第2話
「うーん?」
「だぁから、ここをタッチすると『アプリ』っていうのを選んだ事になって……」
結局、朝の時間は『基本操作』と『よく使うアプリ』を入れてもらい、その使い方を二人に教えてもらっていたのだが……。
「……やっぱり、こう説明書とかないと分からなくなった時に困るな」
「いや、そういった時こそこの『アプリ』を選んでインターネットを使えば良いんじゃないのか? 何も連絡手段のみで使わないといけない決まりはないと思うけど?」
刹那の言っている事はその通りだと思うが、如何せん、俺はやはり『説明書』など使い方がまとまったモノがないと、不安になる。
「そもそもインターネットを授業でしか使った事のない人間にとっては『日常生活で使う』って事に慣れていないから、その考えに行き着かないのだろうな」
龍紀の言葉はごもっともだ。
慣れているのであれば『一つの選択肢』としてすぐに浮かび上がってくるのだろうが、あまり馴染みのない人間にとってはそもそも浮かび上がってこない。
「とは言ってもさ。さすがに高校三年生になる人がそれじゃあまずいでしょ」
「まぁ……そうだな」
「それは俺自身が思っている」
なんだかんだ言いつつも、今までないがしろにしてきたのは自分だ。そもそも兄さんの関係にしても、もっと早く解決していれば、こんな状況にもならなかったはずだ。
――でもまぁ、そもそもこんな状況にならなかったら、それこそ本当に放って置いただろうが。
「……ん?」
すると、刹那は『何か』に気がつき、教室のドアの方をジーッと見つめている。
「どうした、刹那」
「?」
「いや? あの子って確か……」
刹那は視線をそらすことなく、そのままドアの方を見続けている。
「?」
「?」
さすがに俺たちも気になり、刹那が見ている方向に視線を向けると――。
「あっ」
俺ではなく、龍紀が気がつき、そのままドアの方へと急いで向かった。
「……なんだ? 一体」
しかし、俺の方からはその『何か』がよく見えず、分からない。とりあえず、分かるのは『それ』が『人』だという事くらいだ。
「あー、やっぱり『生徒会の人』だったか」
「ん? 刹那、今の分かったのか?」
「えっ? うん」
「そうか、俺の座っている位置だとちょうど影になっていて見えなくてな。多分、誰かがいるんだろう……としか分からなかった」
「随分アバウトだね」
「見えないんだから仕方ないだろ」
そう言うと、刹那は「まぁ、仕方ないね」と同意した。
「それにしても……」
「ん?」
「生徒会の人が直接教室を訪ねてくるなんて珍しいね」
「そういえば……そうだな」
現在の生徒会は会長である龍紀と、副会長の二人以外が『一年生』である。
まぁ、立候補したのが『一年生』しかいなかったと言うのもあるが、そのせいか基本的にこうして直接俺たちの教室に来ることは今までなかった。
――副会長の人はたまに、書類とか持ってくるが。
「しかも、今の子は『会計』の子だから余計気になるなぁ」
「……そこまで知っているのか」
俺は思わず感心した。
「瞬は、もう少しそこら辺気にした方がいいと思うけど? いくら自分の学年のひとじゃないからって、気にしなさ過ぎ」
「……そうだな、改めよう」
そこは確かに、刹那の言うとおり改めるべきだろう。
しかし……刹那ではないが、今までなかった事が起きると、やはり少しばかり気になる。
「……」
ここ最近、そういった事に敏感になっているからなのか、俺もガラではないと思いつつも「龍紀が戻ってきたら、ちょっと聞いてみるか」と、ふと……思っていた。
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