性が……。


「いや、いないって……って、ん? ちょっと待て」

「どうした?」


 刹那は目を細めながら、霊がいるところをジーッと見ている。


「……」


 それはもう……下手をすると、普通では通報されかねないくらいだ。しかも、その霊の女性も、恥ずかしいのか俯いている。


 ただ、それでも刹那はよく分からないのかかなり顔を近づけていた。


「うーん」

「おい……おいって!」


 俺は思わず刹那を霊から離した。


「うわっと」

「さすがに見えているだろ。近づきすぎだ」


「あっ、バレていた?」

「分かる。あれは存在が分かっていないとあの距離にはならない」


 霊と刹那の距離は絶妙に保たれていた。あれは、どこに霊がいるのか分かっていないと出来ない。


「でも、残念ながら顔までは分からないんだよね。そこに『誰かいる』っていうのは分かるのに」


 そう言って刹那は椅子に座り直し、チラッと霊がいる方を見ている。


 ただ、刹那が言うには、どうにも霊がいる部分だけ、もやがかかっているように見えているようだ。


「……そうか」

「はぁ、本当に残念。瞬のリアクションを見る限り、霊の正体は『女性』っぽいのに」


「? なんでそうなる」

「いやさ。別に瞬は男同士がじゃれ合っていても基本的にスルーするのに、今は割って入ったから、もしかして……と思っただけなんだけど。違った?」


「…………」


 まぁ、確かに同学年の男子生徒たちが大声でギャーギャー言いながら遊んでいたとしても、俺は「うるさいな」と思うだけで、基本的に無視をする。


 しかし、その話とさっきの状況は話が違う気がするのだが……。


「それにしても、俺にも見えているはずの霊がこんなにもぼんやりなのは、ひょっとして『カード』絡みだから……なのかな?」

「……さぁな。今の状況では何とも言えない。それに、カードはカードでも一体それが『何』かまでは掴めていない」


「そっか。でも、ほとんどのカードを空ちゃんが回収しちゃったって話を聞くと、もう『カード』が現れるのに『法則がある』なんて言っていられなくなったね」

「……そうだな」


 そう、当初は『カードになるモノは、今の季節に合ったモノが現れている』という仮定を立てていた。


 しかし、今の状況と聡さんの報告を受けた実苑さんの話を聞く限り、その『法則』はどうやら違ったようだ。

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